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桜(サクラ)は何種類ある? 基本的な14品種と特徴や魅力も解説!

  • 2025.3.17

サクラは万葉集や古今和歌集でも詠まれているほど、古くから日本で愛され続けてきた花です。サクラといえば日本をイメージする人が多いほど、今や世界でも有名になりましたが、じつは北半球の温帯地域に広く分布し、花が美しい種類や実を収穫する種類、常緑の種類など、さまざまなサクラが見られます。今回は、美しい花が楽しめる、日本のサクラの種類について詳しく解説します。

桜の基本情報

福島県二本松市「合戦場のしだれ桜」。

桜は、バラ科サクラ亜科サクラ属(Prunus subg. Cerasus)の落葉高木、または低木です。日本ではヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラ、エドヒガン、チョウジザクラ、マメザクラ、タカネザクラ、ミヤマザクラ、クマノザクラの10種を基本にして、変種を合わせると100種以上の桜が自生しており、沖縄には野生化したといわれるカンヒザクラがあります。また、これらから育成された園芸品種は200以上もあり、一重咲きや華やかな八重咲き、枝垂れ咲きなど、品種によって多様な咲き姿や色合いを楽しむことができるのも魅力です。

桜の主な種類

ひと口に桜といっても、公園や街路樹として植えられる大きな品種から、個人の庭に植える中木程度の品種まで、じつに多くの種類があります。そこで、日本で見られる代表的な桜をご紹介しましょう。

ソメイヨシノ(染井吉野)

Alex Manders/shutterstock.com

開花時期:3〜4月
落葉高木

ソメイヨシノは日本で最も有名な桜であり、日本固有の桜とされています。江戸末期~明治初期頃から園芸品種として栽培されており、当時の染井村の植木職人や造園師が、オオシマザクラとエドヒガンを交配させてつくったとされています。花弁は5枚あり、咲き始めは淡い赤色で、満開になると白色に近い色になります。日本で栽培されているソメイヨシノすべてがクローン(挿し木や接ぎ木などでの繁殖)で増やされたため、一斉に開花するという特徴があり、桜の開花日を予想する「桜前線」もソメイヨシノの開花を基準にしています。

エドヒガンザクラ(江戸彼岸桜)

zzz555zzz /Shutterstock.com

開花時期:3月下旬(他よりも10日ほど早い)
落葉高木

エドヒガンザクラは、本州・四国・九州の山地でよく見られる種類で、樹高は15~25m、楕円形の葉が特徴です。花弁は5枚で一重、色は薄紅色から白に変わります。丈夫で花がたくさん咲くため、多くの品種の母種として使われ、ソメイヨシノの片親としても有名です。寿命は長く、日本の三大桜と謳われる山梨県北巨摩郡武川村の山高神代桜(やまたかじんだいざくら)は樹齢2,000年以上、岐阜県本巣市の根尾谷淡墨桜(ねおだにうすずみざくら)は樹齢1,500年以上、福島県田村郡三春町の三春滝桜(みはるたきざくら)は樹齢1,000年以上とされています。これらは国の天然記念物に指定され、世界中から多くの観光客が見物に訪れます。

福島県田村郡三春町の「三春滝桜」は樹齢1,000年以上と推定されており、国の天然記念物に指定されている。YouTubeのライブ中継で開花を見ることができる。 Find!三春ホームページ 写真提供/福島県観光復興推進委員会

マメザクラ(豆桜)

開花時期:3月下旬〜5月上旬(自生地)、3月下旬〜4月上旬(東京)
落葉小高木または低木

マメザクラは、箱根や伊豆、富士山の標高1,500m以下の低山地から丘陵帯に咲く自生種で、別名「フジザクラ」とも呼ばれます。樹の高さは他の種類と比べて低く、岩石地に生えているものは、1m以下でも花をつけます。また、花径も1~2cmと小さく、花弁は5枚、白色から淡紅色で下向きに咲くのが特徴です。花後に伏毛のある葉が生え、直径8mm程で甘みのある黒い実がなります。挿し木でも増え、家庭の庭でも育てられます。

