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MLB通キャスター・山本萩子、大谷翔平の活躍に期待も注目は二遊間<MLB開幕シリーズ2025>

  • 2025.3.13
メジャーリーグ通キャスター・山本萩子にMLB東京シリーズの見どころを直撃! 撮影=阿部岳人

【写真】びっしりと情報が書き込まれたノートやデータがまとめられた自作の資料

3月18日(火)、19日(水)に東京ドームで行われるロサンゼルス・ドジャース対シカゴ・カブス戦で、2025年のMLBが開幕する。ドジャースには大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希、一方カブスには鈴木誠也、今永昇太と日本人選手が所属するチーム同士の戦いとあって、日本中ですでに興奮が高まっている。

そんな特別な一戦の見どころを、「ワースポ×MLB」(NHK BS)で約5年間キャスターを務め、MLBのみならず「野球に詳しすぎる」と話題にもなったフリーアナウンサーの山本萩子さんが解説。各チームの魅力やテレビ中継で見るポイントなど、さまざまな目線から今シリーズの楽しみ方を存分に語ってもらった。

「日本人選手が共に戦う姿をかみしめながら見てほしい」

――過去にもMLBの開幕戦が日本で行われたことはありますが、今回は特にどんな点が特別だと思われますか?

前回の日本での開幕戦は、2019年3月に行われたシアトル・マリナーズ対オークランド・アスレチックス戦でした。イチローさんの引退試合として国内外で大きな話題となった試合で、私はちょうどその年が「ワースポMLB」(NHK BS)のキャスター1年目の年だったんです。

当時からメジャーリーグは確固たる地位も人気もありましたが、現在の日本国内の人気と注目度の高さは、その頃と比べても何倍にも膨れ上がっています。それはやはり大谷翔平選手という新たなスターが現れたから。そして大きく違うなと感じることは、大谷選手の周りの選手の認知度もどんどん上がっているんですよね。ドジャースのチームメイトはもちろん、対戦するカブスの選手だったり。そうして選手のことやチームの情報を、ある程度事前に認識した状態で見られるので、より試合に入り込んで見ることができるんじゃないでしょうか。

――対戦する両チームに日本選手がいるのも初めてですよね。

そうですね。メジャーリーグの開幕戦というすごい舞台で、日本人選手同士が対戦したり、共に戦っている特別感を私もかみしめながら見たいですし、ご覧になる皆さんにもぜひ一挙手一投足に注目してほしいと思います。

――では、今回来日するドジャースとカブスはどんなチームなのか教えてください。

両球団ともナショナルリーグに所属するチームですが、どちらも長い歴史と人気があるチームで、「メジャーリーグのチームといえば?」という話題ではトップ5の中に入ってくるであろう人気球団です。ただ長い歴史を持つ球団だからこそいいときも悪いときもあって。現在のドジャースはスター軍団を擁し黄金期真っただ中、一方のカブスはどんどん期待の若手選手が出てくる勢いのあるチームという位置付けで、チーム状況としてはある意味対照的という印象です。

――カブスはどんな魅力や強さのあるチームだと思いますか?

とても守備力の高いチームですね。セカンドにはニコ・ホーナー選手(今回の開幕シリーズは欠場)がいて、二遊間を組むショートにはダンズビー・スワンソン選手。どちらもゴールドグラブ賞を受賞した実力者です。それに加えて外野手は、今季ヒューストン・アストロズから移籍したカイル・タッカー選手がライト、レフトを守るイアン・ハップ選手と、こちらもゴールドグラブ賞受賞者です。そして中でも注目していただきたいのが、おそらくセンターを守るであろうピート・クロウ=アームストロング選手です。

彼は名前の頭文字をとって「PCA」と呼ばれているのですが、驚異の俊足を生かした広大な守備範囲と強肩を持っていて、守備と走塁だけならMLBトップクラスだと言われているくらい。皆さんがテレビ中継で見慣れている東京ドームの同じ景色の中で、どんなプレーを見せてくれるのか。その強肩ぶりやスピード感は見ていて分かりやすいと思うので、そういったところにすごさや違いを感じることができるのも見どころの一つだと思います。そんな守備をバックに、開幕戦のマウンドを任されるであろう今永投手がどんな投球を見せるのかもすごく楽しみです。

