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ドラマ『相棒』で水谷豊も使っている…土壇場で相手の本音をグッと引き出す心理をついたマジカルフレーズ

  • 2025.3.11

営業などのヒアリングの場面で相手の本音を引き出すにはどうすればよいか。フリーアナウンサーの田中知子さんは、「相手を気楽にさせた方が『おいしい話』が出やすい。人間の心理を突いた質問をすれば、相手の話すことへのハードルが下がり、黙っていた本音や忘れていた事実、核心につながる情報を口にしてくれる」という――。

※本稿は、田中知子『口下手さんでも大丈夫 本音を引き出す聞き方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

映画『轢き逃げ 最高の最悪な日』初日舞台あいさつ
映画『轢き逃げ 最高の最悪な日』初日舞台あいさつ。水谷豊監督=2019年5月10日、東京都新宿区
「もし」であえて非現実的な質問を

あなたがお客様や相手に質問するとき「もし」をどのくらい使っていますか?

「いつまでに何をしたいですか」と問題を洗い出して、そのためのタスクを出してと現実的なことを聞くだけになったらもったいないです。

ビジネスのシーンで「もし」は効果的です。

「もし」を使うと現実から離れて何でもOKなので自由な発想が浮かびます。

「もしお客様が車を購入されるとしたら何色がお好みですか?」
「もし休みが1カ月あって海外旅行に行けるとしたらどこに行きたいですか?」
「もし声の悩みが何でも解決できるとしたら、一番に何を解決したいですか?」

お客様へのテストクロージングにもなります。「もし」という質問は「そうではない」選択肢もあるので、あくまでも逃げ場を用意して楽な状態で話してもらえます。また、「仮定の話」だからこそ、言いたい放題に言える。思わず「本音が見えてくる効果」があるのです。お客様の潜在的なニーズを察知できる可能性もあるので、あえて非現実的な質問をしてみてください。思いもよらない答えが返ってくるかも。

「もし明日1億円入るとしたら、何がしたいですか?」
「今、社員が10名いますが、もし100名になるとしたらどんなことしたいですか?」
「もし『マツコの知らない世界』に出演できるとしたら何の専門家で出たいですか?」

何だかワクワク度が上がりませんか? 特に3つめの質問は「こんなこと初めて聞かれた。私だったら何だろう。初めて考える」なんて言われます。

相手にいい想像させるって、すごく大事なのです。

アイデアボックスを頭に被ったビジネスマン
※写真はイメージです
気楽に本音が出る

妄想話は面白いですよね。何でもありですから。想像がモクモクと膨んで話も盛り上がる。「そうなったら楽しいね」って。研修やセミナーを運営する梅ちゃんという友人はセミナーの最後にこんなことをしています。参加者全員に目をつぶってもらい

「あなたは何でもできる人です。
もしあなたが偉大なチームをつくるとしたらどんなことを達成したいですか?
もしあなたの夢が叶ったとしたら? 日常がどんなふうに変わっているでしょう。
達成したそのとき、目の前には誰がいてどんな声をかけてくれていますか?
それを聞いてどんな気持ちになりますか?」

と聞いています。私は何度もこの想像体験をしていますが、本当に現実になったかのように顔がほころんでしまいます。「もし」の力は無限です。

私は2024年4月に起業し(株式会社ちゃんこえ)、いろんな方から

「今後は会社をどう大きくしていく予定ですか?」
「3年後、この会社をどうしたいと思っていますか?」
「将来の展望は?」

と聞かれます。何だか襟を正して真面目に答えようと思ってしまうのですが、

「もし、『ちゃんこえ』がどんな企業とでもコラボして何でもできるとしたら何をやりたい?」

と聞かれるとワクワク度がドーンと上がります。何の制限もないし何を考えてもいいのですから。「どんな企業とでもできるなんで……」と楽しくなっちゃいます。スッと「日本文化を広める会社とコラボして海外でも大相撲の魅力を伝える講演がしたい」と出てきました。楽しい質問をされると、答えもスルスル出てくるもの。

「もし」という話と「3年後どうしてるか?」は一緒の意味。ですが、受ける印象が全く違って気楽に答えやすくなります。あなたも「もし」をうまく使って相手の本音を聞いてみてくださいね。

土壇場で本音を引き出すセリフ

人気刑事ドラマ『相棒』で水谷豊さん演じる主人公・杉下右京警部が得意とする「超・質問術」のひとつ、

「あ、そうそう。最後にひとつだけよろしいでしょうか?」

「もう終わり」というタイミングでのこのひと言で相手は思わず、黙っていた本音や忘れていた事実、核心につながる情報を口にする――。この「最後にひとつだけ」というのは会話でも効果を発揮するマジカルフレーズ。