ヤマザクラ(山桜)

traction/Shutterstock.com

開花時期:3月中旬〜下旬(鹿児島)、3月下旬(対馬)、4月上旬〜中旬(京都、東京) 、4月下旬(松島)
落葉高木

ヤマザクラは日本で最も代表的な種類で、古くから詩や歌に詠まれ、親しまれてきました。山地に広く自生し、関東、中部から南の地域によく見られます。花と同時に葉が出るのが特徴で、花弁は5枚、淡紅色の花を咲かせますが、色の変異が多く、白色や先端だけ色が濃い花を咲かせる場合もあります。葉色は赤紫色や褐色など、さまざまに色が変化します。樹皮は暗褐色から灰褐色。丈夫で加工性が高いので、木材としても利用されています。

桜の名所として有名な吉野山の桜は、650年頃から修験者たちが植えたものといわれており、ヤマザクラを中心に約200種3万本の桜が密集している。吉野山観光協会

オオヤマザクラ(大山桜)

開花時期:4月中旬〜5月上旬(日光)、4月中旬(東京)
落葉高木

オオヤマザクラは、ヤマザクラより花や葉が大きいことから名付けられました。寒さに強く、北海道の山地によく見られることから、別名「エゾヤマザクラ(蝦夷山桜)」とも呼ばれています。花は直径3~5cmになり、花柄はほとんどなく、ソメイヨシノなどと比べて濃いピンク色の花を咲かせます。樹高は7~15mですが、20m程度まで成長することもあります。夏になると小さな黒紫色の実をつけ、鳥たちがその実を食べにきます。

カンヒザクラ(寒緋桜)

開花時期:1月下旬〜2月下旬(沖縄)、3月中旬(東京)
落葉高木または亜高木

カンヒザクラは沖縄でよく見られる桜で、早咲きとして有名なカワヅザクラの片親です。花の色は名前の「緋」からも分かるような赤紫色が一般的ですが、ときに白色や色の淡いものなどもあり、個体によって異なります。開花後、花は釣り鐘のように垂れ下がっていき、最後は花びらがついた状態で落ちます。花の大きさは小ぶりで、樹高も他と比べて約5mと低いのが特徴です。寒さに弱く寒冷地ではあまり育ちませんが、耐暑性があります。別名がいくつかあり「ヒカンザクラ」や九州南部では「ガンジツザクラ(元日桜)」、「サツマヒザクラ(薩摩緋桜)」と呼ばれることもあります。

オオシマザクラ(大島桜)

開花時期:3月下旬(伊豆半島、南伊豆) 、4月上旬(東京)
落葉高木

伊豆七島、伊豆半島でよく見られる桜で、伊豆大島北東部にある本種の株は天然記念物に指定されています。樹形、花の形や色、果実の味まで個体によって変異が多く見られますが、ふつう花弁は5枚で白色が多く、淡い香りがします。また葉の成長と一緒に花をつけ、丈夫で成長が早いという特徴があります。葉の長さは5~10cmで先端が尖っており、桜餅を包む塩漬けの葉はこのオオシマザクラの葉が使われています。オオシマザクラは多くの園芸品種を生み出しており、ソメイヨシノやカワヅザクラの片親としても有名です。

カワヅザクラ(河津桜)

開花時期:3月上旬〜中旬(伊豆半島)
落葉高木

花は直径約3cmのピンク色、または淡い紅色。花序は散房状で4〜5花からなり、樹皮は紫褐色で光沢があります。原木が野生で発見され、カンヒザクラとオオシマザクラの自然交雑種と見られています。のちに静岡県河津町に移植されたことから「カワヅザクラ」と名付けられました。早咲きとして有名で、桜の季節になると、静岡県河津町に毎年多くの観光客が訪れます。花期は1カ月と、他の桜と比べて長いという特徴があります。

