【写真】肩を抱き合う古川慎&山下大輝の“同期コンビ”ショット(ほか、11枚)
幕末の動乱期、“人斬り抜刀斎”として恐れられた緋村剣心が、「不殺」の流浪人となって平和な時代を生きようとする姿を描いた『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』。1994年から「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載され、コミックスの累計発行部数は7200万部を超える本作は、これまでもTVアニメ化や実写映画化など、時代を超えて愛され続けてきた大ヒット作。そんな不朽の名作が、2023年に新アニメとなって復活し、現在第二期『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱』がクライマックスを迎えている。そこで今回は、第二期のボス敵である志々雄真実役を演じる古川慎と、その忠実な側近である瀬田宗次郎役を演じる山下大輝の二人に、作品やキャラクターの魅力や収録の思い出を語ってもらった。
戦わずに見せる志々雄の“ボス感”、繊細なチューニングが肝の宗次郎
――第二期の放送も佳境ですが、本作にご出演されて、改めてどんなことを感じていますか?
山下大輝(以下、山下) 本作はわりとオリジナルシーンも多いのですが、それは原作者の和月伸宏先生が本来もっと丁寧に描きたかったところだったそうで、いわば原作補完になっているんですよね。原作ではサラリと描かれていた展開や、キャラクターのより深い心情など、そういった新たな一面が味わえるのが個人的にはすごくハッピーだなと思って見ています。僕が演じる宗次郎も、きっと今後は新たな一面が見えてくると思うので、早く剣心たちと戦いたいなとワクワクしています。
古川慎(以下、古川) 言っても宗次郎はちょこちょことは戦っていますよね。志々雄なんて、今のところ温泉入って、ちょっと試し斬りしただけですから(笑)。
山下 志々雄は自分が戦うというよりも、みんなのことを鼓舞するようなシーンが多いですよね。
古川 そこは原作通りなんですよね。志々雄って、じつはそんなに自分からガンガン戦うキャラではなくて。なにしろ、宗次郎を筆頭とした「十本刀」という超クセつよ集団がいるので、どうしても志々雄の見せ場って限られてくるんですよ。なのでむしろ、戦わずしていかに「底知れなさ」だったり「ラスボス感」のようなものを出せるかが志々雄を演じるうえでは大切なのかなと思っています。それを考えると、1996年版のアニメや実写映画で志々雄を演じていらっしゃるキャストさんの力量のすごさを改めて感じますし、参考にさせていただきつつ、自分なりに芝居に取り込んでいます。
――志々雄と宗次郎のコンビというのは、少年漫画史上に残る人気の敵キャラでもありますから、プレッシャーも相当あったと思います。
古川 それはもう、ヤバいくらい感じてますよ。
山下 半端ないっす。でも同時に、昔から自分が大好きだった作品に参加できることはめっちゃ光栄ですし、シンプルに嬉しいという気持ちがいちばん大きいですね。志々雄と同様に、宗次郎についてもこれまで演じられたキャストさんの印象が強く心に焼き付いていると思うので、それをどう受け止めて、自分らしいお芝居として届けられるのかというのは悩みどころですけど、楽しくもあるんです。
古川 宗次郎は感情が欠落しているキャラなので、とくに難しいですよね。
山下 正直、めっちゃ難しいです。宗次郎には喜怒哀楽のうち「楽」の感情しかないのですが、「楽」と一口に言ってもいろいろとあると思うんです。空虚さなのか無邪気さなのか、そのさじ加減は毎回課題ですし、周囲に感情的なキャラクターが多いぶん宗次郎の浮きっぷりが目立つので、いつも気持ち悪さとの戦いでもありますね。
――ふつうの掛け合いしている感じではないんですね。
山下 そうです。宗次郎の喋りには、相手との距離感という概念がないんですよ。だからこそ違和感を感じるし、演じていて難しいんですよね。そこはディレクションも受けながら、自分の中のチューニングのつまみを数ミリ単位でカチカチと変えながらベストなところを探している感覚があります。
――では、チューニングがバチっとハマった瞬間はかなり達成感を感じたりもされますか?
山下 それはもう、めっちゃ気持ちいいです。「あ、これはいったんじゃない?」って(笑)。
――古川さんは志々雄を演じるうえで意識されていることはどんなところですか?
