Text by 編集部
男子日本代表は18日、FIFAワールドカップ(W杯)2026アジア最終予選(3次予選)の第7節バーレーン代表戦(20日、埼玉スタジアム2002)に向けたトレーニングを千葉県千葉市内で行った。
ここまで5勝1分けのサムライブルーは勝てば8大会連続8度目のW杯出場が決まる(引き分けでも他会場の結果次第では突破)中、2日目となったこの日は25選手が全体練習に参加した。
今季のスペイン1部で評価を上げ続けているレアル・ソシエダMF久保建英だが、3次予選では1ゴールを挙げるにとどまっている。自身2度目のW杯出場を目指す久保が、全体練習後に取材陣の質疑に答えてくれた。
練習後の囲みでの一問一答は以下の通り。
目の前の相手に勝つことに全力で
――いよいよワールドカップが決まるという試合が始まります。いまどのような心境で臨んでいますか。
ワールドカップに行くことが目標のチームじゃないと思うので、勝てばワールドカップ出場というボーナスが付いてくるぐらいの感覚で、目の前の相手に勝つことに全力で臨めればと思います。
――注目度の高い中で、ホームで試合ができることについてどう感じていますか。
注目してもらうことはありがたいことだと思います。できるだけ早く決めたいというのがみんなの素直な気持ちだと思う。あさって(20日)の試合に勝てばいいかなと思います。
――ここまでの積み上げの中で、久保選手が早く(出場を)決められる方が選手にとっても楽になるし、チームにとっても大きいと仰っていました。
早く決めることで試せるものも増えるし、試せる選手も増えると思うので、そういった意味では早く決めることに越したことはないと思います。
――アジア杯敗退の悔しさもありながら、ここまで最終予選で5勝1分できています。この結果をどう受け止めていますか。
負けないことはすごくいいことだと思います。ここからもっと難しい試合がワールドカップを決めた後に強いところとやれれば、そういった経験もできてくると思う。
まずはこの間に、負けているようじゃ言い方悪くすると、みんなが目指してるワールドカップで対等以上に戦ってとか無理だと思う。
先を見据えるわけじゃないですけど、まずは2日後の試合に集中したいなと思っています。
――前回のワールドカップ予選と立場が異なっていますが、意識面で変化はありますか。
前回のワールドカップはあまり覚えてないので何ていうんでしょうね。あまり覚えていないですけど、いい思い出はなかったかなと個人的には思います。
いま試合にも出られるようになって、それこそ満足してるかというと、全然満足していないんですけど、チームの一員と感じられている感じがありますね。
――(前大会最終予選の)オーストラリア戦の記憶はありますか。
(三笘)薫くんが途中で出てきて、すごいゴールを決めて、山根(視来)くんのアシストかな。
(ゴールを)決めて結構難しい展開で、相手のフリーキックの惜しいチャンスもあって、よく勝てたなという感じでしたけど、今回とはまた違ったオッズ的にも違った段階になってくるのかなと思います。
――(ベンチから)試合を観ている立場としてどう感じてましたか。
うれしかったですけど、納得しているか、納得していないかと言われたら全然納得していなかったです。
そのときは19(歳)かな。19、20(歳)くらいで、出ていたかは分かりませんけど、多分出ているときも結構あったので、そんな中で素直な気持ちを言うと、ヨーロッパのラ・リーガで出ていて何で試合に出られないんだと思っていました。
でもそこから選手としても成長した部分もあるので、他人をうらやましいと思う必要もなくなったというか。自分の実力はしっかり分かっているつもりなので、特に幼稚さというか、幼さというものも抜けていい選手になれたかなと思っています。
久保が決めると試合に勝つジンクス
――代表戦ではどのようないいプレーをしたいですか。
さっきもいいましたけど、個人としてもここであさって(20日)の試合で久保が活躍した云々よりも大事なことはワールドカップで活躍することだと思っているので、あさっての試合に関してはチームが勝てばそれでいいかなと思っています。
――久保選手が(得点を)決めれば負けないという記録もありますけど、そこについてはどう感じていますか。
なんでしょうね。 得点を決めて勝てばいいですけど、得点を決めて負けることがそのうち出てくると思います。
それは僕がより結果を残すような選手だったってことだと思うので、シーズン2点決めて全試合に勝つより、シーズン10得点で決めてその内何試合か負ける方が個人的にはいいと思っています。
僕が決めたら負けないジンクスはいいと思いますけど、もっと自分が得点に絡まなきゃいけないということなのかなと思います。
――所属先では苦しい戦いもあります。自分の中で悔いを残しているシーンも恐らくあると思いますが、現状をいまどう捉えていますか。
チームとしてはローテーションをうまくしてるつもりでも、ローテーションしすぎちゃったりとか。多分レアル(・マドリー)と同じ試合数をしてるので、今季25年に入ってからも『19試マックスでやるよ』と言って結局負けちゃったのも含めて19試合やらなきゃいけなくなってるというのは、チームとしての力不足もあると思います。
