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女性の一生にまつわる性の問題。心地よく向き合っていくための方法を伝授

  • 2025.3.10
Photo_ Anna Dabrowska (Trunk Archive)
andr20230425-001Photo: Anna Dabrowska (Trunk Archive)

女性ホルモンとは何か?卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)だということは昔、保健体育の授業で習ったことを覚えている人も多いだろう。排卵や月経をコントロールして妊娠・出産という一大イベントに備えることはもちろん、肌や髪の潤いやツヤを守る、骨量を維持する、コレステロール値を調整するなど、心身の健康と美容にとって重要なのがこの女性ホルモンなのだ。人生の中でも女性ホルモンの影響を大きく受ける時期が3回ほどある、と助産師のたつのゆりこさんは語る。「まずは月経が始まる初潮を迎えたとき。次が出産後、そして閉経前後のいわゆる更年期。この3つのタイミングでは、特に女性ホルモンの影響を受けやすく、心身の変化を感じることが多くなります。しかし、女性ホルモンは不調ばかりをもたらすのではなく、私たちの健康を維持するために必要なもの。人生100年時代となった今、閉経を迎える年齢が50歳前後だとすると、その後女性ホルモンの恩恵を受けずに50年も生活することになるわけです。そんな人生の後半部分の体と、その健康についてもきちんと向き合う必要があります」

女性ホルモンの影響を大きく受けるこれらの時期の症状をはじめ、生理痛や排卵痛、月経前症候群(PMS)など、残念ながら月単位でもその影響からは逃れられない。そんな体調の変化について、植物療法士であり、女性の体の仕組みに詳しい森田敦子さんはこう指摘する。「エストロゲンが増えると排卵痛を感じ、体が疲れやすくなります。そしてプロゲステロン(黄体ホルモン)が増えると月経の準備が始まり、むくんだり精神的にイライラしたり。脳から子宮へ指令が下り、子宮を収縮させるプロスタグランジンという生理活性物質が放出されることで経血が絞りだされるので痛みを感じやすくなります。そんなふうに、女性の体には常に不調の原因がつきまとい、調子がいい状態は生理のあとのたった1週間ぐらい。1カ月のうちでも変化を繰り返すのが普通だということを知っておくことが大切です」。毎月、体に起こるリズムを知っておけば、その時期の体を整える準備ができるのだ。

100年前は10人前後の子どもを産む人も珍しくなかったが、現代では妊娠・出産をしないまま一生を終える女性も少なくない。その場合、初潮を10歳前後で迎え、50歳ごろに閉経するまでの約40年で450回程度の生理が休むことなく、続くことになる。ピルを使って生理を止めたほうが体の負担を減らせるという意見もあるが、実際のところはどうだろう。「生理は脳とホルモンと子宮が複雑に相互作用し合う、体の中で毎月起こる壮大なドラマ。毎月のリズムを守ることは心身の健康を守るためにとても大切なこと。生理が面倒だからと安易にピルを使うのはおすすめしません。もちろん病気や諸事情で必要なこともありますから、その場合は医師の指導のもと、正しく服用を。なるべく短期間でやめて、生理が自然に来るか確認をしてください」と安易な乱用に森田さんは警鐘を鳴らす。

生理痛や更年期のトラブルなどが出やすい人には何か傾向があるのだろうか。たつのさん曰く、「問診ではどんな場所で生まれ育ち、どんなものを食べて育ってきたかということをまず質問し、次いで質の高い睡眠をしっかり取れているか、湯船に浸かる習慣があるか、排便は毎日あるかをチェック。そうした生活習慣の立て直しから始めます。あと、“こうでなければいけない”、“普通はこうだ”と考えがちな真面目で完璧主義の人の思考グセが不調につながることも。その際、たつのがこう言ったからやるのではなく、自身が頭で理解というより腑に落ちて実行することが大切ですよと説明しています。本来、女性ホルモンが優位であれば、自分にとって何が必要か不要か見極められるはずなので、もっと自分の直感力を信じてあげてほしい。ひとつやってうまくいかなくても、これは私には合っていなかっただけ、では次のことをやってみようと自分基準で判断していく。私の仕事はそれに伴走することです。セルフケアやセルフラブと言われていますが、なんでも自分でやらないといけないと思い込まなくてもいいんです。疲れているときのマッサージやトレーニングなどは他人の手を借りることも覚えましょう。悩みをため込んでいる人はお腹が張って、冷たい人が多いです。そして、お腹が冷えている人はたいてい呼吸が浅い。息をしないと血流は動かないので、低体温になります。ホルモンが正常に働くためには体温を36°Cは保ちたいですよね。呼吸を深くするために私がおすすめするのは鼻の穴にワセリンを塗って保湿すること。呼吸が深くなり、体が温まりますよ」

冷えが女性の体にとって大敵であるという指摘は森田さんからも。「体温は1°C違えば、免役機能が4倍違うと言われています。食べたものから摂った栄養素が血流に乗って子宮や腟にも届きます。冷えは血流を滞らせるので、良質な粘液を作るための栄養素が届きません。こうなると腟は乾いて本来の機能を発揮しにくくなるのです。また食欲・睡眠欲・性欲と言われるように、セックス行為も女性の体の健康を守るために無視できないこと。3カ月セックスをしないとセカンドバージンのような状態に戻ってしまうことも。性的に興奮することでクリトリスに血液が充満して、クリトリスが勃起するのです。女性もこの勃起状態が長期間ないままでいると、腟が乾いて委縮します。そうなるといざセックスする際、腟が固く閉ざされ、ペニスの挿入が痛くてたまらない性交痛が起きることに」。とはいえ、パートナーがいない場合はどうすればいいのか?たつのさんの意見はこうだ。「長くパートナーがいない人だけでなく、毎日同じご飯を食べ、同じ場所で寝ている夫や同棲中の彼などはもはや家族で、なかなかセックスしたいという気持ちになれないのもわかります。そういう場合はセルフプレジャーアイテムを使えばいいんです。男性はトイレに行くたびにペニスや睾丸を触るじゃないですか。女性もむしゃくしゃしたら、自分でクリトリスを刺激すればいい。ストレスも体に毒なので、嫌なことが起きたら手で隠し持てるセルフプレジャーアイテムを持ってトイレへ。そうやってリラックスするのは悪いことではありません」

話を聞いたのは......

YURIKO TATSUNO

助産師。女性の体と心の仕組みを漢方やヨガなど東洋医学の視点からアドバイス。自身も更年期を迎えたのを機に山梨県・八ヶ岳に移住し、ビボーン助産院(女性院)を開設。ホリスティックなフェミニンケアセラピーを提案している。

ATSUKO MORITA

客室乗務員時代に発病したのをきっかけにフランス国立パリ13大学で植物薬理学を学び、植物療法士に。フランス フィトテラピー普及医学協会認定校「ルボア フィトテラピースクール」主宰。膣ケアの重要性をさまざまな媒体で発信する。

Text: Teruno Taira Editor: Misaki Kawatsu

※『VOGUE JAPAN』2025年4月号「一生つき合う“性”との心地よい関係」転載記事。

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