シダレザクラ(枝垂れ桜)

開花時期:3月下旬~4月上旬
落葉高木

シダレザクラは、柳のように細く垂れ下がるように咲く姿でよく知られる品種です。園芸種であり、全国の公園や寺社で観賞用として植えられています。京都の東寺や平安神宮、東京の六義園、仙台の榴岡公園なども枝垂れ桜の名所として有名です。また、シダレザクラは寿命が大変長く、前出のエドヒガンザクラでも紹介した国指定の天然記念物である福島の「三春滝桜」はエドヒガン系ベニシダレザクラで、樹齢が約1000年だと推定されています。

花の色は淡い紅色または白色・2cm~3cmの花が、垂れ下がった枝に沿って2輪~4輪ずつまとまって咲きます。5枚の花弁を持つ一重咲きが基本ですが、品種によっては八重咲の花もあります。花色や花形の個体差が大きいため、個々の違いが楽しめるでしょう。

ジュウガツザクラ(十月桜)

開花時期:9月下旬~4月上旬
小高木

ジュウガツザクラは、秋から冬に開花時期を迎える珍しい桜です。開花時期の中でも旧暦の10月(現在の11月)に咲く様子が特に目立つことから、ジュウガツザクラ(十月桜)と名付けられました。

ジュウガツザクラの花は基本的に白色ですが、薄ピンクや濃ピンクも見られます。蕾はピンクがかっているため、開花時期のはじめ頃は全体がピンクに見えることもあるでしょう。また、花弁は5枚~20枚で八重咲きのものが一般的です。1.5cm~3cmほどの花が3輪~5輪程度まとまって咲きます。

葉は先端が尖った楕円形で、縁にはノコギリの歯のような細かな凹凸があります。枝葉に産毛のような細かな毛があるのも特徴です。

カスミザクラ(霞桜)

開花時期:4~5月
落葉高木

カスミザクラは北海道~九州北部の寒冷地に分布している野生の桜です。山間に咲く姿が、山にかかる霞とよく似ていることから、カスミザクラ(霞桜)と名付けられました。ヤマザクラとよく似ているとされていますが、ヤマザクラよりもやや遅い時期に見頃を迎えます。

花色は白色あるいはごく淡いピンク色。5枚の花弁を持つ一重咲きで、2cm~3cmほどの花が2輪~3輪ずつまとまって咲きます。葉は8cm~12cmの楕円形をしており、縁にはギザギザがあります。ヤマザクラと同じく、開花時期と新葉がつく時期が同じなのも特徴です。

ギョイコウ(御衣黄)

開花時期:4月下旬~5月上旬
落葉広葉中高木

ギョイコウはオオシマザクラが原種の園芸品種です。一説によると、江戸時代に京都の仁和寺で生まれた桜で、花弁の色が貴族の衣装と似ていることからギョイコウ(御衣黄)と名付けられました。開花時期は桜のなかで最も遅い品種の一つで、ギョイコウの花が終わると初夏がはじまる目安だとされています。

ギョイコウの花は4cm~5cmほどで、約12枚~14枚の花弁が重なって花開く八重咲きです。咲き始めは黄緑色ですが、数日かけて黄色に変わり、やがて花弁に筋状のピンク色が広がります。また、葉は先端が尾のように細く尖った楕円形で、ほかの品種と同様に葉の縁にギザギザの凹凸が見られます。秋には葉が赤く色づき、紅葉が楽しめるのも特徴です。

ヨウコウ(陽光)

開花時期:3月下旬~4月上旬
落葉高木

ヨウコウは、アマギヨシノとカンヒザクラの交配種です。作者は愛媛県在住の教員・農業家の高岡正明氏。第二次世界大戦中に出征した教え子たちが、極寒のシベリアや暑さが厳しいジャワで亡くなったことを受け、慰霊をテーマに25年もの歳月をかけて開発されました。

