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ラグジュアリーのその先へと向かうザ・ロウ。2026年リゾートコレクションで描く、真の自信に満ちた女性像

  • 2025.3.11

またしてもスマホ禁止令が出されたザ・ロウTHE ROW)のショー。特に今回、ゲストたちは先着順で席につき、遅れて来た人たちはカーペットの上に座らなければならなかったこともインターネット上で取り沙汰された。これだけの話題性があったのなら、コレクションはすでに至る所で見尽くされたと思うかもしれないが、そんなことはない。ブランドは慣例に倣って、その写真をショー開催から数日後にようやく公開した。

真の自信に満ちたノンシャランな女性像を描いて

写真に映っているのは、親密な雰囲気が漂うリミナルスペース。ストッキングを履いた足でアパートのなかを歩き回るモデルたちの髪は少し乱れている。服を着て、どこかに行こうとしているが、まだ準備が整っていないといった様子だ。あまりにも手がかりがないと、その物語の空白を埋めようと考えを巡らせてしまうものだが、ザ・ロウが描く女性は間違いなく、男性の気を引くような服装を意識していない。彼女は泰然自若としていて、どこか変わったところもある。そして自分自身の選択に自信があるため、流行にはまったく関心がない。それでも、ある種のファッショナブルな女性たちを代表する絶対的存在であることも確かだ。

彼女はただ肌寒い冬に備えているようだが、これはザ・ロウが得意とする、まるで偶然そう仕上がったかのようなノンシャランなレイヤードスタイルでもある。ベルト付きのショートトレンチと長めのロングトレンチ、シャツの上に着たチャコールグレーのカシミアニット、セーターの上に重ねたニットドレス、見るからに肌触りのよさそうなドニゴールツイードのスカートジャケット。厚手のカシミアタイツは何にでも合わせられ、あるルックではシャツとVネックのロングベストを重ねてスリーピーススーツのようにスタイリングされていた。いくつかのルックでは、タイツが肩に掛けられたりもしていた。

ベルトや肩、袖には時折、貝殻や銀の香水瓶、虫眼鏡といったアンティーク調の小さな思い出の品がパーソナルなジュエリーのように添えられていたのも印象的だった。

ザ・ロウに見る、アメリカの還元主義的なファッション

ザ・ロウは、90年代的なミニマリズムとはまた異なる、アメリカの還元主義的なファッションの長い歴史を体現するブランドだ。それは少なくともピューリタニズムにまで遡り、白いウィングチップカラーのシャツとセーターの上にタキシードコートを羽織った修道女のようなルックがまさにその好例に挙げられるだろう。そのほかにも、1980年代に活躍したデザイナーのビル・ブラスやカルバン・クラインがデザインしたアメリカン・スポーツウェアを彷彿とさせる、ラウンドショルダーのコートやブラウンレザーのロングトレンチがあった。

ザ・ロウが打ち出すのは、実用性を重視した言わば「取るに足らない」スタイルではあるが、それは極めてラグジュアリーなものだ。また、このブランドの成功は、ウィメンズのラグジュアリーファッションにおいて日常的なウェア──特に女性によってデザインされた、大人が自由に着こなせるウェアがまだ圧倒的に少ないという事実を裏付けていると言えるだろう。

とはいえ、ザ・ロウは万人向けとは言い難い。その証拠に、柔らかなカシミア使いが目立つなか、今シーズンはシェーブドミンクが復活を遂げていた。これは超富裕層の嗜好をオブラートに包んだもので、常にラグジュアリーのその先へと手を伸ばし続けるあるファッション層に向けたものであるに違いない。

※ザ・ロウ 2026年リゾートコレクションをすべて見る。

Text: Sarah Mower Adaptation: Motoko Fujita

From VOGUE.COM

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