お料理教室を通じて上方の家庭の味を伝える日本料理家・吉田麻子先生と、奈良在住の編集者・ふなつあさこの“Wあさこ”がお届けする、上方(関西)の食にまつわる大人の社会科見学。今回は、数々のメディアでも取り上げられている大阪・八尾(やお)の「藤田金属」さんの鉄フライパンと、大阪に春を告げる伝統野菜・若ごぼうをフィーチャーします。
藤田金属さんのキッチンをお借りして、「若ごぼうの炊いたんが食卓に上がると、いよいよ春やなぁと思うねん」という麻子先生のお母さま直伝レシピもご紹介します!
育てる手間なし! 鉄分補給にも! フェムテックなフライパン
「あさこちゃん、私次ここ行きたいねん」と麻子先生たっての希望で取材に訪れたのは、町工場が立ち並ぶ大阪・八尾市にある藤田金属さん。1951年に創業し、鉄フライパンをはじめ、金属を使ったさまざまな日用品を製造していたそう。フッ素加工のフライパンの登場により、一時は製造されなくなっていた鉄フライパンですが、お客さんからの要望により2010年から製造を再スタート。
当初は一年で4773個しか売れなかった鉄フライパンの販売数は、今や25万個を超えるそう。4代目社長の藤田盛一郎さんを含む3兄弟による、家族経営ならではの密なコミュニケーションとスピーディな判断、そして町工場ならではの一貫生産を守り続けていることが好調を支えているようです。
そんな鉄フライパンのメリットは、
① 長く使えること。使うほどに油がなじみ、使いやすくなっていきます。
② 何と言っても料理がおいしく仕上がること。蓄熱性が高く、高温調理が可能なので、例えば炒め野菜が程よくシャッキリ、チャーハンならパラッと仕上がるんです。
③ さらに、鉄フライパンでお料理をするだけで、鉄分を摂取することが可能! 最近のヒット商品「お味噌汁パン」なら、鉄ではないフライパンや鍋に比べ、鉄分が約40倍になるという検証結果も得られているそう。
一般的な鉄フライパンというと、手に入れてから油をなじませて“育てる”工程がちょっと面倒な印象がありますが、藤田金属さんの鉄フライパンはひとつひとつシーズニング(焼き入れ、油ならし)が施されているので、手に入れてすぐ使えます。ちなみに、シーズニングの際になじませている油は、食用のオリーブオイル! 安心ですね!
お手入れの際は、調理後、フライパンがあたたかいうちにお湯で洗います。油膜が落ちるため、洗剤は使用NG! その後、再度火にかけて水分を飛ばします。また、鉄は塩分に弱いため、 お料理はすぐ別の容器に移し、フライパンの中に入れたまま保存はしないように。……それだけなら、ズボラな私でもなんとかなりそうです!
日本料理もフライパンでいけます◎ おすすめは深型フライパン
「フライパンで日本料理って作れますか?」と藤田社長に逆質問された麻子先生。「全然、めっちゃ作れます!」と、大阪を代表する春野菜「若ごぼう」を使ったレシピを提案。セレクトしたのは、「イニシャル 鉄深型フライパン」の20cmサイズです。
若ごぼうの炊いたん
【材料】(作りやすい量)
・若ごぼう…4本
・油あげ…1枚
(A)だし…200mL、みりん…50mL、酒…40mL、薄口醤油…30mL
・ごま油…適量
【作り方】 *準備:油あげは油抜きしておく
① 若ごぼうの根の部分を、上から水を流しながらタワシでこする。
② 若ごぼうを葉・茎・根に切り分ける(茎と根の間は捨てる)。茎は3cm長さに切り、根は斜め薄切りに。フライパンに湯を沸かし、さっと茹でてザルに取る。※葉にはアクがあるので、このレシピには使用しません
③ 油あげを短冊に切る。
④ フライパンにごま油を熱し、②の若ごぼうの茎・根と③の油あげをさっと炒めて、ボウルなどに合わせた(A)の材料を加えて10〜15分ほど色よく煮る。
