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前衛芸術で成功した秘密に迫る! 20世紀前半を代表する、アーティスト夫妻の展覧会

  • 2025.3.6

ゾフィー・トイバー=アルプはスイス生まれの芸術家で、テキスタイルデザインから幾何学的模様による絵画や空間、建築まで手掛けた。その夫ジャン・アルプはドイツ生まれ。詩人でもありながら、コラージュやレリーフ、彫刻を制作した人物だ。

二人で時代を切り開いたアーティスト夫妻の偉業に迫る。

本展では20世紀前半を代表するこのアーティスト・カップルの創作とともに、二人がお互いの制作に及ぼした影響やデュオとしての作品にフォーカス。夫婦というパートナーシップがどれほど創作の可能性を広げたのかを紹介している。

1889年に生まれたゾフィーは、スイスとドイツの応用芸術学校(日用品に美術を活かす技術を学ぶ学校)を卒業した後、1915年にジャンと出会い33歳で結婚。テキスタイルデザイナーとしてのキャリアを歩みつつ、色彩理論と幾何学的抽象の研究を重ね、円や直線、多角形が印象的なモチーフを使った作品を発表。家具デザインや建築設計、絵画など多方面で活躍した。

一方、1886年生まれのジャンは、ドイツの芸術家グループ「青騎士」や美術運動ダダの活動に参加。1920年代以降は、シュルレアリスムと抽象とを往来しつつ、偶然生まれるフォルムを用いてコラージュや彫刻などを手がけた。

本展ではゾフィー作品を45点、ジャン作品36点、両者のコラボ作品7点という、かつてない規模で夫妻の作品を紹介。そこから、二人がダダやシュルレアリスム、抽象芸術などの前衛芸術で成功した秘密に迫る。

特にゾフィーは、当時女性も携わることができた応用芸術からキャリアをスタートし、前衛芸術の最前線で活躍するまでになった、いわば女性芸術家のパイオニア。スイスでは紙幣にも描かれるほど有名な存在で、20世紀前半の抽象芸術の作家として、今その評価が高まっている。

夫婦による創作の化学反応はもちろん、当時の女性アーティストの地位や芸術分野のヒエラルキーについても、きっと発見があるはずだ。

互いを刺激し合った、アーティスト・カップル。
訪れた展覧会で偶然出会ったゾフィーとジャン。二人は実に多くの共作を残した。不慮の事故でゾフィーを亡くしたジャンは、ショックのあまり鬱状態で4年間修道院にこもっていたが、そんな彼を触発し元気づけたのも妻の作品だった。

再評価が進む、ゾフィー・トイバー=アルプの多彩な創作活動。
夫ジャンに比べて、日本では紹介される機会の少なかったゾフィーの活動を今回初めて包括的に展示。手帳カバーやズボンなどキャリア初期に手掛けたテキスタイル作品から、絵画や家具など作品の規模が拡大する様子も見応えあり。

ユニークさが際立つ、ジャン・アルプの作品。
有機的なフォルムの彫刻作品が有名なジャンだが、その創作の原点は絵画と詩。従来の手法を無視し偶然のイメージやコラージュ画に関心を向けた彼を、マルセル・デュシャンは「アルプその人がアート」と評価。

INFORMATION

ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ

アーティゾン美術館 6階展示室 東京都中央区京橋1‐7‐2 開催中~6月1日(日)10時~18時(金曜は~ 20時。入館は閉館の30分前まで) 月曜(5/5 は開館)、5/7休 一般2000円ほか※日時指定予約制 TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)

文・山田貴美子

anan 2437号(2025年3月5日発売)より

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