でもそれを含めて選手、僕も含めてよく戦っていると思います。今年のジローナ戦もそうですけど、ビッグクラブかというとそうでもないので、そういった中で交代でてきた選手だったりとか、同じ経験をしている選手が何人チームにいるかって言われると、当然このような結果になってしまうことは仕方がないのかなと思っています。
――3大会(リーグ戦、カップ戦、UEFAヨーロッパリーグ)をやって、コパ・デルレイ(スペイン国内カップ戦)ではレアル・マドリー戦が残っています。そこはどう考えていますか。(すでに準決勝1stレグはレアル・マドリーに0-1で惜敗)
(ヨーロッパリーグのマンチェスター・)ユナイテッドに負ける前までは何だかんだ残っていて、勝ち進めれば悪くないシーズンだったかなと思いますけど、負けてしまったことでここで落としたら後は何もなくなっちゃうので、できればカップ戦準決勝は勝ちたいと思います。
――チャンピオンズリーグ出場権5枠あるかもしれいと考えると、全然見えない勝点差ではないと思います。(ビジャ・レアルが勝点44、レアル・ソシエダは勝点35)
それを考えるとシーズン序盤の失速だったりと、冷静じゃないときもあれば、もったいないと思いますけど、ここからみんなと同じ試合数になってくれば、本来の僕らも強さを出してくると思います。それと関係なく、代表のカップ戦もできれば勝って決勝へ行ってみたいなと思います。
――野球の大谷翔平旋風をどう感じていますか。
僕スペインにいるので、正直あまりニュースに出てこないです。スペイン自体があまり野球熱がなくて、(ニュースの話題は)NBAやゴルフはありますけど、なのであんまり僕は聞かないです。それこそ多分日本とかアメリカではすごい人気だと思いますし、すごい選手だなと思います。
人種差別にはき然と対応
――ホームで得点などを決めて活躍できれば、より多くの人たちにサッカーの魅力を伝えられると思います。
サッカーの魅力に関して言うと、いろんな人に知ってもらいたいと思いますし、日本はいい意味でエンタメがたくさんある国だと思うので、別にサッカーがなくても、野球がなくても、バスケがなくても、例えばYouTubeを観ているだけでもいいし、いろんなことでその楽しさ楽しみを味わえる国だと思うので、それはいいことだと思います。
その分人気が一極集中しにくいという面もありますし、でも僕個人に関しては別にサッカー知らない人に僕のことを知ってもらおうとは思わないので、サッカー好きでサッカーを見てくれる人が僕のこといい選手だと思ってくれればそれで満足です。
――先日開催されたマンチェスター・ユナイテッド戦でドリブルをしている際に二人目が来たときに倒される場面がすごく多くて、現代サッカーの流れがドリブラー泣かせのようになっているように思えますが、そのあたりをどう感じていますか。
最近はあまり見栄えも良くないので、できるだけ倒れないようにはしています。それこそ引っかけられたりとか、スピード乗っているときに押されちゃうとどうしようもない部分があるので、正直しょうがないですね。 ルールを知っているイコールサッカーを知ってるではないので、その審判の人に相手がどういう意図で何をしてるかというのを伝えようとしても、分かりづらいと思う。
その結果VARがあってもPKの判定で審判の主観が入ると難しい部分とか。ユナイテッド戦に関しては、明らかに訴えてもいいぐらいの内容だったと思いますけど、それを抜きにすると何て言うんしょうかね。
ルールは知ってるけど、サッカーはあまり詳しくないという人が審判をやっていると、攻撃の選手だけが弊害を受けているというわけじゃないと思いますけど、難しいところはあります。
――自身が受けた人種差別についての受け止めを教えてください。
僕自身は人種差別を受けたからといってどうということはないですけど、僕と同じようにスペインで日本人が僕は久保建英というある種のブランドがあるからこそ、みんなから差別をされるわけではないです。 それこそ僕の集中を切らせようと思ってとかそういう意図があって、差別をしてくる人はいても、僕個人を、そのアジア人というわけで差別してくる人はいない。
僕としてはそんな気を悪くすることはないですけど、僕じゃないスペインで仕事やビジネスで頑張ろうとか、学生をやろうという人たちからも同じようにその差別されるというのは、僕としてはあまり許せることではないので、僕のような立場がある人間がその人種差別を受けたときにはしっかり対応していきたいと思います。
試合中にかといって僕個人に対して差別されたからといって、僕が怒るということは絶対にないと思いますね。他の超えてはいけない一線を超えられたときは怒ることもありますけど、差別に関しては別に試合中はそういったものも含めて文化だと思うのでしょうがないかなと思います。
2018年8月以降、『久保が得点した試合は負けない』というジンクスがある。20日のバーレーン戦では、日本をW杯出場に導く得点を挙げられるか。W杯での活躍を目標にする男の覚醒に期待したい。