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「長風呂」はかえって体に負担がかかる…医師・和田秀樹「高齢者にとって命取りになる危険な健康常識の種類」

  • 2025.3.10

高齢者の健康管理で気をつけるべきことは何か。医師の和田秀樹さんは「湯船にゆっくりつかると心身がリラックスして気持ちがいいが、年を重ねてからの長風呂は命の危険をともなう大事故につながりかねない」という――。

※本稿は、和田秀樹『60歳でリセットすべき100のこと』(永岡書店)の一部を再編集したものです。

お風呂の時間
※写真はイメージです
腰痛で安静にしすぎると体の機能が低下する

高齢になるにつれて腰痛は、ぎっくり腰よりも「慢性疼痛」が多くなる傾向にあります。

「慢性疼痛」とは、痛みが3カ月以上続いたり、再発をくり返したりするもので、焼けるような痛みだったり、重く鈍い痛みだったりします。

腰痛になる原因は、主に以下のようなものです。

●長時間同じ姿勢でいる
●前かがみや中腰になることが多い
●運動不足で足腰の筋力が低下している
●重労働や運動のしすぎで筋肉疲労がある
●敷き布団やマットレスがやわらかすぎる、または硬すぎる

また、体が冷えたり、筋肉が緊張したりすると血行が悪くなって腰痛になりやすいようです。腰が痛いと動くのもつらくなるため、あまり体を動かさなくなってしまいますが、安静にしすぎると体のさまざまな機能が低下してしまいます。

ただ、ぎっくり腰など急に腰が痛んだ場合は安静にしましょう。

腰痛を防ぐためには腹筋を鍛えるというよりも、おなかの筋肉を使うようにするといいでしょう。へその下あたりを意識して、おなかに軽く力を入れるような感覚です。

立ったり座ったりする時の姿勢も大事で、猫背になったり腰を反りすぎたりしないように気をつけること。老後に腰痛に悩まされると外出する機会が減って、脳への刺激がなくなり、老化が進んでしまいます。

日頃から体を動かして、筋力が衰えない生活を心がけるようにしましょう。

「量体裁衣りょうたいさいい」――実際の状況に応じて、ものごとを現実に適した形で処理する策を講じること。何事も杓子定規しゃくしじょうぎな考え方はしないようにしましょう。

長風呂は15分を目安に楽しむ

湯船にゆっくりつかると心身がリラックスして気持ちがいいものですが、年を重ねた今、長風呂は危険をともなうことを理解しておきましょう。

和田秀樹『60歳でリセットすべき100のこと』(永岡書店)
和田秀樹『60歳でリセットすべき100のこと』(永岡書店)

入浴は体を芯まで温めることで、疲労を回復し、むくみを解消する一方で、長くお湯につかりすぎるとのぼせたり、脱水症状になったり、肌が乾燥しやすくなったりします。のぼせてしまうと、動悸や頭痛がしたり、頭がぼーっとしたりして転倒する危険があります。

転んだ時に強く頭を打って意識を失ったり、湯船でおぼれてしまったりするなど、命の危険をともなう大事故につながりかねないため、長風呂にならないように気をつけてください。

一般的に、30分以上お湯につかると、体への負担が大きくなるといわれています。体が疲れていたり、冷えを感じたりしている時は、15分を目安に40℃以下のお湯につかりましょう。

基礎体温が36℃くらいの人は、40℃程度ではぬるいと感じるかもしれませんが、心身をリラックスさせるには、副交感神経を刺激する37〜39℃の微温浴がよいようです。

お風呂でリラックスする年配の女性
※写真はイメージです
やる気を起こしたいときの熱いお湯は41~42℃が効果的

また、就寝前に、熱いお湯に5分以上つかるのもやめたほうがいいでしょう。42℃以上のお湯につかると、交感神経が活発になって興奮状態になるため、寝つきが悪くなります。

やる気を起こしたい、スッキリしたい時には、41~42℃のお湯に10分程度つかるようにするといいでしょう。

長風呂はおすすめできませんが、お風呂好きで長く入浴を楽しみたい人は、半身浴にしたり、こまめに水分を補給したりして、十分気をつけましょう。

「水をひと口飲んで湯に入るとのぼせない」――これは東京都公衆浴場業生活衛生同業組合が紹介している銭湯のことわざです。湯船につかるなら、入浴前後の水分補給はお忘れなく。

無理やり寝ようとしない

年をとるにつれて睡眠が浅くなったり、寝つきが悪くなったりするなど、眠れないという悩みを抱える人が増えてきます。その理由は、体内時計の変化などさまざまあるようです。睡眠の途中で目が覚めてしまう人は、次の3つの睡眠習慣をやめるようにしましょう。

●早寝(普段よりも早めに床に就く)

本書でも「早寝早起き」をすることが健康の常識ではないとお伝えしています。眠れそうもないのに布団の中に入ると、長寝をすることに。床には就かずに、夜ふかししながら眠くなるのを待つのも手です。

●長寝(眠れなくても布団の中でじっとしている)

布団に入って30分経っても眠れない時は、一度布団から出ましょう。眠れずに長い時間もんもんとしていると、不眠が悪化しかねません。

●昼寝や夕寝(しっかり仮眠をとる)

30分以上の仮眠は夜に深く眠ることを妨げ、15時以降の仮眠は夜の入眠に影響します。長時間の仮眠が認知症のリスクを高めるとも。ただし、適度な仮眠は疲れをとるのに重要です。

年をとると睡眠の質が変わってくるため、ちょっとしたことで目が覚めやすくなりますが、途中で起きてもあまり気にしないように、私たち医者は伝えます。質のいい睡眠をとるためには、無理をして寝ようとしないことが大切なのです。

「充実した一日が幸せな眠りをもたらすように充実した一生は幸福な死をもたらす」(レオナルド・ダ・ヴィンチ/芸術家)――1日の過ごし方も大切ですね。

和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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