【写真】物語の重要ポストを担う天才外科医・ドクターKとその助手・Q太
芳根京子主演の火曜ドラマ「まどか26歳、研修医やってます!」(毎週火曜夜10:00-10:57、TBS系)の最終話が3月18日(火)に放送される。同作は、水谷緑の「まどか26歳、研修医やってます!」「あたふた研修医やってます。」「離島で研修医やってきました。」(KADOKAWA)を原作にした研修医の成長物語。
「お医者さんだって、幸せになりたい!」と願う主人公が、働き方改革で変わりゆく令和の医療現場で「研修医はお客さま」と皮肉を言われ戸惑いながらも、ベテラン医師らの試練に立ち向かい、同期の仲間と励まし合って、医師として女子として人生と向き合う濃厚な2年間を描く。
芳根が演じるのは、医師1~2年目のイマドキ研修医・若月まどか(わかつき・まどか)。そして、まどかの最初の研修先となる外科の指導医・菅野尊(かんの・たける)を鈴木伸之、まどかの医学部時代からの同期でよき仲間である研修医・尾崎千冬(おざき・ちふゆ)を高橋ひかる、同じくまどかの医学部時代からの同期の研修医・五十嵐翔(いがらし・しょう)を大西流星(なにわ男子)が演じている。
このたび、WEBザテレビジョンでは、同ドラマのプロデューサーを務める塩村香里氏にインタビューを実施。世代間ギャップの描き方や、キャスト陣の配役の決め手・印象、最終話の注目ポイントなどを聞いた。
「大人たちも、悩みながら今の時代に向き合っている」
――令和と昭和の世代間ギャップが描かれていますが、塩村さんご自身は時代とともに変わりゆく価値観・仕事感をどのように感じていますか?
すごく難しいですが、極端な話、昭和の駄目親父と言われている人たちも、自分が昭和の駄目親父だとは思ってないだろうなと感じています。私自身そうですけど、いまだにイマドキな気持ちというか。
作品を作る上ではまどかの気持ちを主で考えるので、実際の若い子たちにもリサーチしながら、「新人の頃ってこうだったよね」とか、「上の人と向き合うときってこういうところが難しかったよね」とか、そういうことを話したりしています。
でも、ふと気付くと、我々の世代って会話している間に駄目親父側の目線になったりするんですよ。「でも若い子って最近こうじゃない?」みたいな。“私の時代はこうだった”とトークしている自分がいて、それが新しい発見でした。
イマドキ研修医と昭和のベテラン医師というキャッチを作ってはみたのですが、入り混じっている時代が当然あって。どちらの気持ちも、分かる部分も分からない部分もあるので、線は引けないなと。グラデーションになっているなというのを感じました。本来はその間に平成があるわけですし。
基本的に若者が主人公のときは、若者目線で昭和の駄目親父世代のことを“分かってくれない存在”として描くのですが、今回はそれだけで終わっては駄目だなと思いました。
親父たちも、若者に自分たちの価値観を押し付けて終わりでいいと思っているわけではなくて、実は試行錯誤しながらやっているのだと。大人だからって万能なわけではなくて、自分からするともう結構な大人だと思う人たちも、悩みながら今の時代に向き合っているのだと思います。
――まどかが憧れる天才外科医・ドクターKとその助手・Q太の人形劇も話題となっています。人形劇を入れたきっかけと制作のポイントを教えてください。
まどかがお医者さんになったきっかけを、本当に何げないものにしたかったんです。親が医者だったからとか、そういうよくある理由にするパターンもあるのですが、もう少しみんなが共感しやすい動機にしたいという狙いがありました。
お医者さんたちに聞くと、「ブラック・ジャック」を読んで医者を志したという人がすごく多かったんです。それで、やっぱり漫画とかアニメに影響されて職種を選ぶということはあると思ったので、子どもの頃にそういう漫画やアニメを好きで、なんとなく選んだという設定にしようとなりました。
そんなときに、もう1人のプロデューサーの松本桂子がとある人形劇に出会って。医療ものは難しくて大人のドラマだと思われがちなのが、人形劇があることによって、もうちょっと若い世代の人たちもほほ笑ましく入ってこられる要素になるのではないかということで取り入れられました。
結果的に、作った人形がめちゃくちゃかわいかったのと、大塚明夫さんと大谷育江さんにお声をやっていただくことによって、命が吹き込まれたドクターKとQ太が本当に魅力的で。
これをただまどかの思い出の人形劇の中だけで終わらせてしまうのはもったいないとなって、少し難しい医療用語の解説のときにもフレキシブルに出していいのではないかという提案がありました。
いろいろな出方で、愛されキャラとしてこの作品の顔になってくれたら、作品のカラーになるのではないかという思いもあって、シーンとしても増えていきました。
芳根京子のひたむきさがキャラクター作りのヒントに
――芳根京子さんの印象と魅力をお聞かせください。
座長として皆さんを明るい気持ちにさせてくれて、まどかみたいにどの世代の人とも同じ距離感で親しくなるので、温かい気持ちになります。また、第1話の心臓マッサージのシーンは、本当に全力を注いでいらっしゃって、そのひたむきさがまどかのキャラクター作りのヒントになりました。
