フィギュアスケート選手を目指す少女・結束いのり(CV:春瀬なつみ)と、元アイスダンス選手のコーチ・明浦路司(CV:大塚剛央)がタッグを組み、フィギュアスケートの世界で頂点を目指す「メダリスト」(毎週土曜深夜1:30-2:00ほか、テレビ朝日系で放送/ディズニープラス「スター」にて単独最速配信開始、ABEMA・FOD・Hulu・Leminoほかで順次配信)。原作は「アフタヌーン」(講談社)で連載中の人気漫画で、「次にくるマンガ大賞2022」コミックス部門第1位をはじめ、第68回小学館漫画賞一般向け部門、第48回講談社漫画賞総合部門を受賞するなど、面白さは折り紙付き。3月1日に放送されたscore09は、「西日本小中学生大会」でのいのりの滑りと大会結果を描いた「西の強豪(後)」。(以下、ネタバレを含みます)
いのり、ノーミス完走で暫定1位へ!
1級のライバルたちが、それぞれの持ち味を活かした素晴らしい滑りを見せ、4人が23点台をマークするというハイレベルな戦いとなるなか、いよいよいのりの演技がスタートする。優勝するためには転倒やお手つきのないノーミスでのフィニッシュが絶対条件となるが、最初のシングルアクセルを完璧に決めると、そのまま勢いに乗ったいのりはいちばんの挑戦だった2回転ジャンプも連続で成功させる。続くステップシークエンスでは、疲労を感じつつも司ばりの表現力を見せ、最後は進化したブロークンレッグでフィニッシュ。実力のすべてを出し切ったいのりの得点は24.32で、この時点で暫定1位に躍り出る。ところが、司の元へと帰ろうとする際に転倒してしまったいのりは、そのまま救護室へと運ばれ、右足首の捻挫という診断が下されてしまう。
序盤の見どころは、もちろんパワーアップしたいのりの滑り。楽曲は前回と同じくホルストの「木星」で、今回はジャンプやスピンの難易度を上げた演技構成となっている。初級にはなかった新たなエレメンツ(要素)である「ステップシークエンス」も加わるなど、たった1級ランクアップしただけで一気にレベルアップした印象だ。とくにステップシークエンスのシーンでは、いのりと司の滑りが重なる演出になっていて、いかにいのりが司の表現力に憧れ、お手本にしているかが分かる。このシーンはSNSでも「やばい…先生冥利に尽きるやつ……」「こういう演出はアニメにしかできん!!」などの声があがっていた。また、今回のいのりの演技で注目すべきはほかにもある。それは、開始直前に偶然掴んだ滑りのコツを、この大切な本番で躊躇なく取り込んだところだ。ここぞという大一番で覚醒するのは主人公の特権だが、まさにいのりこそが主人公であることを強く感じさせてくれた一幕だった。
努力の結晶がヒシヒシと伝わる絵馬の演技シーン
1級最後の演技者は、いのりと同じタイミングで1級のバッジテストを受けた大和絵馬(CV:小岩井ことり)。度重なる怪我に悩まされ、思うような練習ができずに伸び悩んできた絵馬だが、いきなり高難度のダブルルッツを成功させると、これまでの鬱憤を晴らすかのような素晴らしい演技を見せていのりたちを驚かせる。結果、1級の選手のなかで唯一の25点台を叩き出して優勝を果たし、いのりは惜しくも第2位という結果に終わるのだった。
ここではもちろん絵馬のスケートシーンに注目。ここで流れる楽曲は「Spirits of the Night」というアニメオリジナル曲だが、長期間の伸び悩みによる鬱々とした気持ちや、それでも諦めない内に秘めた情熱が感じられる、まさに絵馬のキャラクター性にピッタリの内容。ピアノとバイオリンのデュオというシンプルな楽器編成も特徴的で、滑りのインパクトをよりくっきりと際立たせているように感じる。いずれにしろ、高難度のジャンプはもちろん、ステップシークエンスでの表現力から最後のスピンに到るまで、あらゆる面でいのりを凌駕していることは一目瞭然で、その意味でも、今回もっともインパクトを放ったシーンに仕上がっている。絵馬のこの滑りにはSNSでも「絵馬が費やしてきた時間と労力が伝わってくる作画と演出がすごい」「努力に努力を重ねた演技か……さすが」「またもやとんでもない画を見せつけられてしまった」など、絶賛コメントで賑わっていた。
前を向くふたりのメンタルこそが最強の武器!?
帰りの新幹線の車内。司は、夏休みが終わるまで練習を休みにすることをいのりに提案する。足首の捻挫とは別に、いのりには「シンスプリント」と呼ばれる下肢の使いすぎによるスポーツ障害の可能性があり、このまま練習を続けると疲労骨折に繋がる危険があると伝えた司は、コーチとして、これからは怪我やアクシデントの予防も考えていくと宣言する。いのりもまた、今回の大会を通じてたくさんの気づきを得たと言い、そのうえで改めて「私は、出遅れた自分のまま、次は勝てるって信じ続けます」と、強い眼差しで自分の気持ちを語るのだった。
新幹線の車内で行われた、司といのりによる反省会兼奮起会。ふたりのあいだにはすでに強い信頼感や絆があるものの、それでも丁寧なコミュニケーションを欠かさないのがふたりらしい。振り返ってみると、スケート靴の紛失というアクシデントから始まり、それを乗り越えて素晴らしい演技をするも優勝には届かず、さらには怪我までしてしまった今大会は、人によっては「失敗」と考えるかもしれない。しかしふたりはそれを決してネガティブには受け止めず、「足りないものを知れた」と捉えていて、その鋼のメンタルこそが最大の強みなのかもしれない。夏らしく、鮮烈なオレンジ色の夕陽に染まった車内の雰囲気はめちゃめちゃエモく、ふたりのピュアで強い気持ちが胸にグッと迫ってくる名シーンとなっている。これにはSNSでも「いのりちゃん本当に成長したな」「司先生は信じる側へ。ここ泣けるわ」「銀メダルが夕日に照らされて金のよう」などの声が寄せられていた。さて、次回score10は3月8日に放送済み。次回のレビューもお楽しみに!
◆文/岡本大介