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頑張って腹筋してもポッコリお腹は消えない…シュッとした男女が毎日やっているジム要らずの「逆腹筋」とは

  • 2025.3.7

ぽっこりお腹を解消する方法はあるか。理学療法士の中村尚人さんは「お腹が出る原因から考える必要がある。1つは脂肪、もう1つは『重力によって押しつぶされた内臓』だ。内臓が飛び出た状態では、どんなにキツイ筋トレも逆効果になってしまう」という――。

※本稿は、中村尚人『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)の一部を抜粋・再編集したものです。

なぜ「ぽっこり」飛び出てしまうのか

「どうしたら、お腹を凹ますことができますか?」

これは、私の運営するピラティススタジオやヨガクラスで、そして取材に来られるメディアから、数えきれないほど聞かれる質問です。私が理学療法士からヨガ、ピラティスの指導者に転向してから早13年。その間、毎年のように繰り返されるのですから、どれだけ多くの方が「ぽっこり腹」に悩んでいるのかがうかがえます。

「お腹を凹ませたい」「くびれたウエストが欲しい」という方にとってぜい肉のない平らなお腹は、まさしく「カッコいいカラダ」「美ボディ」の象徴であり、永遠の憧れなのでしょう。

自身のぽっこりおなかをつまんでいる女性の手元
※写真はイメージです

そもそも、私たちのお腹は、なぜ、ぽっこりと前に飛び出してしまうのでしょうか?

一つは食べ過ぎや運動不足によるエネルギー過多です。

摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、余ったエネルギーが皮下脂肪や内臓脂肪として体に蓄えられてしまいます。この場合、お腹をすっきりさせるための対策としては、脂肪を減らす必要があるので、食事のコントロールが主体です。

そして、もう一つが「重力による押しつぶし」です。

「お腹、使えていないのでは?」が8割

実は、現代の日本人のぽっこり腹の根本的な問題は、この「押しつぶし」に潜んでいます。

もともと人間の体は、直立姿勢を支持する筋肉たちが自動的に働いています。これらの筋肉は「重力に抗う筋肉」と書いて、「抗重力筋」と言います。そして腹筋群も、直立姿勢を支える抗重力筋の一つであり、背中やお尻、脇にあるほかの抗重力筋と協力しながら、姿勢を支えています。

ところが、長年、文明の利器に頼る生活を送る間に、大変多くの方はすっかりお腹の筋肉を使わなくなってしまいました。

【図表】ポッコリ腹の原因になる生活習慣
出典=『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)

筋肉は使わないと、どんどん落ちていくという性質があります。お腹の筋肉も例外ではありません。使わなければみるみるうちに細く、弱くなっていき、抗重力筋としての力も失われてしまうのです。

私は職業柄、つい道行く人の体にも目が行きますが、実に約8割の人がお腹が使えていないのでは? と感じるのです。

「ポッコリ」の正体

では、重力に抗えなくなったお腹はどうなると思いますか?

そう、グシャッとつぶれてしまいます。

お腹がつぶれると、頭が前に出て、巻き肩になり、胸が閉じた「前かがみ姿勢」になります。同時に、肋骨の位置が落ちていき、その下にある内臓を押しつぶします。

お腹のスペースは限られていますから、押しつぶされた内臓は行き場をなくし、前に飛び出すしかありません。

【図表】ぽっこりおなかの正体
出典=『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)

これが、現代人に多く見られる「ぽっこり腹」の正体です。

今ある「ぽっこり腹」の問題の根本は、背筋が重力に負け、腹筋も働かなくなった結果です。

ですから、現代社会では一見、やせている人や若い人の間でも、お腹だけぽっこりしている人が増えているのです。

「腹筋でお腹がうすくなる」のウソ

では、お腹をうすくしたいなら、どんな腹筋をすればいいのでしょう?

その答えが、前回記事でも紹介した「逆腹筋」です。

「逆腹筋」の詳細に入る前に、まずは改めて、腹筋運動の種類や働きについて簡単にお話しします。体は筋肉の働きにより、関節を動かしたり、固定したりします。このとき、筋肉は伸びたり縮んだり、あるいは長さを変えずジッとすることで、力を発揮します。これを「筋肉の収縮」と言います。

筋肉の収縮様式は三つあります。

一つは筋肉を縮めながら力を発揮する「求心性収縮」。二つ目は筋肉の長さを変えずに力を発揮する「等尺性収縮」。そして三つ目は筋肉を伸ばしながら力を発揮する「遠心性収縮」です。三つの収縮様式を、主な腹筋運動に当てはめてみると、以下のようになります。

● 求心性収縮……上体起こし運動(カールアップやシットアップ)
● 等尺性収縮……プランク
● 遠心性収縮……逆腹筋

【図表】三大腹筋収縮様式の違い
出典=『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)

