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「北欧の神秘―ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」が静岡市美術館で開催中

  • 2025.3.6

こんにちは。フリーキュレーターのSEIJIです。価値観や表現方法が多様化しているアートの世界を、ニュースや展覧会、作家や作品に注目したコラムにしてお届けする「今どきのアート」。近頃気になったのがこちら。

出典:シティリビングWeb

エドヴァルド・ムンク《ベランダにて》1902年 油彩・カンヴァス ノルウェー国立美術館 Photo:Nasjonalmuseet/Børre Høstland/p>

あのエドヴァルド・ムンクの作品が…「北欧の神秘―ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」が静岡市美術館で開催中!

北欧で独自の芸術が開花したのは19世紀以降。それまでフランスやドイツの芸術に感化されていた北欧の画家たちは、自国の風土や文化、歴史に関心を寄せるようになったのです。

現在ではデザインの先進国として知られる北欧の目覚めの時といえるかもしれません。

氷河と豊かな森が織りなす幻想的な風景や、古くから伝わる神話、民間に広がる伝承が絵画のモチーフとして多くの共感を得たのです。

とくに世紀が変わるはざまの1900年頃は北欧美術の「黄金期」。有名な絵画作品の「叫び」で知られるノルウェーのエドヴァルド・ムンクやフィンランドのガッレン=カッレラなど、のちに世界的な名声を得る偉大な画家たちが活躍しました。

出典:シティリビングWeb

アクセリ・ガッレン=カッレラ《画家の母》1896年 テンペラ・カンヴァス スウェーデン国立美術館 Photo:Bodil Beckman / Nationalmuseum

北欧アートを存分に鑑賞できるチャンス

この展覧会の特筆すべき点は、日本で観ることが大変希少なノルウェー、スウェーデン、フィンランドの絵画が一堂に会するということ。

ノルウェー国立美術館、スウェーデン国立美術館、フィンランド国立アテネウム美術館が所蔵する47作家、約70点の作品が一堂に集結。

「自然」「神話・お伽話」「都市」というテーマを中心に19世紀後半から20世紀前半の北欧の画家たちが紡ぎ出す神秘的で感情を揺さぶる絵画の世界を存分に味わえます。

出典:シティリビングWeb

ロベルト・ヴィルヘルム・エークマン《イルマタル》1860年 油彩・カンヴァスに貼った紙 フィンランド国立アテネウム美術館

展覧会は序章~第3章までのきめこまやかな構成で展示

「序章 神秘の源泉―北欧美術の形成」では、19世紀に発展を遂げた風景画ジャンルについて触れています。18世紀末ごろからイギリス、フランス、ドイツで隆盛したロマン主義が、壮大で荒々しい自然環境を抱く北欧でどのように浸透し、そして進化を遂げたのか、関心が深まる展示となっています。

「1章 自然の力」

19世紀末の欧州では都市化や工業化が進展する一方、人々は自然回帰への憧れを抱きました。アートの潮流では人間の内面世界の表現を主眼にした象徴主義が北欧に波及。象徴主義的な芸術観はその土地固有の自然風景の絵画化を促すナショナリズムの動向と結びついてナショナル・ロマンティシズムと呼ばれました。その潮流の形成は興味深いです。

出典:シティリビングWeb

エドヴァルド・ムンク《フィヨルドの冬》1915年 油彩・カンヴァス ノルウェー国立美術館 Photo:Nasjonalmuseet/Børre Høstland

「2章 魔力の宿る森―北欧美術における英雄と妖精」

北欧に残る様々な神話や伝説のなかでも注目すべきが「北欧神話」と『カレワラ』。「北欧神話」とは、キリスト教改宗以前にゲルマン人の間で信奉されていた神々や英雄にまつわる物語のうち、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランド等に伝承されたものを指しているのだとか。また『カレワラ』は古くから伝わるフィンランドの口承詩を、19世紀前半に物語として編纂した民族的叙事詩…。いや、百聞は一見にしかずです。

出典:シティリビングWeb

ヨセフ・アラネン《レンミンカイネンと牛飼い》1919-1920年 テンペラ・カンヴァス フィンランド国立アテネウム美術館

Photo:Finlands Nationalgalleri / Jenni Nurminen

「3章 都市―現実世界を描く」

産業革命以降、近代化が進展した北欧では身近なモチーフをありのままに描く写実主義が好まれ、都市化や近代化に脅かされる農村の暮らしや伝統文化に眼差しを向ける画家たちもいました。やがて象徴主義やナショナル・ロマンティシズムが勃興し写実性を離れた叙情的な都市景観画が盛んに描かれるように。近代化のうねりの中で画家たちは何を模索したのでしょう。

出典:シティリビングWeb

エウシェン王子《工場、ヴァルデマッシュウッデからサルトシュークヴァーン製粉工場の眺め》制作年不詳 油彩・カンヴァス スウェーデン国立美術館

Photo:Erik Cornelius / Nationalmuseum

美術館からのメッセージ

「近代美術の巨匠、エドヴァルド・ムンクが描いた作品2点をはじめ、日本では目にする機会の少ない北欧絵画が一堂に会する貴重な機会です。北欧の神秘的な世界観に浸る森の怪物トロルをはじめ、北欧の神話や民話に出てくる妖精や怪物は、今日でも映画や小説の着想源になっています。絵画に描かれた北欧ファンタジーの世界をぜひお楽しみください」(広報担当 岡田さん)。

コラボメニューも嬉しい!展覧会特別メニュー

静岡市美術館に近い中島屋グランドホテルでは「北欧の神秘 ―ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」展開催記念アフタヌーンティーを提供中!スウェーデンのティータイム「フィーカ」をテーマにしたアフタヌーンティーを楽しめます。

期間は2025年3月26日(水)まで。アフタヌーンティーは11時~17時まで。

透き通るような透明感のある美しい絵画の数々。お目にかかることが大変希少な「推しの展覧会」です。

出典:シティリビングWeb

静岡市美術館の入る葵タワー外観

会期は2025年3月26日(水)まで。展覧会の詳細は下記のURLからご確認ください。

静岡市美術館

https://shizubi.jp/

プロフィール/SEIJI(小太刀正史)

フリーキュレーター。MeDEL個人事務所主催。学芸員の目線から美術館の情報を発信する活動を始める。自身もオブジェ作家として活動歴あり。

OBJECT東京展入選 From A The art日本オブジェ部門佳作 日本文化デザイン会議

ETDA展参加など。

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