表現やテイストを作家に託し、独創性に富んだ絵本作品をオムニバス形式で収録する絵本雑誌「さがるまーた」(講談社)。雑誌の特性を生かしながら工夫した付録の評判も上々。編集部によれば、いまや作家陣の間でも雑誌の認知が広がっているとか。待望の第二弾には、12の絵本と記事、5大とじこみふろくが収録されている。
●異分野で活躍するクリエイターの初絵本が秀逸
今号で気になったのは、幼少期をタイやシンガポールで過ごしたという画家の北林みなみさんが、24ページにわたって制作した初めての絵本『ぼくのもり』。小さな小さな「ぼく」がジャングルのような森の中で、どこかで会ったことがあるような人や生きものに出会っていく。目を惹くのは、大きなプールのような水辺や、大きく描かれた青空。透明感のある色味、大胆な構図、不思議なスケール感に、吸い込まれるような美しさがある。“これは、もしかしたら心象風景?”などと想像を巡らせながら、絵の中にどっぷりと浸るのがおすすめだ。
一緒に読んだ8歳の息子のお気に入りは、アニメーション作家の土屋萌児さんが初めて絵本に挑戦した『のびるひ』。朝起きて、伸びをして外に出たら、からだが伸びていく…というお話で、どんどん伸びる人や街の絵の不思議さが小学生男子の心をつかんだ様子。「今度は身長が伸びて宇宙までいくんじゃない?」と妄想まで膨らませていた。動画をスローモーションにして静画にしたような作品で、大人が読んでも「こんな発想ある?」と、その自由さに驚嘆してしまうはず。
●ベテラン陣、人気作家による新しい表現も
ベテラン陣の作品もさすがの存在感だった。イラストレーターで画家の寺門孝之さんによる『おんにん』は、寺門さんの昔のノートに、肩まで山になって泣いている鬼の絵があり、“鬼をなんとかしてあげなきゃ”という想いで制作した作品だそう。布に描かれた原画のタッチがそのまま誌面に載っているのがまず新鮮だし、絵の迫力にただただ圧倒される。恐怖の対象である鬼が人間のように感情をむき出しにした姿は、愛らしいような、おぞましいような…。最後の見開きでは「ちょっと珍しいものを見た」という気分になれるかも。
『かげにひげ』は、『ネコヅメのよる』などネコ関連の作品で知られる町田尚子さんが絵を描き、歌人の佐藤弓生さんが短歌を詠んだ作品。独特の世界観を持つ絵と文が絶妙なマッチングを果たし、しばし、別世界へと連れ出される。ちなみに、本誌はネコを描いた作品が偶然多く集まったらしく、ネコ好きにもたまらない一冊となっている。
●こだわりが詰まった付録で遊ぼう
付録には、見たことがないような長さの6つ折り蛇腹絵本や、巨大ポスターにもなる両面絵本など、豪華でおもしろい作品が5点も。絵本を読むだけではなく、飾ってみたい、手を動かして作ってみたい、という欲も満たしてくれるはずだ。
出口かずみさんによる『ちいさいおじいさんと とりの ひまつぶし』は、本誌から2ページ分を切り離して16分の1サイズに折り畳むと、32ページの豆絵本が完成する仕掛け。小さなおじいさんと鳥にからかわれっぱなしの“おこりねこ”の話は、何度読んでも肩の力が抜けるので、いつでも癒されるためにバッグに忍ばせても良さそう。
青空亭(チャンキー松本さん×犬ん子さん)による紙工作「宝船」は、招き猫や大判小判の絵をスチレントレーに貼れば宝船になる…というおめでたい付録。防水の丈夫な紙でできているらしく、このままお風呂に入れて遊ぶこともできる。スイ〜ッと水面を進む姿は本物の船のようで、大人は心が洗われつつ気分が上がるし、小学生男子の興奮も半端ではなかったです。
第一弾と同じく、圧倒的に“濃い”内容に打ちのめされた『さがるまーた』第二弾。いつも辛口な息子が「どのお話もおもしろい」と率直に話しているのを聞いて、表現したい気持ちは年齢に関係なく人の心を動かすのだな、と感じました。絵本好きはもちろん、本好きや雑誌好き、アート好きにもおすすめです。
文=吉田あき
引用----
【「さがるまーた」編集部より】
とじ込み付録・ミロコマチコさん作「まんげつおどり」のポスターに収録すべき描き文字が落ちていることが判明いたしました。
該当のとじ込み付録ポスターの修正版を準備しております。修正版ポスターをご希望の方は、大変お手数ではございますが下記のフォームからお申し込みいただければと存じます。
https://enq.kodansha.co.jp/?uecfcode=enq-dak5fr-51
※お申し込み締め切り:2025年5月31日(土)23時59分まで
この件に関するお問い合わせ先
https://cocreco.kodansha.co.jp/contact/genki
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