――続いて、ドジャース。2024年は見事ワールドチャンピオンに輝きましたが、2025年はさらに補強を重ねていますね。

現地アメリカのあるデータサイトでは、ナショナルリーグのチームの勝利数が予想されているのですが、カブスが90勝を超えるとされて3位、続く2位がアトランタ・ブレーブス。そして1位がもちろんドジャースなんです。どこを切り取っても盤石で、しっかり大型補強もしてちょっとチート級と思ってしまうほど(笑)。

注目しているのは二遊間。私は守備、特に内野守備が好きなので。今季は韓国からキム・ヘソン選手が新加入しましたが、先日ノックの映像を見たら守備がすごくうまい。おそらくムーキー・ベッツ選手がショートに入って、セカンドにはトミー・エドマン選手かキム選手が入ると思います。ベッツ選手は、本人の話を聞いているとショート守ることの特別感をすごく感じていて、モチベーションも高くシーズンに臨んでいる。身体能力を活かした高い守備力を誇るはずなので、二遊間の守備を見るのはすごく楽しみです。

ちなみに、開幕戦では登板しないと思いますが、ドジャースの先発投手で今季怪我から復帰するダスティン・メイという投手がいて、彼は160km/hを超えるシンカーで内野ゴロを量産するんです。だからぜひ内野ゴロでたくさん打ち取ってほしいですね。大好きな内野守備をたくさん見られるので(笑)。

――メジャーリーグの二遊間の守備は見ていても違いを感じますか?

そうですね。内野ゴロでボールを取ってから投げる動作にも、プロ野球ではあまり見かけないメジャーリーグならではのプレーがありますし、今回は同じ東京ドームの中継で見るからこそ「あれ、いつもと違うかも」というのに気が付きやすいかもしれません。

「いいところを見せてやろうとマン振りする姿に期待」

山本萩子 撮影=阿部岳人

――そして、やはり大谷翔平選手の活躍に期待が高まりますが、DH(指名打者)での出場が有力です。ズバリホームランは見られそうですか?

元々大谷選手は開幕ダッシュというよりは5月、6月に絶好調を迎える傾向はあります。それでも年間50本以上打つ選手ですから、1本くらいは打ってくれるって思いますよね(笑)。バッティング練習の飛距離やスイングスピードも他の選手とは違いますし、打球が全然落ちてこない。あれを見てしまうと、出ないわけがないと思わざるを得ません。

それにドジャースファンの熱量の高い声援の中だったからこその、昨年(2024年)の活躍もあったと思うんです。今回は日本に凱旋して、日本のファンからの後押しに対して「いいところを見せてやろう」とちょっと思っていてほしい気がするんです。そんな人間味のあるところも見たいと思うので、マン振り(フルスイングよりも力強いスイング)する姿にも期待したいです。

――大谷選手の打席では、どんなところに着目して見たらよいでしょうか?

大谷選手は調子や状況によって打席でのアプロ―チを変えたりするんです。もちろん多くの選手がそうだとは思うのですが、例えば追い込まれてからはコンタクト重視に切り替えたり、バットの持ち方を変えたりとか。大谷選手の持つパワーやスピードに目が行きがちですが、そうした対応力もすごさの一つ。中継ではスイングするところは絶対映っていると思うので、そんなポイントを見ても楽しめると思います。それから早いカウントから積極的にスイングしていくので、初球から目を離さず、瞬き禁止!ですかね(笑)。

――今シーズンは二刀流復活のシーズンとなるわけですが、どんな活躍に期待していますか?

昨年(2024年)はものすごい打撃成績を残して、まさに“世界一に貢献しまくった”と思うんですが、やはりピッチャーとして、二刀流でチームを世界一に導きたいという思いが本人にもあるのではないかと。ファンとしても、チームとしても、世界一を決める最後のマウンドに立つ大谷選手の姿というのを期待していると思います。

北海道日本ハムファイターズのコーチ時代に大谷選手を指導されていて、私もお仕事でご一緒していた黒木知宏さんから聞いた話ですが、ピッチャーの大谷選手はバッターのときとちょっと違うんだそうです。あまり表には出さないけど、真の負けず嫌いというか「打たれてたまるか」と戦う姿勢や闘争心が、ピッチャーのときはまた一段上がるとおっしゃっていて。そうした燃えるものを秘めた大谷選手が、マウンド上で吠えたり感情を爆発させるようなシーンがまた見られるのも楽しみですよね。

