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ヘレナ・クリステンセンの愛するヒュッゲな暮らし

  • 2025.3.15
ウエストヴィレッジに暮らして20年以上。Design Within ReachのMuse Sofaや、蚤の市で購入した絵画のほか、ヘレナのインテリアへの愛とセンスがあふれるキッチン。大半の時間をここで過ごすとか。

デンマーク出身のヘレナ・クリステンは、90年代を代表するスーパーモデルの一人だ。デンマーク人の父とペルー人の母を持つ彼女は、スーパーモデルや写真家として世界を魅了してきただけでなく、そのクリエイティブで多彩なキャリアでも人々の注目を集めてきた。雑誌『ナイロン』の創刊パートナー兼クリエイティブディレクターを務め、ニューヨークでコンセプトストア「ブティック」の経営を行ってきたほか、ファッションブランド、スターク&クリステンセンのCEOとしての顔をもつ。また、2019からは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使を務めるなど、ニューヨークを拠点に他分野において、世界を股にかけ、幅広く活動している。

ニューヨークの自宅で過ごす、かけがえのない時間

ヘレナのオフィススペース。壁一面に飾られた写真の数々は、自身のモデルとしてのキャリアや、母親としての思い出を象徴するものだという。

忙しい日常のなかでも“いつも帰る場所”としてヘレナが大切にしているのは、ニューヨーク・マンハッタンにある自宅のアパート。故郷デンマークにも別荘をもつ彼女だが、ニューヨークの自宅は、とりわけ特別な存在のようだ。「世界中を旅して素晴らしい場所を訪れたり、たくさんの興味深い人々と出会ったり、どこでも素敵な経験をすることができますが、自分の家こそが最も神聖で大切な場所です。家とは、自分自身や自分の気持ちを深く映し出す存在であり、一日の終わりに必ず帰る場所です」普段から外にいる時間の長いヘレナにとって、家での過ごし方はとても大切なものだという。「私はたくさん旅行しますし、アウトドア派でもあるので、家にいられる時間をありがたく感じています。それに、一人で過ごすのも大好きです。一日に何時間も本を読んだり、写真を見たり、整理したり、そんな時間を楽しんでいます。たった一つの引き出しを整理しているだけで、完全に時間を忘れてしまうこともあります」

まるで宝物を集めたかのようなインテリアには彼女ならではのセンスが光り、唯一無二の空間が広がる。「いつの間にか自分の好きなもので埋め尽くされた空間になって、どうやって部屋を装飾してきたのかは自分でもよくわからないですね。毎日起きて家の中を歩いているときに、オブジェや壁に掛かるアートを見て微笑みたいと思えるような空間にしたいと思っています」そうヘレナが話すように、彼女の部屋には数え切れないほどのアートが飾られている。部屋の中ではアートが最も重要な役割を果たしていて、見渡すかぎり、壁には絵画や写真、そして本やオブジェなど、世界中から集められたクリエイションが揃い、そこに彼女のセンスが注ぎ込まれているのだ。「ニューヨークのアパートはこれまでの旅や経験、出会ったアーティストたち、読んだ本、そして愛するすべての色が揃った場所。見るたびにワクワクするような、風変わりなオブジェでいっぱいです」デンマーク人が大切にする“ヒュッゲ”は、インテリアになくてはならないものと話すヘレナ。デンマーク語で「居心地がいい空間」や「楽しい時間」を意味するヒュッゲ。それは彼女にとっても非常に重要な要素であり、ニューヨークのアパートに入る前から感じられる空間になっているという。「私の家は、まさに“ヒュッゲ”スポットそのもの。玄関を開ける前からすでにその雰囲気が漂っています。どこを見ても、ヒュッゲを感じさせるアイテムがたくさんあります」ヘレナのニューヨークの自宅での過ごし方も、まさにヒュッゲを体現した暮らしだ。「キッチンにいるのが大好きなんです。料理と食べることが好きなので、朝、日の光がアパートに差し込むと、ほとんどの時間をキッチンで過ごします。夕方は、リビングにあるテラスのドアのそばに座り、鳥の声を聞きながら、沈む夕日を眺めます。夏になると、大きな窓を開けてそよ風を感じます。冬には暖炉に火を入れ、キッチンにある美しく柔らかいダスティブルーのソファに丸くなってくつろぎます。そんな合間に仕事をしたり、外で過ごしたりしています」