「これで最後」と言われると、「それくらいなら」とハードルが下がります。私は嘘つきにならない程度に程よく使っています。

NHKの大相撲取材時、付け人から「じゃあ、この辺で」と取材を切り上げられそうになったときに、

「これで最後です。ひとつだけ、聞かせてください」

と質問すると、「最後なら」「じゃあひとつだけ」という感じで、もうひとがんばりして答えてくれました。生放送も同じ。ラジオでゲストにインタビューする際、時間的に最後の質問だと思ったら「では最後の質問です」とふると、ゲストは改めてしゃんとして、締めにふさわしい言葉を言ってくれます。「最後」を使わない例では、

「今後の展望を聞かせてもらえますか?」

一方で、「最後」を使った例としては、

「では最後の質問です。『今後こんなことを達成したい』と思うことを聞かせてもらえますか?」

どうでしょうか。印象が変わるのがわかりますよね。ときには「最後に」と言いつつ、そこから話が広がって「全然最後じゃないじゃん」と突っ込まれたことも。その通りで「最後に詐欺だな」と自分でも思うのですが、そういうときほど「いい話、おいしい話」に出会えます。

最後のふんばりのきっかけに、「これで最後」を使ってみてください。

輝く黄色の疑問符
※写真はイメージです
「最後にひとつだけ」

おまけ話ですが、営業時代にそろそろ会社に戻る時間が迫ってきたら、最後にあと一件だけ飛び込んで帰ろうという決まりをつくっていました。最後に一件だけなら疲れている体でも何とかできるもの。自分を奮い立たせる言葉でもあるのです。最後に一件飛び込んだ会社で受注したことが何度もあります。

「最後にひとつだけ」――人間の心理を突いたマジカルフレーズ。ビジネスでのヒアリングにかなり有効です。

「腹を割って話そう」は難しくとも

大泉洋さん出演のテレビ番組「水曜どうでしょう」で藤村忠寿ディレクターが言った名言の一つ。私はこの番組の大ファンで、藤村ディレクターと大泉洋さんの深い信頼関係がよくわかります。

お二人のように気心知れた仲では「腹を割って話そう」はできますが、初対面の人や、そこまで関係性が深くないと腹を割って話すのは難しいもの。

そこで、腹を割って本音で話そうとまでは言える関係ではないけれど、相手の本心を知りたいときには「ぶっちゃけ」という言葉を入れて聞いてみてください。「本音を言っても大丈夫」と相手の背中を押すパワー・クエスチョンです。

「ぶっちゃけ、どうですか?」

田中知子『口下手さんでも大丈夫 本音を引き出す聞き方』(かんき出版)
田中知子『口下手さんでも大丈夫 本音を引き出す聞き方』(かんき出版)

ライトな言葉づかいですが、一瞬でカジュアルな空気感にでき、相手と距離が縮まる役に立つフレーズ。「会話がかたい」「リラックスして本音のところを聞きたい」そう思ったら「ぶっちゃけて言うとどうですか?」を差し込んでみてください。表立って大きな声では言えない本心をカミングアウトしてほしいときにぴったりです。

「ぶっちゃけ、うまくいってます?」
「開催に至るまで大変だったのではないでしょうか? 実際のところは?」

「ぶっちゃけ」を丁寧にした「実際のところ」「率直に言うと」と言い換えればOKです。

「大相撲を生で観戦するのは初めてでしょ。ぶっちゃけ、どうだった?」
「この連敗、膝のケガの影響があるという声もありますが、実際のところどうですか?」

というように、プライベートでは「ぶっちゃけ」、インタビューやラジオのゲストトークなどでは「実際のところ」とシチュエーションで使い分けています。

相手の緊張がほどけて、素顔が見えてくるフレーズです。

田中 知子(たなか・ともこ)
フリーアナウンサー
フリーアナウンサー。大相撲愛好家。コミュニケーション講師。株式会社ちゃんこえ代表取締役。通称「たなとも」。リクルート求人広告営業から31歳でNHKキャスターに転身。NHK大相撲取材から学んだ独自メソッド「金星コミュニケーション」を講演しながら、「人と話すって楽しい!」「勇気を出して挑戦すると道が開ける!」を伝えることをミッションとして全国を飛び回っている。

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