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いとこはピンク、私は水色。それが幼い私たちの約束ごとだった

  • 2025.3.8

一つ年上のいとこは、いつでも、今でも私の憧れです。

外遊びが好きないとこと、家遊びが好きな私。活発で小食ないとこと、のんびりと大食いな私。前髪のあるいとこと、前髪のない私。

幼い頃は会うたびに喧嘩をしていて、そういう時は大抵私が最初に悪いことをするのですが、怒られるのは年上のいとこの方でした。私たちはいつも二項対立、お互いにお互いが憎くて、大好きで、どうしても離れられないさくらんぼのようでした。

◎ ◎

いとこはピンク、私は水色。それが私たちのルールでした。どちらかが強く希望したのか、それとも親がそう決めたのか、なぜなのかは未だに分かりません。一人っ子の私にとって、賢くて絵も上手くて、いつも面白い遊びを考えつくいとこは憧れの存在でした。私はコッソリ(しかしバレバレ)いとこのやること全てを真似していましたが、唯一真似できないのがまさに「ピンク」でした。

例えば急にアイドルグループがメンバーカラーを変えると言ったら、別にそれは犯罪ではないけれど、たくさんの人が困ります。それと一緒で、私がピンクになることは絶対にあり得ませんでした。憧れのいとこの担当カラー・ピンク。ピンクのテディベアも、ピンクのTシャツも、ピンクの髪飾りも、本当は全部欲しかった。

でも、その「欲しい」という気持ちは「いとこが持っているから」という憧れに根付いたもので、いざ私がピンクを担当できたとしても納得いかなかっただろうとは思います。本当にピンクが好きだったわけではなく、ピンクを身に着けているいとこが羨ましかったのです。

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一緒に長崎に行った、小学生の時の夏休み。いとこが作ったジェルキャンドルの中で笑っていた、小さなピンクの天使ちゃんが本当に可愛く見えたんだ。当然私も水色の天使ちゃんを使ったら、真似じゃん!といとこは怒りだした。

あの時はごめんね、何から何まで全部真似してごめんね。あなたが使っていたピンクの天使が、あなたにだけ使うことができたピンクの天使が本当に羨ましくて、幼いなりに妥協した結果、水色だったら許されると思ったの。

◎ ◎

私は今年で二十二歳になります。さて、あの頃憧れていたピンクはなんと今「あなたによく似合うね」と言われる色になりました。いとこはどうかというと、あらびっくり。髪の毛をブルーに染め、自分に一番合うスタイルを熟知した素敵な女性になりました。

でも今、私といとこの担当カラーが逆になったというわけではなく、そういった思い込みがなくなったと言った方が自然だと思います。

実は私はかなりピンクが好きです。特にふわふわとしたシャギー生地のピンクセーターや、リボンのついたピンク色のスニーカーを身に着けると、まるで完璧な乙女になれたような気がするから。ピンク=女、という固定観念に苦しめられる話をよく聞きますが、私にとってはむしろピンク=憧れのいとこ、という等式が馴染みます。ピンクを選ぶ時、あ、私今憧れの色を選んじゃったぞ、やってやったぞ、と何となく自慢げな気持ちになるのも、無意識のうちにずっとその等式が頭の中にあるからかもしれません。

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今だったら、ピンクの天使を選んでも笑って許してくれるかな。今はお互い離れた場所に住んでいて、昔のように頻繁に会うことができなくなりましたが、世界が敵だらけになったっていとこだけは私の絶対的な味方なんだ、と思うことでなんとか日々踏ん張って生きていけます。ピンクといえば、で思い出すいとこへの憧れ。今度会った時に、どうして私たちに担当カラーがあったのか、あの頃を思い出しながら聞いてみようと思います。

■うたのプロフィール
本は付箋を貼りながら読みます。旅行記をnote(https://note.com/utanokobako)に投稿しています。

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