世界を飛び回ることへの期待感と重なった、美しく朽ちた地球儀のような球体
今から8年くらい前、当時何度も訪れていたインドやモロッコ以外の別の場所にも行きたいと思い、フランス~ベルギー~オランダを車で巡る旅に出ました。買い付けではそんなに行ったことがなかった欧州。特に何の情報もないままに、蚤(のみ)の市を回ったり、そこで出会った業者から倉庫や廃業した工場を聞いては行ってみたりと、割と行き当たりばったりに巡っていました。
ベルギーで業者の倉庫を訪ね、いろいろ買い付けできたのでそろそろ帰ろうかとふと隣の作業場を覗き込むと、曇った窓ガラス越しに大きな球体が見えました。それがこのミラーボールです。ミラーの3分の1は朽ちて剥がれ落ち、とにかくボロボロな状態だったのですが、大陸のように残ったミラーと、偶然露出した緑がかった芯がまるで地球儀のように見えて、まさに一目惚れでした。
ちょうど「行ったことがない場所に行きたい」と思っていた時期と重なりこの“美しい地球儀”に背中を押されたような、そんな気持ちになったことを覚えています。今でも時折眺めては、まだ行ったことがない国に思いを馳せています。本来の用途からすると機能していないのですが、僕にとっては旅に出たくなる唯一無二のミラーボールです。
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前田 淳(〈LIGHT YEARS〉オーナー)
まえだ・じゅん/世界を旅しながら見つけた雑貨やテキスタイル、民芸品などを扱う福岡のセレクトショップ〈LIGHT YEARS〉のほか、3店を切り盛り。