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「救われたかった」受験生の私を支えたエスプレッソと少し辛いパスタ

  • 2025.3.19

食べることが趣味、新しいメニューに挑戦することも食べ歩きも好き。
数々のご飯を食べてきている私が今ふと思い出したのは、受験生の頃テスト期間で早く塾についてしまったときに何杯も飲んだエスプレッソ、そしてパスタの辛さだった。

◎ ◎

例によって、私は高校生でもあまりクラスでうまくいっていなかった。
この頃には自分が普通ではないことに気が付いていた。
この頃からようやく読めてきた空気や私の持つ激情に何度も自分自身が振り回されて疲れはてたから。
こんなの、「フツーの人」じゃない。
だんだん気づいて、ショックで、そんな自分なんて誰とだってうまくいかないよって絶望した。

そんな私のただひとつの希望は大学受験だった。
大学に行けば、いい大学に行ってさえみれば、私の人生は変わるんだと本気で信じていた。
高校でうまくいかなかったことも、全部チャラにできるって思っていた。
私の人生は大学生活からで、これまでは練習にすぎなくて、だから私はこれからなんとかなる……。
残念ながら受験があの頃の私のすべてだった。

◎ ◎

とはいえ、気合だけでは受験勉強は上手くいかない。
独学でキープしなければならなかった数学や理科基礎、文転によりついていくだけじゃなくて他の学生を追い越さなくてはならなかった古典や世界史、シンプルに苦手な英語……。
苦しくて苦しくて、途中でやめてしまいたいと思ったことが何度だってあった。

あそこに進学できれば、私は普通になれる。
変わった人が多いというテレビの情報や大好きなクイズ番組で活躍している学生に憧れて、そこしか見てなかった。
そこに入ることだけでしか私を救えないと思っていた。

◎ ◎

家に帰ったら多分私は怠けるからとそのまま塾と同じテナントに入ったイタリアンチェーンでテスト期間の度に時間をつぶした。
注文は決まってランチメニュー、曜日代わりがなければ一番辛そうなの。

届いたらあつあつのパスタを必死に冷ます。
時間がもったいないからとにかく口にパスタを詰め込む、喉に重みがぐっとくる。
眠くなると嫌だからと少しだけかけた卓上調味料、唐辛子が喉に刺激を与えた。

完食後はとにかくエスプレッソをブラックで。
今ではカフェイン中毒がこわくてほぼコーヒーも紅茶も飲まないけれど、当時はハイになったドキドキすらも必要としていた。

塾が開くまでの時間はとにかくテキストを読み込む。
流石に食卓に筆記用具を取り出すのはタブーな気がした。
眠い、辛いと思ったらまたドリンクバーにコーヒーを取りに行った。
2杯目はなんとなくカフェラテだった。
ミルクの甘さで私は気持ちを切り替え、ついでに自習する科目も変えた。
そんなことを続けていればいい頃合いになって、会計をそそくさと済ませ塾に吸い込まれていった。

◎ ◎

結局、私はそこまでしても全く届かなかった。
足切りにはなんとか引っかからなかったが、そんなことを心配しているようなレベルでは合格はつかみ取れなかった。
ただ、あの頃真剣になった私が今の私を、環境も自分自身さえも変えたいと思った私を支えてくれたのは確かだと思う。
あの頃の私が、今の私や過去の私を救ってくれた。

■senaのプロフィール
お酒と本とクイズが好きなOLです。

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