忙しい朝や職場でひと休みしたくなった午後、1杯のコーヒーは必要としていた幸福感を得るための簡単な方法。だが、それだけではない。長年にわたって続けられている研究によって、コーヒーは身体的な健康の面でもメリットがあるとみられることが明らかになってきている。
ジャーナル『ネイチャー・マイクロバイオロジー』に発表された研究結果によると、コーヒーを飲む習慣は、腸の健康を促進すると考えられる細菌、「Lawsonibacter asaccharolyticus (ローソニバクター・アサカロリティカス)」の増殖と関連している可能性があるという。
この研究によって明らかになったこと、そして専門家たちが指摘する「知っておくべきこと」とは、どのようなことだろうか?
話を聞いた専門家:イタリアのトレント大学・統合生物学センター(CIBIO)の研究責任者でもあるニコラ・セガータ教授、栄養学の専門家でもある減量専門の外科医、ラトガース・ニュージャージー医科大学のダンビー・キム助教、カリフォルニア州サンタモニカにあるプロビデンス・セント・ジョンズ・ヘルスセンターの胃腸科専門医、ルドルフ・ベッドフォード医師
新たにわかったことは?
研究チームは2万人以上の糞便に関するデータを分析。1日あたりのコーヒーの摂取量などについて調査した。その結果、日常的にコーヒーを飲んでいる人の腸内には、「ローソニバクター・アサカロリティカス」が多く存在することを確認した。
論文の共著者であり、イタリアのトレント大学・統合生物学センター(CIBIO)の研究責任者、ニコラ・セガータ教授は、「コーヒーを飲む習慣がある人の腸内には、この細菌が平均6~8倍多く存在していました」と述べている。
腸に良い理由は?
ローソニバクター・アサカロリティカスに関する論文が初めて発表されたのは、2018年。セガータ教授によると、この細菌についてわかっていることは、今のところあまり多くない。
ただ、酪酸を生成しており、発酵を促進しているとみられることから、消化と栄養吸収、腸内環境に「良い影響を与えていると考えられる」という。教授は、「免疫機能を調整すると考えられる短鎖脂肪酸を生成している可能性がある」と説明している。
ただ、腸の健康に実際にどのような効果をもたらしているのかより詳しく知るためには、さらなる「強力なデータ」が必要だという。
これまでに明らかになっているのは、この細菌の存在とコーヒーの摂取の間には、確かに「関連性がある」ということ。教授と研究チームは、実験室でローソニバクター・アサカロリティカスを培養し、コーヒーによってその増殖が速まることを確認した。つまり、「コーヒーが増殖を促していたことは明らか」だとしている。そして、「増殖を促すのは、おそらくコーヒーに含まれる代謝産物だろう」と説明している。
また、セガータ教授はこの増殖のペースについて、「おそらくカフェインによるものではない」と述べている。それは、カフェインレスコーヒーでも同様の効果がみられたためだという。
他の食品でも細菌を増やせる?
今のところ、この細菌との関連性が確認されているのは、コーヒーのみ。ただ、減量専門の外科医でもあるラトガース・ニュージャージー医科大学のダンビー・キム助教は、コーヒーにはクロロゲン酸とポリフェノールが含まれていることから、同じアロニア属の実にも、「同様の効果があるかもしれない」と話している。
「クロロゲン酸を多く含むその他の食品、ブルーベリーやリンゴ、ナシなども、腸内でこの細菌の増殖を促す可能性があるといえます。ですが、それを確認するためには、さらなる研究が必要です」
コーヒーは1日何杯飲むべき?
セガータ教授は、ローソニバクター・アサカロリティカスの増殖は、1日に1~2杯のコーヒーを飲むことで促進されるとしている。また、1日に3杯以上のコーヒーを飲む“ヘビードリンカー”の腸内の細菌数は、コーヒーを飲まない人に比べ、最大で10倍多くなっていたという。
腸へのデメリットもある?
コーヒーを飲むことについては、いくつか注意すべき点もある。カリフォルニア州サンタモニカにあるプロビデンス・セント・ジョンズ・ヘルスセンターの胃腸科専門医、ルドルフ・ベッドフォード医師は、「最大のリスクは胃酸逆流を起こす可能性が高まること」だと述べている。また、コーヒーは胃腸運動を刺激することから、下痢を引き起こすこともあるという。
ただ、カフェインを過剰に摂取することにならない限り、全体として、コーヒーは比較的安全な飲み物だと考えられると話している。
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
From Women’s Health US