できあがった「若ごぼうの炊いたん」を藤田社長に試食していただきました。「めちゃめちゃおいしい! これだけで何杯も白ごはん食べられますわ」と大喜び!!! 私もひと口試食してみましたが、ほんのり甘みのあるだしと若ごぼうの歯応えがベストマッチで、もう何口かいただいちゃいました。
藤田金属のオープンファクトリー「フライパンビレッジ」併設のショップにはフライパンがずらり。同じように見えて厚さが違ったり、取っ手の素材やデザインが違ったりと(ミズノ木製ベースボールバットの不適合材をアップサイクルした変わり種も!)、必ず好みのフライパンに出会えるラインナップの豊富さです。
独自のスライド式ハンドルで取っ手が片手で着脱できる「フライパンジュウ」シリーズや専用タワシなどのアクセサリー類、ライトなどの鉄インテリアアイテムも充実。ちなみに、麻子先生も私もしっかりお買い物しました。帰ってすぐ調理に使ってみましたが、最初から全く焦げつかず、感動! ただし、火加減は少し抑えめぐらいがちょうどよさそうでした。
2024年7月には、JR秋葉原駅と御徒町駅間の鉄道高架下に位置する、“日本のものづくり”をテーマにした商業施設『2k540 AKI-OKA ARTISAN(ニーケーゴーヨンマルアキオカアルチザン)』内に直営店「FUJITA KINZOKU Tokyo」がオープン。関東でも実物を見て選ぶことができます。
ごぼうとは別モノ! 食べたら病みつきな大阪の伝統野菜・若ごぼう
大阪では「春を告げる野菜」として親しまれている若ごぼう。その主な産地である八尾市では、江戸時代から栽培されていたそう。先祖代々、八尾市で若ごぼうを育てている「めぐみちゃん農園」の森川雅恵さんにお話を伺いました。
「一般的なごぼうは根を食べますが、八尾若ごぼうは根だけでなく葉や茎も食べられますねん。せやから葉ごぼうとも呼ばれます」と雅恵さん。9月にタネをまき、はじめに芽吹いた葉茎は刈り取り、2度目に伸びてきたものを1月下旬から3月半ばにかけて収穫するそう。雅恵さんによると「最初に出てきたんは、スジがあって硬いもんやから、手間やけど一度刈り取るんです」とのこと。
めぐみちゃん農園では、ハウスとトンネル栽培で育てているそうですが、「お料理屋さんや料理家さんからも連絡もらうんやけど、今年はちょっと生育が遅めですわ」と雅恵さんも気を揉んでいる様子。それでも、あたたかい日には1日で5cmほども伸びるそうで、遅くとも3月下旬には出荷が終了する見込みとのことです。収穫した若ごぼうを束ねると矢を束ねたようであることから、「やーごんぼ」とも呼ばれますが、これは八尾若ごぼうだけの特徴だそう。
麻子先生が「地元ではどうやって食べはるんですか?」と雅恵さんに尋ねると、「一番おすすめは天ぷらです。かき揚げにしてもええし。揚げるとおいしいですよ!」。煮物はもちろん、炒め物や白和え、炊き込みごはんなどなんでもござれ。和風パスタは雅恵さんご夫妻の大好物だとか。
いわゆるごぼうは、独特の香りが強いですが、若ごぼうはクセがなく、根はポリポリ、茎はシャキシャキと食感の違いも楽しいお野菜。食物繊維や鉄分も豊富ですが、アンチエイジング効果が高いとされるポリフェノールの一種「ルチン」が多く含まれているんだとか♪
めぐみちゃん農園では、こちらも八尾市の特産品である八尾えだまめも育てているそうです。「また来てくださいね!」とあたたかいお人柄の雅恵さんのお言葉に甘えて、麻子先生とまた伺いたいと思っています!
この記事を書いた人
編集者
ふなつあさこ
生まれも育ちも東京ながら、幼少の頃より関西(とくに奈良)に憧れ、奈良女子大学に進学。卒業後、宝島社にて編集職に就き『LOVE! 京都』はじめ関西ブランドのムックなどを手がける。2022年、結婚を機に奈良へ“Nターン”。現在はフリーランスの編集者として奈良と東京を行き来しながら働きつつ、ほんのり梵妻業もこなす日々。