古川 先ほども少し話したように、戦わないなかでいかに「強さ」を感じさせるかというのは大前提として意識しています。シンプルに低音で喋るとかドスを聞かせるとか、そういう分かりやすいアプローチもあるにはありますけど、それよりももっと深いところで「こいつはヤバい」と思ってもらえる話し方って何だろうっていうのはすごく考えています。例えば『煉獄』での戦いでも、こちらの戦局が不利になった際、どういう声の出し方が正解なんだろうとか、やっぱりその事態にならないと分からないことも多いので、ストーリーが進むごとに志々雄に対する理解を深めていっている気がします。正直まだ未熟なところもあると思っているんですけど、とにかく「底を見せない」ようにいろいろな手を使って演じていますね。
――志々雄はただ強いだけではなくて、言動からスマートさやセクシーさを感じるのが魅力的ですよね。
古川 ありがとうございます。セクシーさに関しては斉藤壮馬さんの影響が強いと思います。彼が演じる剣心がすごく「等身大」なので、それならば、ある意味で対となる志々雄も「等身大の悪党」として演じたほうが良いだろうと思っていて、そこはちょっと遊ばせてもらっている部分がありますね。
「同期の前でかっこ悪いことはできない」という緊張感がプラスに
――アクションシーンも見どころです。ここまででとくに印象深いバトルはありますか?
山下 個人的には蒼紫と翁(柏崎念至)との戦いです。もともとは仲間だし、なんで戦わないといけないのか、もどかしかったですね。戦いながらも、ふたりとも最後まで素直になれない感じもあって、なんか他にやりようはなかったのかなって思いながら観ていました。
古川 僕は『煉獄』での剣心と蒼紫の戦いですね。じつはまだ完成映像は観れていないんですけど、絵コンテの段階でこれはすごい戦いになるぞと思っていて。
山下 たしかにあそこはテンション上がりましたね。船上での戦いっていうのがまた良いですよね。
古川 原作とは異なる展開がされているので、オリジナルシーンも多くて、どんな映像になっているのかすごく気になっています。あとこれは「バトル」って言っていいのか分かりませんけど、第42話で方治が花束で殴り掛かるシーンも印象的ですね。
山下 最高でした! あそこもアニメオリジナルシーンですよね。
古川 そうそう。方治としてはめっちゃ真剣なんですけど、それだけにどこかクスッとしちゃって。方治は本当にいいキャラで、大好きなんですよね。
山下 たしかに、方治が出てくるとキャスト陣がみんな笑顔になるんです(笑)。演じられている伊藤健太郎さんの芝居の熱量もすごくて、いつも楽しませてもらっています。
古川 バトルシーンのクオリティっていう意味で言えば、張と剣心のバトルもすごかったですね。
山下 凄かった!
古川 とんでもなくヌルヌル動くし、張の武器の「薄刃乃太刀」が蛇みたいな動きをしていて、とても剣客同士の戦いには見えなくて(笑)。もちろん1996年版アニメのときも「凄いな」と驚きながら観ていましたけど、自分の参加作品でこんなバトル描写を見せられたら、それはもう興奮しちゃいますよね。まあ、僕(志々雄)が戦っているわけじゃないんですけど(笑)。
山下 僕らのバトルに関しては、今後に期待しましょう。
――おふたりは同世代で、声優としてもほぼ同期になると思います。これまで今回のようにガッツリと絡んだことはありますか?
古川 それこそデビューしてからすぐくらいのタイミングで、いちどガッツリと絡むことはありましたね。
山下 その作品では同じチームのメンバーみたいな感じだったので、どちらかというと相棒的な関係性でしたよね。
古川 なので、志々雄と宗次郎のような主従関係というのは初めてだし、直接ここまで掛け合うこと自体もかなり久しぶりでした。
――久しぶりにお互いの芝居を間近でご覧になって、感じたことなどはありますか?
古川 今回の宗次郎は男性キャストになるという話を聞いて、「誰がやるんだろう?」って興味津々だったんですけど、大輝君だと知ったときにはすごく納得できたんです。少年っぽい声質はもちろん、お芝居の厚みもあるし、今後描かれるであろう宗次郎の隠れた一面までを考えると、大輝君ほどの適任者はいないんじゃないかって思って、ストンと腑に落ちたんですよね。
山下 ありがとう! 僕も相手がマコちゃんと聞いて嬉しかったです。それこそ10年ぶりくらいにガッツリと共演しましたけど、それぞれが歩んできた道だったり、手に入れた技術や武器、培ってきたプライドなど、いろいろなものをお芝居を通じて感じることができて、今このタイミングで交わることができたことに感謝しかないです。とくに志々雄の演説や啖呵には「ああ、これはマコちゃんにしかできないアプローチだな」って感じるところがたくさんあって、なんだかエモい気持ちになりました。
――お互いに刺激を受け取っているんですね。
古川 ありますね。同期が隣で見ていると思うと、もちろん安心感や心強さも感じますけど、それ以上に「かっこ悪いところは見せられないな」という気持ちが生まれるんですよね。
山下 分かる! 同じ現場に立てている喜びもありつつ、同期だからこそ気持ちが引き締まる感覚はあって、僕もいつも刺激をもらっています。
――今後も、そんなおふたりの全力の芝居が待っていそうですね。
古川 収録はまだ先だと思いますが、今から緊張してきました(笑)。
山下 僕ら同期コンビで、剣心たちを返り討ちにしてやりますよ!(笑)。
――ありがとうございました!
■取材・文/岡本大介