オフィスウェアやストリートウェア、イブニングウェア......。2025年3月9日(現地時間)、パリのヴォーバン広場でデムナはバレンシアガのWINTER 25 コレクションを発表し、ファッションの常識に変革をもたらした。
バレンシアガ WINTER 25 コレクション。photography: Imaxtree
バレンシアガのショーでは誰もが最前列の特等席に座った。バレンシアガのアンバサダーであるイザベル・ユペールや、ジェシカ・アルバ、THE BOYZのジュヨン、キム・ソヒョンらと並んで、すべての観客が同じ立場でコレクションを目撃するのだ。しかし、会場では、誰もお互いの姿を確認することはできない。アンヴァリッド前に設置された白いボックスの中には、巨大な黒い迷路が広がり、自分のエリアから一歩でも踏み出せば、簡単に迷い込んでしまうような構造だ。
バレンシアガ WINTER 25 コレクション。photography: Imaxtree
ファッションの迷路へ。
これまでショーの最前列にあったヒエラルキーはここには存在せず、誰もが同じ視点でコレクションを目にすることができる。しかし暗闇の迷宮に張り巡らされた細い通路をモデルたちが歩きはじめても会場はほの暗さに包まれたままだった。最初に登場したのは、オフィスウェアのルック。同じスーツを異なる人物が着用しているが、その表情はまるで別物。
ネイビーのルックには皺が寄り、グレーのプリーツパンツは使い込まれた風合い。デムナは後にバックステージで、「父親の夢は僕がビジネスマンになることだった」と語った。グルジア出身の彼はアントワープ王立芸術アカデミーに進学する前、トビリシ国立大学で経済学の学位を取得している。
やがて、シンプルなシルエットのジャケットにロングスカートを合わせたルックが登場するがそれは、「スーツ」という概念そのものを揺さぶる、新たな解釈の始まりだった。
バレンシアガ WINTER 25 コレクション。photography: Imaxtree
初めのうちは黒が多く見られたが、デムナはショー終了後すぐに、現在の暗い時代を反映したものではないと説明した。「黒は私の好きな色です。それはクリストバル・バレンシアガが愛した色でもありました。一方、彼のオートクチュールの色合い、ピンクや赤、ロイヤルブルーなども取り入れました」。1967年に発表したバレンシアガのウェディングドレスのボリューム感を再現した、マキシサイズのフード付きスウェットシャツでロイヤルブルーは見事に表現され、とりわけ注目を集めていた。新たなエレガンスを感じさせる、スーパーロングコートやトレンチコートも登場した。
デムナ真骨頂、裏返しのスウェットシャツとコルセットシャツ。
第2幕として、ストリートウェアの再考、挑戦、そして転換が表現された。2015年にバレンシアガのアーティスティック・ディレクターに就任して以来、デムナが得意としたのはストリートウェアを再考しまったく新しい角度から提示すること。今回もその姿勢は健在だ。
裏返しに仕立てられたスウェットは、ジップで開けられたデコルテが特徴的。白シャツは背中でコルセットのように編み上げられ、ダウンジャケットはカーブを描くヒップラインに沿い、レザーブルゾンはヴィクトリアン風の立ち襟で気品を添える。女性たちは、標準的なアイテム(ポロシャツ、シャツ、またはスウェットジャケット)を結んで作られたミニスカートを身に着け、白または黒の細身のロングブーツと合わせている。さらに、非常に魅力的でセクシーなネイビーブルーのタートルネックのワンピースはベルトで引き締め、素足を大胆に見せるほど短くカットされており、注目を集めていた。
2つのコラボレーションに釘付け。
バレンシアガ WINTER 25 コレクション。photography: Imaxtree
2つのコラボレーションも注目を集めた。プーマとのコラボでは、90年代を彷彿とさせるナイロン製のジョギングパンツやテクニカルスウェットシャツが登場。さらに1999年に発売されたスニーカー「スピードキャット」をアップデートしたデザインで蘇らせた。もうひとつは、モータースポーツ向けの装備を手がけるイタリアのブランド、アルパインスターズとのコラボ。ピアスやスタッズ、ダメージ加工が施されたインパクト抜群のテクニカルグローブは、なんとタッチスクリーン対応という実用性も兼ね備えている。
ウルトラモダンシックで締めくくり。
バレンシアガ WINTER 25 コレクション。photography: Imaxtree
夜になると、バレンシアガ・ウィメンズでは、エラスタン素材、フューシャピンク、ブラック、ミッドナイトブルーのロングスイムドレスで、官能的なドレープとヒップまで届くスリットを施したウルトラモダンシックを披露した。そして最後の幕を飾るのは、クチュールからインスパイアされた壮麗なオペラコート。燃えるようなレッドのフェイクファーや、ブラックナイロンのドラマティックなシルエットが、ショーのフィナーレを華やかに演出した。ありふれた日常を、新たな現代美へと昇華させるーーーデムナは今回のコレクションで、ファッションを通じて私たちの世界をほんの少し超越しようと試みたのだろう。
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