夕食後一杯のケフィアで腹部膨満感が軽減し、良質な眠りにつながる
“ケフィア”という食品の名前を耳にしたことはあるだろうか。ヨーグルトに似た発酵した乳飲料で、乳酸菌だけではなく酵母を含むのが特徴だ。発酵食品といえば、ヨーグルトやキムチ、味噌、コンブチャ、ほかにもインドネシアの伝統的な大豆を発酵させて作るテンペなども挙げられるが、これらは腸内環境を改善し、心血管疾患や2型糖尿病のリスクを減らし、抗炎症作用があるなどさまざまなメリットで知られている。
今回、注目するのはその発酵食品の一つ、ケフィア。ギリシャでよく食べられている抗炎症食品だ。夕食後に少し飲むというシンプルな夜のルーティンが胃の消化を助け、腹部の膨張を和らげてより良い眠りに導いてくれるのだという。このケフィアの摂り方を教えてくれたのは、スウェーデン人のミニマリズム・ウェルネスの提唱者であり、スカンジナビアのクリーンビューティーブランド、コレクト(COLEKT)の創設者でもあるエレン・アフ・ピーターセンだ。
私が彼女との会話でケフィアが有効であることを知り、初めて試したのは、豪華なディナーの後に感じた、腹部膨満感とともに食べ過ぎへの後悔が押し寄せたときだった。彼女は、ケフィアが食生活に欠かせないギリシャ人からすすめられたのだそうで、アドバイス通り夕食後の一杯のケフィアを数晩続けて試してみた結果、胃と心が落ち着き、消化不良の不快感が和らいだのだ。単なる個人的な感想とあなどることなかれ。実際に、複数の栄養士たちからもケフィアの有効性が認められている。
「ケフィアはプロバイオティクス食品で、消化を助ける有益な菌や酵母が含まれています。これらは腸内細菌群を整え、特に年末年始の食べ過ぎで乱れがちなお腹をサポートしてくれるのです。これらの微生物は、消化を助け、ディナー後に感じる膨満感を和らげるのに役立ちます。腸内細菌にとって贈り物のようなものですね」と教えてくれたのは、心理栄養士のイツィアル・ディゴン。
また、ケフィアはどの時間帯でも飲むことができるが、特に夕食後に飲むことが効果的で、日中の後半に感じる腹部の重さを和らげてくれる。いくつかの研究によると、夜間はグルコースの耐性が低下することがあるため、この点でもケフィアは有益だという。
ホルモンバランスの専門家である栄養士ローラ・パラダは次のように解説している。「ケフィアは血糖値のコントロールを助けます。ケフィアに含まれる細菌は糖分を吸収するため、血流に入る前に糖分を減少させる手助けをし、血糖値の上昇を抑えることができます」。また、ケフィアが腸内ガスや炎症を軽減するのにも役立つことを確認しているそうだ。
夕食後のケフィアで食欲を抑える
特に夕食の時間帯は疲れているため、不健康な食べ物や満腹感を得られない軽食に手を出しやすく、それらが食欲を刺激し、甘いものやハイカロリーのものを食べがちだ。だからこそ、夕食後にケフィアを飲むことで、この欲求を和らげることができるのだという。「ケフィアのクリーミーで滑らかな食感は、一日の終わりを“美味しいもの”で締めくくるという満足感を与えてくれます。フルーツや良質なカカオチップスを加えれば、さらに“健康的なご褒美”としてデザートタイムを楽しめるでしょう」(ディゴン)
実際、エイミー・シャーが著書『Comer sin culpa』(Zenith出版)で説明しているように、発酵食品やプロバイオティクスは欲求のコントローラーとしての機能を果たす。「発酵食品を食事に取り入れることで、甘いものへの欲求を抑えることができます。なぜかというと、発酵食品は味覚が酸味や苦味に慣れることを手助けするので、結果的に甘いものを欲しにくくなるからです」とシャーは述べている。
ケフィアが体に合うか、合わないかは要チェック。ー消化器系疾患には悪影響も
パラダは「ケフィアをディナー後に摂取することは消化を助けるための良い方法になり得ますが、少しずつ摂取して自分の体の反応を確認しながら取り入れるようにしてください」と忠告する。なぜなら発酵食品の消化に慣れていない人は、腸内でガスや不快感を引き起こすことがあるからだ。「発酵食品に慣れていない場合は、最初にプレーンヨーグルトなどの簡単な発酵食品から始め、ケフィアを少量ずつ摂取し、最終的に1食分の量にするようおすすめします」
さらに、マルタ・マシグループの栄養士であるアンドレア・バスケス・レムイニャンは「消化器系の問題やSIBO(小腸内細菌異常増殖症)、乳糖不耐症の人にとっては、ケフィアが消化不良を引き起こす可能性があります。そのため、症状が改善するまで摂取を避け、少しずつその耐性を試すのが良いでしょう」と付け加えた。
良質なケフィアの選び方
マルタ・マシの栄養士は、質の高いケフィアを選ぶことの重要性を強調する。「加糖や香料、着色料が加えられていないナチュラルなケフィアが望ましいです。糖分は自然由来のものに限定して。もし酸味が苦手なら、キウイや熟したベリー類と一緒に食べれば甘みをプラスできます」
ケフィアの更なるメリット──免疫力や皮膚を健康に保つ効果も
ケフィアは、特に夜にリラックス効果や消化促進効果があり体調を整えてくれるが、時間帯に限らず、ほかにも健康効果があるという。例えば、食物繊維を補うことで便秘の改善に繋がったり、免疫システムを強化することでウイルスや細菌から守ってくれたりもする。「ケフィアで生成される乳酸は強力な抗菌作用を持っています。研究によれば、有害な細菌や真菌株を排除するのに役立ち、感染症から守ってくれることが分かっています」(パラダ)
また、体脂肪を減少させ、コレステロール値の低下にも関連しているそうだ。ほかにも、肌にも良いとされ「これらのプロバイオティクス微生物は、腸内健康、免疫システム、さらにはニキビや顔の赤みさや炎症を引き起こす“酒さ”といった皮膚疾患にも重要な役割を果たします」とバスケス・レムイニャンは語る。ケフィアは消化を促進するだけでなく、免疫力や皮膚の健康を保つためにも良い影響を与える、素晴らしい食品だといえるだろう。
Text: Ana Morales Translation: Mika Mukaiyama
FROM VOGUE.ES
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