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ケンゾーが8年ぶりのウィメンズ単独ショー。ウサギがモチーフの遊び心溢れるフェミニンスタイル【2025-26年秋冬 パリコレ】

  • 2025.3.15

創業者が描いたウサギがキーモチーフ

今季のコレクションは、創業者・高田賢三が1979年に描いたウサギのスケッチからデザインが広げられ、NIGOのフィルターを通して豊富なアーカイブが再解釈された。ウィメンズコレクションに焦点を当て、これまで以上にフェミニンで遊び心に満ちたワードローブが揃った。

招待状はベビーブルーのウサギのぬいぐるみ。これは、フランスの老舗ぬいぐるみブランド「ラ プルシュリー(La Pelucherie)」とのコラボレーションによるもので、耳には、英語で「運がいいですね」を意味する“Lucky You!”というタグがつけられていた。ぬいぐるみは2色展開で、ブルーのほかに、「私は運がいい?」というようなニュアンスになる“Lucky Me?”と名付けられたパウダーピンクのウサギも登場。ショーでは、ぬいぐるみを縫い合わせたトップスやシューズ、スカーフなど、ユニークなアイテムがラインナップされていた。

サヴィル・ロウに触発されたテーラリング

ショーはNIGOが集めているイギリスのサヴィル・ロウのコレクションにインスパイアされたテーラリングでスタート。ファーストルックは純白のバージンウールのタキシードジャケットで、着物スリーブになったベルベットのラペルのタキシードジャケットなどが続く。ボトムスに合わせているのが、シースルーの丸みを帯びたバルーンパンツ。今季はコレクション全体を通して、このバルーンシルエットが踏襲されており、異なる素材や柄、ジャンプスーツなどのアイテムがそろう。

市松模様のレースは、1990年代のケンゾーダミエをアレンジしたもの。ウサギの大好物であるニンジンを持ったモデルたちがキュートな印象を与える。序盤では、マスキュリンなアイテムをフェミニンにアレンジし、ゆったりとしたボーイフレンドフィットが特徴的だ。

センシュアルなレイヤードスタイル

これまでのケンゾーでは、メンズとウィメンズの共通テーマとしてユニセックスな提案が多かったが、今季はウィメンズ単独コレクションならではのフェミニンなデザインが際立っている。たとえば、キャミソールはリボンやレースをあしらったサテン生地のランジェリー風で、肩紐を下ろしてレイヤードすることで、センシュアルなアクセントを加えている。

また、アーカイブの花柄水着をアレンジしたボディスーツは、リバーシブル仕様で花柄と星柄の2面が楽しめるデザイン。今季のポップな色柄には、アンディ・ウォーホルのポップアートからインスパイアされている。

NIGOらしいストリートウェアの要素

NIGOが得意とするストリートウェアのエッセンスも随所に盛り込まれている。グラフィックTシャツにはウサギのキャラクターが描かれ、シルエットはタイトなクロップドデザインで、若々しく、ギャルのような印象を与えている。白地にウサギの絵柄がプリントされたTシャツにはカラフルな布用マーカーがセットで付き、塗り絵を楽しめるアイテムとして販売されるという。

日本製のデニムはボタンを開けたフライ部分にはハート柄が描かれており、これは恋人とだけ共有できるロマンチックな仕掛け。また、ベルトには目を引く大きな「KENZO」のロゴと、カタカナで「ニゴー」のロゴが刻まれている。

チームへの感謝を込めた手刺繍

カラフルな落書き風のモチーフは、アメリカの大学の卒業式で寄せ書きする"カレッジリバージャケット"にヒントを得たもので、NIGOがアトリエのスタッフへの感謝を込めて、一人一人の名前のハンドライティングを手刺繍で載せたアイテム。これらのモチーフは、ニューエラとのコラボレーションによる"59FIFTYフィットキャップ"にもあしらわれた。

創業者の遊び心へのオマージュ

フィナーレには、「ラ プルシュリー」のフェイクファーを用いたウサギの耳付きフーディや尻尾付きのコートが笑いを誘う。ここまでくると「少し、派手にやりすぎでは?」と思うかもしれないが、舞台衣装も手掛けていた創業者のアーカイブには着ぐるみも存在しており、それを現代的に解釈したものだ。

ラストルックのウサギのぬいぐるみストールも、高田がテディベアで作っていたものを参考にしているという。パーティ好きだった創業者は派手な服を好んで身にまとっていたこともあり、その陽気でお茶目な精神へのオマージュが捧げられているように感じられた。

来シーズンへの伏線

Tシャツなどに描かれたグラフィックからは、ピンクの雄ウサギの“Lucky Me?”がブルーの雌ウサギの“Lucky You!”に恋をするというラブストーリーが垣間見え、木の影からはブランドアイコンのタイガーが覗いている。この物語は来シーズンの2026年春夏コレクションにつながっていくという。

ショー後の挨拶にはNIGOが登場せず、今季のショーには立ち会っていなかったことが明かされた。これは、新体制のチームへの深い信頼の表れだろう。創業者の高田賢三の遊び心とNIGOのストリートの要素が融合したケンゾーは、今季、センシュアルさと大胆さという新たな表情を加え、フレッシュなアップデートを見せた。

※ケンゾー 2025-26年秋冬コレクションを全て見る。

Photos: Courtesy of Brand, Gorunway.com Text: Mami Osugi

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