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弁護士が解説! 「自己破産」のデメリットと家族・親族への影響

  • 2016.4.17
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【ママからのご相談】

ある日、夫の実家から電話があり「借金が返せないから自己破産することにした」とあっけらかんと言われてしまいました。

確かに、夫の実家には夫の父が作った大きな借金があります。

私たち夫婦も幼い子ども2人を抱えていて余裕がなく、 義実家に仕送りなどは一切していませんでした。

今回も義母は「あなたたちに迷惑はかけないから」と言っていますが、自己破産すると義実家や私たち家族にどういった影響があるのでしょうか?

●A. 自己破産する人の親族というだけで、法律上悪影響を受けることはありません。

ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美です。

夫の父が自己破産と聞いて大変驚かれたことでしょう。“自己破産”に対しては、一般的に受け入れにくい人が少なくない印象があります。

しかし、皆さんが思っているよりも意外とデメリットは少なく、人生を立て直すための有効な手段の一つ なんですよ。

●自己破産とはどういうことですか?

自己破産とは、借金の返済ができない状態であることを裁判所に認めてもらい、法律上借金の支払義務を免れる制度です。

自己破産をすると、免責といいますが、原則として借金の返済義務がなくなります (法律上、税金や養育費など一部免責されないものもあります)。

ただ、99万円を超える現金や時価20万円を超える高価な財産(東京地方裁判所の場合)は処分されてしまうので、たとえば持ち家は手放さなければいけません。

また、お舅さんが大きな借金を作った経緯はわかりませせんが、浪費等の免責不許可事由というものがあり、事情によっては免責が認められないこと もありますので、個別にご相談いただくとよいと思います。

●戸籍に載る、選挙権がなくなるなどの噂は本当ですか?

自己破産にはたくさんの噂がまことしやかにささやかれていますよね。でも、そもそも戸籍に載ったり、選挙権がなくなることはないんです。

家具・家財道具や電化製品もすべて差し押さえられてしまうと思っている方もいますが、必要最低限の家財道具は差押禁止とされ、高額でない限り原則としてそのまま使うことができます 。

破産手続中には海外旅行が制限されることがありますが、手続終了後は制限されることもないですし、破産する本人へのデメリットはみなさんが思っているより小さいのではないでしょうか。

高額な財産が処分されてしまうこと以外のデメリットとしては、次のようなものがあります。

まず、自己破産すると、信用情報機関に登録されるので(いわゆるブラックリスト)、当分のあいだ新しくクレジットカードを作ったり、ローンやキャッシングをしたりすることはできなくなります。

また、破産手続中も働くこと自体は制限されませんが、破産手続が終わるまで一定の職種に就くことが制限される資格制限があります。

いわゆる士業(弁護士・税理士等)、警備員、生命保険募集人、保険代理店、パチンコ店等の店長(風俗営業法の営業所管理者)、宅地建物取引主任者などが対象となっていて、場合によっては退職を余儀なくされるケース がありますので注意しましょう。

さらに、自己破産をすると、官報という国が発行している機関紙に名前と住所が載ります。

みなさんも官報を逐一チェックはしていないですよね。私も弁護士になるまでちゃんと見たことはありませんでした。

通常、金融機関等を除いて一般の人が官報をチェックをすることはまれなので、周りに自己破産をしたことを知られる可能性はあまり高くはないと考えられます。

●家族に影響はないのでしょうか?

では、ご家族に影響があるかというと、自己破産する人の家族、親族というだけで法律上悪影響を受けることはありません。

ただ、破産する人の債務の保証人になっていると、貸主から借金を払うよう請求されてしまうので、同時に自己破産する必要 があったり、逆に自分の借金のために保証人になってもらっていた人が破産をすると、別の保証人を立てるよう言われてしまったりする可能性 はありますね。

また、今回はお舅さんとは同居されていませんが、自己破産では高額な財産は処分されてしまいますので、破産する家族名義の持家に住んでいる場合、そのままでは住み続けることができず、引っ越ししなければいけないという事実上の影響はあります。

もし、今後もその家に住み続けたいときは買い取る必要がありますので、事前に家族で話し合っておくことが大切でしょう。

日々の生活を律し、安易に借金をすべきでないのはもちろんです。

でも、自己破産は人生の終わりではありません。金銭的にも心理的にも負担を軽くし、人生をリスタートする一つの方法です。

借金の整理には、自己破産以外にも任意整理や民事再生といった方法もあり、それぞれに最も適した手段を選ぶことが大切です。

借金でお困りのとき、まずは弁護士にご相談くださいね。

●ライター/正木裕美(アディーレ法律事務所:愛知県弁護士会所属)

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