ヨウコウは「どんな環境でも花を咲かせられるように」という思いを込めて開発されたことから、耐暑性・耐寒性に優れているのが特徴です。1981年に品種登録され、鎮魂・平和の志のもと世界各地に無償で提供されています。ヨウコウの花は濃いピンク色。花弁が5枚の一重咲きで、4cm~5cmの花が数輪ずつまとまって咲きます。

チョウジザクラ(丁子桜)

開花時期:3月下旬~4月上旬
落葉低木~小高木

チョウジザクラは本州の北中部や九州の一部地域に自生する桜です。花の形が丁子(スパイスのクローブ)に似ていることからチョウジザクラ(丁子桜)と呼ばれています。チョウジザクラの花色は薄いピンクまたは白色で、5枚の花弁で構成されています。ガクから筒状の基部が伸び、その先が花ひらくユニークな花形です。

基部の部分は黄緑色から濃いピンク色のグラデーションで、触ると粘りがあります。花は2cm弱と小さく、花数も少なめなので、遠目から見てもあまり目立ちません。近くで鑑賞したほうが、特有の姿を楽しめるでしょう。

日本の歴史と深い関わりのある桜の種類

Shawn.ccf /Shutterstock.com

古代の桜は御神木として大事にされ、開花はその年の作柄を教えてくれるものとして、人々は豊作を占うために花見をしてきました。昔から行われている花見は山に咲くヤマザクラを見るのが主流で、後に宮人や貴族の「花の宴」へと移り、8代将軍・徳川吉宗によって現在のお花見の風習が確立しました。

ソメイヨシノは日本の桜の約80%を占めるといわれていますが、世間に登場したのは意外と遅く、明治に入ってからです。その頃は、まだ交通が不便な時代だったため「東京にいながら吉野山の桜が見られる」という宣伝文句と、また葉より花が先に咲き乱れるという特性が評判を呼び、関東を中心に、アッという間に人気が広がったといわれています。その後、全国に広がるソメイヨシノとは逆に、文明開化の名のもと、昔からあったサクラは封建時代のシンボルとして伐採されてしまいました。この時に、日本の名花の大半は絶滅したといわれています。さらに昭和初期になると、ソメイヨシノの特徴である「パっと咲いてパっと散る」姿が軍人の心意気を示すとされ、軍国主義の兵舎や小学校にどんどん植えられていきました。第二次世界大戦時には、食糧増産のためソメイヨシノも伐採されてしまいますが、戦後復興のシンボルとして再び植樹され、今では、お花見も盛んに行われるようになりました。

桜の種類別の花言葉

Sanga Park/shutterstock.com

桜にはさまざまな種類があり、品種ごとに花言葉が異なります。ここでは代表的な桜の品種を挙げ、それぞれの花言葉を紹介します。

・ヤエザクラ(八重桜)…「豊かな教養」「おしとやか」
・カワヅザクラ(河津桜)…「純潔」「初恋」
・カンヒザクラ(寒緋桜)…「あでやかな美人」

また、英語でも桜の花言葉がいくつかあります。

・「kind(親切)」
・「peace(平和)」
・「spiritual beauty(精神的な美しさ)」
・「transience of life(人生のはかなさ)」

いずれも桜の見た目や性質にぴったりの花言葉ですね。

いろいろな桜の種類を見つけて楽しもう!

桜は種類によって樹形から花の大きさや数、花色がさまざまに違います。庭に桜を植えたいと考えている方はぜひ、好みの種類を見つけて育てることをおすすめします。また全国の桜の名所では、直接花見に来られない人のために、ライブ配信や動画を使って美しい開花の様子を紹介したり、桜の写真集やボタニカルアート、桜を使ったお菓子やグッズの販売など、さまざまな楽しみ方を提案しています。みなさんもぜひ、自分流のスタイルでお花見を楽しんでみてください。

参考文献:
『桜ブック』/草土出版
日本さくらの会 https://www.sakuranokai.or.jp

Credit
文&写真(*以外) / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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