お腹を凹ませたいと考えたとき、おそらく100%と言っていいほど、皆さんは腹筋運動にチャレンジします。なかでもメジャーなのは、はるか昔に学校体育や部活で覚えた、あお向けで上半身を起こす求心性収縮の「上体起こし運動」。

体幹トレーニングブームからすっかり腹筋の定番種目となった、等尺性収縮の「プランク」をする人も多いと思います。

上体起こし運動や足上げ腹筋は、お腹の筋肉をグッと縮めながら、重い上半身や脚を持ち上げる運動です。強い負荷をかけて腹筋をギュウギュウ縮めて、筋肉にどんどん血液と栄養を送り込む。それにより筋肉が肥大するので、しっかりやり込むと腹筋が盛り上がり、美しいシックスパックが手に入ります。

ですから、腹筋を割りたい、ガッツリたくましい腹部にしたい方にはピッタリです。

「足上げ」はコスパ高、しかし…

しかし、やればやるほど筋肉がボリュームアップするのですから当然、お腹の厚みが増します。ということは、ぽっこり前に飛び出したお腹に、さらにモリッと厚みのある筋肉がのっかるわけです。つまり、単純に「お腹を凹ませたい」「うすくしたい」という人には、逆効果と言えます。

ここで、腰痛研究の世界的な権威である、カナダのスチュワート・マクギル博士の研究を紹介します。

マクギル博士は上半身を床から持ち上げる、上半身をねじる、脚の上げ下げを行うなど、さまざまな腹筋運動における負荷の研究(※1)を行いました。

※1参考文献:McGill, “Low back loads over a variety of abdominal exercises: searching for the safest abdominal challenge”, Medicine & Science in Sports & Exercise.29:804-811, 1997

その論文によると、もっとも腹筋に対する負荷が強かったのは、両脚を上げ下げする、いわゆる「足上げ腹筋」。腹筋運動時の負荷(筋肉の動員数)を比較すると、求心性収縮の運動の負荷が高く、遠心性収縮は負荷が低いと出ました。

求心性収縮の上体起こし運動や足上げ腹筋は、筋肉の力だけで上半身や両脚を持ち上げて、腹筋をギュッと縮めます。そのため、かかる負荷が大きい。効率よく筋肉量アップを狙うなら求心性が正解、と言えます。

「効率のよさ」の代償

一方で、そのような負荷の高い腹筋運動は、体の故障につながるという結果も出ています。

背骨を丸くして上半身を起こす腹筋は、椎間板や靭帯に過剰なストレスを与えてしまうことが、広く知られています。

逆に遠心性収縮の場合、腹筋自体だけでなく、靭帯や腱など、ほかの組織にも頼りながら筋肉が伸びるので筋組織そのものへの負荷は多少下がります。そのため、筋肥大の効果は下がりますが、安全にラクに継続できます。

【図解】伸ばして鍛える逆腹筋
出典=『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)

一長一短というわけです。

中村尚人『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)
中村尚人『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)

繰り返しますが、筋トレの目的が筋肥大であれば、強い負荷をかけやすい求心性収縮の腹筋運動のほうが効率的に効果を上げられますし、適しています。しかし、姿勢が悪くさらに脂肪がたっぷりある人は、どんなにお腹を縮めて腹筋しても、ぽっこり前に出たお腹の上に、さらに筋肉が乗ってしまうだけです。

また、上体起こし運動では、お腹をうすくする筋肉にアプローチできません。

鍛えているのは腹直筋ですが、お腹をうすくするのは腹横筋や腹斜筋です(※2)。せっかく時間と労力をかけてトレーニングをするのですから、目的や今の体に合った腹筋運動を選びませんか?

※2 筆者註:これらの筋肉については『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)で詳述しています。

中村 尚人(なかむら・なおと)
理学療法士・ヨガインストラクター
理学療法士、ヨガインストラクター。逆腹筋メソッドの考案者。Studio TAKTEIGHT(タクトエイト)主宰。1999年より理学療法士として大学病院から在宅まで12年間幅広く臨床を経験。その中でヨガと出会う。2011年に予防医学を実現するために独立。解剖学への深い理解と、医学に基づく安全な指導に定評があり、日本最大のヨガイベントYoga Fest、オーガニックライフ東京には毎年招聘されている。現在は、医療とボディーワークの融合、予防医学の確立を目指し、日々患者や生徒と向き合っている。これまでに、理学療法士として姿勢や運動機能に問題を抱えた1万人以上の患者と向き合いつつ、ヨガやピラティスの指導者として2000人以上のインストラクターを養成。著書はロングセラーの『ヨガの解剖学』(BABジャパン)をはじめ、テレビやYouTubeで話題になった『「そる」だけでやせる 腹筋革命』(飛鳥新社)など多数。NHK『きょうの健康』『おはよう日本』をはじめ、全国ネット局に番組への出演実績多数。

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