デザイン大国でもあるデンマークは、そのデザインセンスのよさにも定評がある。ヘレナは、デンマークのライフスタイルは特別なものだとも語る。「デンマークのライフスタイルは本当に特別でユニークであり、デンマーク人が特に大切にしている点の一つです。デンマークに暮らす人の多くは、美しく、居心地がよく、温かみのある家を作り上げる感性を生まれながらに持っているように感じます。インテリアやデコレイションにおけるセンスに富み、才能あふれるデザイナーや建築家も少なくありません。私は特に、1950年代や60年代の家具デザイナーに夢中ですね」デンマークのインテリアが優れているのは、「一年の多くの期間、暗い冬を過ごす国に住んでいるため、家を視覚的に美しく、そして包容力に満ちた空間にすることに一層の努力を注いでいるから」だとヘレナ。

「デンマークの人々は、単に見た目が美しいだけでなく、温かさと快適さを放つような家を作り上げることに本当に長けています。それはまさに一つの芸術と言えるものであり、ヒュッゲの本質を完璧に表現しているのです」と、母国の人々がもつ家へのこだわりについて説明する。それゆえに、夏とクリスマス、加えて年に数回行くというデンマークの別荘での過ごし方も、リラックスしたかけがえのない時間だと話す。「別荘は、北部の海沿いにあるビーチコテージ。毎日ビーチに行き、できるだけたくさん泳ぎ、美しいヘザーヒルを散歩したりしています。そこには野生の羊がいて、とても素晴らしい場所なんです。コテージは色あせたカラーリングで、自然から持ち込まれた多くのオブジェが置かれています。貝殻や石がたくさんあり、とてもリラックスした、穏やかで詩的な雰囲気が漂っています。海や船を描いた古い絵がたくさん飾られていて、とても味わい深い空間です。リビングルームには、サンドカラーのボーコンセプトのソファと、スモーキーピンクのアームチェア2脚を置いています。そのアームチェアは小さなカップケーキのように見えて、とても気に入っています」と、こだわりのインテリアについて話してくれた。

これまでのキャリアに通ずるインテリアへの関わりと創造

モデル、写真家としてのキャリアをスタートさせてから、実にさまざまな役割を成し遂げてきたヘレナ。インテリアやアートにも精通する彼女は2025年春、同郷であるデンマーク発の家具ブランド、ボーコンセプトのグローバル・アーティスティック・ディレクターに就任した。「ボーコンセプトからグローバル・アーティスティック・ディレクターの役職について声をかけていただいたとき、とても光栄でしたし、その可能性に心が躍りました。役職のさまざまな側面やコラボレーションの進め方について話し合うためにミーティングをした瞬間から、とても自然な繋がりも感じました。私は幼い頃からずっと建築、インテリア、オブジェ、そしてアートが大好きで、人生のすべてがこの情熱を中心に回っています」ボーコンセプトのヴィジョンは、ヘレナのクリエイティビティ、そしてライフスタイルにも通ずるものがある。「私は長い間、ボーコンセプトのスタイルや家具、オブジェに魅了されてきましたが、興味深いデザイナーたちとコラボレーションして、新しく楽しいオブジェを生み出すその姿勢にも感銘を受けています。彼らのスタイルには、時代を通じて培われたデンマークデザインへの敬意と理解が強く反映されており、これが特に彼らのコレクションの中で私が愛する点です」ブランドの新しい役割を担うヘレナだが、それは彼女のキャリアから考えてもとても自然なことだった。