――今回はプレシーズンゲームも合わせると6試合が行われます。読売ジャイアンツや阪神タイガースの選手とメジャーの選手たちの対戦や交流も楽しみです。

プロ野球の選手にインタビューをしているとメジャーリーグを好きな選手がすごく増えた感覚があって。「メジャーリーグのことを教えて」ってなぜか私が言われるくらい(笑)。そんな選手たちがこの機会にメジャーリーガーからいろんなところを吸収しようとしていると思うんです。思わぬ交流やツーショットが見られるかもしれませんね。

それに私はプロ野球ファンでもありますが、それぞれのチームに世界に通用する逸材がいるわけです。そういった選手たちがメジャーリーガーをどう攻略するのか、みたいな目線で見るのも楽しいかもしれません。何ならメジャーのチームも新しいスターがいないかとチェックしているところもあるかもしれない。そういう意味でプレシーズンゲームも楽しみですね。

「メジャーリーグは最高のエンターテインメント」

山本萩子 撮影=阿部岳人

――山本さん流のテレビ中継での野球の楽しみ方について教えてください。

私は昔から中継で野球を見るのが当たり前の環境で育ってきました。ご飯を食べるときは必ず野球中継でしたし、今も実家に帰れば両親と野球の話ばかりしています。土日に帰ったときはデーゲームがあるので、プレイボール時間に合わせて(お酒を)飲み始めるっていうルールがあって(笑)。その時間に向けてごはんやおつまみを作ったり、片付けをしたりして、野球の試合開始に合わせて、我々も“試合開始”するんです(笑)。

――開幕シリーズの日は、プロ野球のオープン戦もありますね。

そうですよね! 一日中野球を見ることになるから、先にお風呂も入っておいた方がいいかも…もう寝るだけにして(笑)。それくらい野球の開始に合わせて何かをするっていうのが私の中では当たり前でした。

でも、試合をテレビ中継で見る良さがちゃんとあると思っていて。球場に行けば生のプレーを見られる面白さがありますが、中継だからこそプロのOBの方々の丁寧な解説でより理解が深められますし、詳しい選手紹介もあるから「この選手はこんな人なんだ」と知ることができます。カメラもたくさん設置されているので、プレー中の選手の表情やベンチでの様子が、中継の方が圧倒的に分かりやすい。

私も現地観戦した後、家に帰ってテレビで中継を見直すのですが「あのとき、こんな表情をしていたんだ」と改めて知ることができます。選手たちが目の前のプレーに対して、どんな反応、表情を見せるのかというのは、テレビ中継ならではの楽しみ方だと思います。

――最近ではデータの数字も分かりやすく出るようになりましたね。

私はメジャーリーグを通して、よりデータの面白さや重要性を感じるようになりました。それがあるだけで全然違う野球の見方ができる。なぜ今ここに投げたのか、なぜここでスイングしたのか、といった部分もデータから吸収して考えながら見られると思うので、それもまた見どころですね。

――野茂英雄さんがアメリカに渡ってから30年の年。今ではMLBをより身近に感じられるようになりました。そんなMLBの魅力をどのように感じていますか?

本当にスーパースターたちの集まりで、とてつもないパワーとスピードと高い技術に圧倒される、そうした分かりやすい部分は野球を見る人も見ない人も分かると思うんです。どこを切り取っても分かりやすく「スゴい!」と素直に思えるところが、メジャーリーグが面白いポイントの1つです。

同時にメジャーリーグの球場は「ボールパーク」と呼ばれますが、訪れる人、見る人皆さんを楽しませるというのが大前提にあって、たくさんの楽しませる要素を用意しているんですよね。昨年、オールスターゲームに取材に行かせていただいたのですが、一つ一つの出し物や演出がすごく豪華だし、「思う存分楽しんでください!」みたいな感じなんです。大谷選手がSHO-TIMEと言われますけど、まさに一つのショーなんですよね。

試合のルール変更にしても、「ダメだったら戻せばいいじゃん」みたいな精神でトライ&エラーをすごくするんです。新しい取り組みをやめないから飽きないんですよね。他にも試合で守っている選手にマイクを付けて実況席と会話したり…そうした変化を恐れない姿勢や、ちょっとした遊び心があるのもまたメジャーリーグの面白さです。

本当に最高のエンターテインメントだと思うし、そして最高のエンターテインメントであるためにさまざまなことをするから、メジャーリーグって素敵なんですよね。一番の魅力はそこにあるんじゃないかと、私は思っています。

※取材は2月中旬に実施。情報は3月11日時点。

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