あの時別れてしまった恋人は、いまごろどうしているだろうかと考えたり、もう一度会って話がしたいと思ったりしたことはないだろうか。つらい別れを乗り越えて、新しい生活をスタートさせても、ほかの誰かと付き合っても、なぜか忘れることができない特別な存在。かつて大好きだった相手だからこそ、“復縁”はタイミング次第で誰にでも起こりうる。
【写真を見る】カナコと長津田は進学先の大学で運命的に出会う(『早乙女カナコの場合は』)
大学生時代に出会った1組の男女の付かず離れずのリアルな関係を描く『早乙女カナコの場合は』(3月14日公開)は、いつまでも心のなかにどっしりと居座り続けるやっかいで愛おしい元恋人の存在に思い悩む主人公に共感必至のラブストーリー。そこで本稿では、“復縁”をテーマにした作品たちと共に、「Pontaパス」会員だと1,100円で観られる“au推しトク映画”になっている本作の見どころを紹介していきたい。
どんな障壁があっても復縁の希望を持ち続ける『きみに読む物語』
アメリカのベストセラー作家、ニコラス・スパークスの長編処女作を、ニック・カサヴェテス監督がライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムス主演で映画化した『きみに読む物語』(04)。1940年代のアメリカ南部を舞台にした若い男女の物語と、とある療養施設に暮らす初老の女性と定期的に彼女を見舞う初老の男性との物語が並行して描かれていく。
情熱的に愛し合っていた主人公のノア(ゴズリング)とアリー(マクアダムス)が別れた理由は“階級の壁”。金持ち階級の娘である17歳のアリーは、製材所で働く労働者のノアを恋人として親に認めてもらえず、関係を引き裂かれてしまう。月日は流れ、戦争を経て、裕福な婚約者との結婚式を控えたアリー。だが、ふと目にした新聞記事をきっかけに、胸の奥深くにしまっていたノアへの想いをよみがえらせたアリーは、彼に会いに行くことを決める。若き日のノアとアリーの復縁のほかに、もう1つの予期せぬ別れと復縁が仕掛けられているのが本作のポイントだ。
“魂の伴侶”を取り戻すまでの健気な奮闘『ラブ・アゲイン』
復縁を願うのは若い恋人同士だけじゃない。『ラブ・アゲイン』(11)は、共に40代半ば、結婚生活25年になる中年夫婦、キャルとエミリーの別居から復縁までの1年を描くロマンティック・コメディだ。夫キャル役には本作の製作も務めたスティーブ・カレル、妻エミリー役はジュリアン・ムーア。ほかにもゴズリング、エマ・ストーンが出演する。
妻一筋で生きてきたキャルは、ある日突然、エミリーから浮気を告白され、別居するはめになる。妻の心を取り戻そうと、キャルはプレイボーイのジェイコブ(ゴズリング)から、いい男になるための指南を受けるのだが…。エミリーが浮気をしたのは、キャルが嫌いになったからではなく、いわゆる“中年の危機”によるもの。別居中、キャルの声が恋しくなったエミリーが給湯器の使い方を教えてほしいという口実で電話をかけ、それが嘘だと知りながらもキャルが優しく応対し、「電話くれてうれしかった」と伝える一連のやりとりは本作屈指の名シーン。
戻るかわからない相手を待ち続ける心の強さ『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』
コミカライズもされた有川浩による人気小説「植物図鑑」を、岩田剛典と高畑充希のW主演で映画化した『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(16)。本作の主人公は、ある晩、アパートの前で行き倒れていた青年、樹(岩田)を放っておけず、部屋に連れ帰った会社員のさやか(高畑)。彼の手料理に癒された彼女は、半年間という期限付きで樹との同居生活を始めることにする。
まっすぐで純粋なさやかと、植物オタクでミステリアスな樹。一緒の時間を過ごすうちに、いつしか互いに恋心を抱くようになった2人は、同居人から恋人同士の関係へ。しかし、当初の約束だった半年を迎えた頃、樹はいきなり姿を消してしまう。甘く幸せな日々から一転、深い喪失感に襲われるさやかが、それでも樹との思い出や彼が残したレシピと共に、一人で新しい季節を過ごしていく姿が泣ける。彼らが再会するのは、突然の別れから1年後。待ち続ける側のつらさを描きつつ、その時間をどう過ごすかが大切なのだと改めて実感させてくれる。
運命の赤い糸の存在を信じたくなる愛のドラマ『糸』