「子どもの頃から旅行し始めて以来、個性的でおもしろいオブジェやアートピース、小物などを集めるコレクターであり続けてきました。そして、どこに住んでも、自分が快適で居心地よく感じられるような小さな空間を作り出すために、愛情と努力を注いできたのです。ヴィジュアルの美しさは私にとって大きな喜びを与えてくれるもので、周囲のすべてから深くインスピレーションを吸収してきました」これまでにもいくつかのデザインコラボレーションに携わり、友人のカミラ・スタークと一緒にスターク&クリステンセンというブランドを通じて作品を作り出してきたヘレナはまた、多くの家の装飾も手がけてきたという。「建築やインテリアに関わることは、私が常に深く関与し、心から興奮を感じる分野です。だからこそ、ブランドの才能あるチームと一緒に創造し、デザインし、ブレインストーミングをするエキサイティングなミーティングの数々や、アイデアを共有し、ほかのアーティストの創造性や才能に目を向けることは、本当に刺激的です」

人生における「選択の基準」と核に据える揺るぎない信念

取材スタッフを温かく迎え入れてくれたヘレナの衣装はすべて私服。

第一線で数え切れないキャリアを築き上げてきたヘレナだが、私生活ではモデルとしても活動するミンガス・ルシアン・リーダスの母親でもある。仕事でも私生活でも、新しい挑戦や新しい一歩を踏み出す瞬間、そして人生の大きな選択をするとき、ヘレナにとって“直感と感覚が大きなポイントになっているようだ。「直感や感覚をとても重視しています。ときには、物ごとがなぜそのような形になるのかを説明することすらできないことがありますが、それは内側から自然に湧き上がるものなのです。私は、自分が愛するプロジェクトや尊敬する会社と取り組むことを“挑戦”として捉えるのではなく、むしろワクワクする冒険のように感じています。私にとって、自分の本能や人生観、思考の感覚を信じることが何よりも大切です」自身のキャリアを振り返り、「自分の直感を信じること、そしてこれまでのキャリアと世界中を旅して得たすべての経験に感謝している」と語る。

「長年の仕事や旅を通して、周囲のあらゆる場所や人々から多くのインスピレーションを吸収してきました。そして、それらの知識と知恵を最大限に生かしながら、自分の道を進んでいます」UNHCRの親善大使として世界中を旅しながら、現地で写真を撮り続けるヘレナは、その経験が人生で最も誇りに思っていること、そして最も責任を感じている仕事だとも語る。「重要で尊敬に値する組織、そして何よりも人助けのために、自分の人生、エネルギー、努力を捧げている多くの素晴らしい人たちとともに働けることは光栄なことです。難民キャンプで出会うのは、とても素晴らしく、強く、立派な人たちばかりで、彼らの多くが経験してきたこと、そして今も経験していることは言葉では言い表せないものです」現在も精力的に活動し、多忙な生活を送るヘレナ。そのなかでの快適で充実したライフスタイルとは、彼女にとってどのようなものなのだろう。「自分が幸せで胸が高鳴る生き方をすること、周りのすべてに対して常に好奇心を持ち、できる限り多くを吸 収し、人生を通じて知識や知恵を蓄えていくことです。できるだけ自然のなかに身を置き、精神的に満たされるような仕事に取り組み、できる限りアクティブに過ごすことも重要です。そして、思いやりのある素晴らしい人々に囲まれ、美味しい食事をたくさん楽しみ、多くの本を読み、なるべくたくさんのアートに触れること。それらが私にとっての快適で充実したライフスタイルを意味します」

リビングルームの一角。サイドテーブルはBoConceptのMadrid。

彼女が作り上げる家のインテリアも、その快適な暮らしをするために不可欠な要素だ。「居心地がよく快適に感じられるようなインテリアであれば、自然と幸せでリラックスした気持ちになります。服を選ぶときと同じような感覚です。好きな服を着るととてもリラックスして快適な気分になり、同時に刺激や自信も得られますから」。ヘレナにとって家は、人生すべてのピースが集まったインスピレーションの源でもある。豊かで心地よい“ヒュッゲ”な暮らしを送りながら、彼女はこれからも冒険を続ける。

Photography by Tiago Molinos Text by: Kurumi Fukutsu Hair: Dawson Hiegert Makeup: Maria Ortega at South James using Hourglass Cosmetics Coordination: Maki Saijo Editor: Yaka Matsumoto

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