最初は、まどかのキャラクターはちょっとのんきでマイペースで楽観的な部分があるような子でした。でも、どこか熱いものを持っていて、いつかそれが爆発するのだろうと思いながら初期設定を作っていたのですが、心臓マッサージのシーンを見たときにそれがよく表れていました。
まどかはそういう内に秘めた芯の強さがあって、なんとなくお医者さんになったと言いながらも、最初から患者さんと向き合う大切な気持ちを持っているし、さまざまな患者さんや先生と出会う中で、どんどんいろいろなことを吸収して成長していくので、あのシーンを見て、作っている側としても今後が楽しみだなと思いましたし、その先のシーンを作るときにも原風景的に印象に残っていました。
あと、涙のお芝居が一つ一つ丁寧で、見ている側にも迫ってくるものがあって、平常時の明るくて朗らかなまどかも、わっと感情が出てくるときのまどかも、どちらもすごく魅力的だと思います。
――鈴木伸之さんの印象と魅力をお聞かせください。
鈴木さんには、すごくストイックで硬派なイメージがありました。最初は菅野先生もそういうキャラクターにしようと思っていたので、鈴木さんのイメージにぴったりだなと思いキャスティングをしたのですが、鈴木さんを見ながら台本作っているうちに、もう少し自然体の柔らかさや、ちょっと抜けた感じがある方が親近感を持てるのではないかと思いました。
まどかたちには厳しくても患者さんたちには優しいとか、溝端淳平さん演じる同期の本郷にはちょっと子どもっぽい部分を見せるといった部分は、鈴木さんに演じていただいてからどんどんイメージが膨らんでいったので、当初よりも温かみのあるキャラクターになったなと思います。
――高橋ひかるさんの印象と魅力をお聞かせください。
高橋さんは、すごくアグレッシブにいろいろな役柄に挑戦していただける方という印象がありました。そんな中で、今まで彼女が演じてきた役柄とは違う、ちょっとはすっぱな、人に対してズケズケとものを言うけど、恋をするとかわいくなる部分があるような役をやっていただきたいなと思いました。
高橋さんは監督陣とも距離が近いので、言いたいことを言い合えて、それにすごく貪欲に食らいついてくださる方でした。漫画のキャラクター以上に深みが出たと思っています。
――大西流星さんの印象と魅力をお聞かせください。
大西さんは、キャラクターとして多彩な方だなと思っていました。ご本人の面白さや、アイドルとしてのかっこよさではない部分、毒舌なところや、一歩引いて周りのことを見守ってくれる温かさがすごく魅力的な子だなと以前から思っていて。
今回、原作にあるキャラクター以外にオリジナルキャラクターを作りたいとなったときに、例えば同期がおしゃべりをするシーンなどでは、今までの火曜ドラマだったら女子3人になりがちなので、それを変えたいなと思って。
でも、そこに普通の青年が入ってきても、ちょっと違和感があるというか。人生の話をするシチュエーションがたくさんあるので、お仕事の話や恋愛の話など、いろいろな話をしていても違和感なくいられる男の子のキャラクターを作りたいとなったときに、大西さんが浮かびました。
大西さんだったら、そこに違和感なく溶け込んで、なおかつツッコむときはツッコみ、見守るときは見守るという、イメージしていた五十嵐というキャラクターにすっとなじんでくれるのではないかなと思ったのでお願いしました。
実際にイメージ通りでしたし、想定していたよりも温かく見守る雰囲気が増したかなと思っています。もうちょっとズケズケ言うキャラクターでもいいかなと思っていたのですが、第3話で刺繍をしながらまどかを励ますシーンを見たときに、このドタバタした同期のメンバーたちをそっと見守るお母さん的な役割が五十嵐にはあると思いました。
なので、第5話の落ち込んでいる桃木を慰めるシーンなどもそうですが、そういうシーンを増やしました。そんな周りばかり見ている彼が最後、自分の人生と向き合うときにどういう答えを出すのかというところにも注目してほしいです。
芳根京子“まどか”と鈴木伸之“菅野”の恋模様が決着
――最後に、最終話の見どころをお聞かせください。
まどかが一生懸命“どういうお医者さんになるのか、どういう生き方をしたいのか”に向き合う中でも、菅野先生が一つの大きな存在になっているので、思いが高まる感じはあります。
一筋縄ではいかない2人の恋模様ですが、ちゃんとお互いが考えていることを理解し合っていくので、まどかと菅野先生がどう生きることを選んで、それぞれの人生にお互いの存在がどういうふうに必要なのかということを描ければなと思っています。
また、奥田瑛二さん演じる角田先生のキャラクターは、奥田さんとも話し合いながら、どういう人物なのかを掘り下げていきました。第4話で描いた患者さんとの向き合い方や、一生懸命働いているお医者さん、成長しようとしている研修医、いろいろな人とちゃんと向き合って、その人たちのことを見守る角田先生の姿は、憧れのお医者さんとしての一つの描き方だと思います。
まどかだけではなくて、ほかの研修医たちや、手塚先生(木村多江)、城崎先生(佐藤隆太)、西山先生(赤堀雅秋)たちが、角田先生からそれぞれ自分がバトンを渡されたと認識して、自分たちはこの病院のために何ができるか、今の医療のために何ができるかを考える。角田先生の存在を大切に描いてきたからこそ、みんながどう動くかというところが、最終回の見どころだと思います。
※高橋ひかるの高は正しくは「はしご高」