瀬々敬久が監督を務め、菅田将暉と小松菜奈のW主演で制作された『糸』(20)は、中島みゆきの同名の楽曲から着想を得たオリジナルの物語。2人を取り巻くキャストには、榮倉奈々、斎藤工、成田凌、二階堂ふみ、山本美月、高杉真宙らが集結し、北海道、東京、沖縄、シンガポールを舞台にした18年にわたる壮大なラブストーリーを織り成していく。
平成元年生まれの漣(菅田)と葵(小松)は、13歳の時に地元である北海道の花火大会で出会い、惹かれ合うも、葵の家庭の事情によって、遠く引き離されてしまう。8年後、2人は友人の結婚式で再会するが、すでにそれぞれ別の人生を歩み始めていることを知る。そこからさらに10年、失恋、結婚、挑戦、裏切り、挫折、誕生、死別…人生の様々な喜びと悲しみを経験してきた漣と葵が、平成最後の日のカウントダウンイベントで運命の再会を果たすクライマックスは感無量。すべての出来事には意味があったのだと思わせる2人の成長がまぶしい。
相手のダメなところを知っていても見放せない『早乙女カナコの場合は』
柚木麻子の小説「早稲女、女、男」を、女性作家の物語を独自の世界観で映像化する手腕に長けた矢崎仁司監督が映画化した『早乙女カナコの場合は』。本好きで、編集者になる夢を持つ大学生のカナコと、演劇サークルの先輩で脚本家を志す長津田を中心に、長津田に片想いするサークルの後輩、麻衣子、カナコに片想いする編集者の吉沢、吉沢の同僚で元カノの亜依子といった面々が、カッコ悪くてかわいらしい、等身大の恋愛模様を繰り広げる。
カナコ役は、もともと柚木作品のファンだという橋本愛。カナコの恋人となる長津田役は中川大志。また、麻衣子役の山田杏奈、吉沢役の中村蒼、亜依子役の臼田あさ美といった演技力に定評のあるキャスト陣が、それぞれ性格はまったく違うけれど、好感度が高く、応援せずにはいられない不器用でピュアなキャラクターたちを親近感たっぷりに演じている。
カナコと長津田の運命の出会いは、カナコが大学に入学した春のサークル勧誘。ジャン・ユスターシュ監督の映画が好きという共通項を持つ2人は、すぐに付き合い始め、3年の月日が経つ。インターン先の大手出版社から内定をもらった、しっかり者で生真面目なカナコに対し、留年を繰り返し、卒業も就職もする気がなく、脚本家志望のくせに1本も書き上げられないダメダメな長津田。対照的に見える2人だが、もともと人は自分にないなにかを持っている人に惹かれてしまうもの。カナコと長津田の場合、ケンカをしても、別の人からアプローチされても、結局、心のなかで一番大きな場所を占めているのはお互いの存在なのである。
合わないなぁと思いつつ、嫌いになれず、付かず離れずの関係を続けてしまう。ラブストーリーとしては、ドラマチック性に少々欠けるものの、現実の世の中では、こういうパターンは結構多いのではないだろうか。このなんともいえない絶妙なリアリティが本作の大きな魅力だ。それゆえに、カナコが卒業して社会人になって以来、もはや会うこともなくなってしまった2人の久しぶりの再会には、かなりドキドキさせられる。全編を通して重要なモチーフとなっている、カナコが買ったペアリングの行方にもぜひ注目してほしい。
また、本作のもう1つの見どころは、3人の女性たち、カナコ、麻衣子、亜依子の関係性。カナコと麻衣子、カナコと亜依子、それぞれの関係は、傍から見れば、完全に恋のライバル同士なのだけれど、カナコのさっぱりした性格もあって、彼女たちは恋敵になるどころか、温かい友情を育んでいく。相手の想いを尊重するカナコの自然体のスタンスが、麻衣子や亜依子の考え方を変えていくという展開がさわやかで、見ていてとても心地よい。
お互いの性格や別れ方によって、復縁のパターンは実に様々。それでも、別れたあとは自分の気持ちにしっかり向き合うこと、変なプライドを捨てて、自分の気持ちを相手に素直に伝えることなど、共通するポイントはいくつかある。忘れられない人と、もう一度会いたい、できればヨリを戻したいと思った時、復縁をテーマにした作品たちを観れば、今度こそ、相手といい関係を築くための大事なヒントがもらえるかもしれない。
なお、『早乙女カナコの場合は』は“au推しトク映画”にラインナップされており、「Pontaパス」会員特典として、全国の対象映画館でおトクに楽しむことができる。対象劇場である全国のTOHOシネマズ、ローソン・ユナイテッドシネマグループ、コロナシネマワールド、OSシネマズなどで、土日平日いつでも1100円で鑑賞可能。Pontaパス会員、同伴者1名まで特典が利用できるので、クーポンサイトを確認のうえ、映画館で楽しんでほしい。
文/石塚圭子