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【ネタバレ】映画『かくしごと』Prime Videoで配信開始!結末を解説。それぞれが隠していた秘密とは?

  • 2025.3.6

コマーシャルやミュージックビデオなどで活躍し、長編映画デビュー作『生きてるだけで、愛。』で注目を集めた映像クリエイター・関根光才が、杏を主演に迎えて制作された映画『かくしごと』。作家・北國浩二の小説『嘘』を原作としたヒューマンドラマだ。

絵本作家の千紗子を杏、千紗子の父・孝蔵を奥田瑛二、千紗子が共に暮らすこととなる少年を中須翔真が演じる。家族として生きようと不器用に手を繋ぎながら生きる3人の姿を通して、家族とは何かを問いかける作品になっている。

『かくしごと』(2024)あらすじ

絵本作家の千紗子(杏)は、長年にわたって絶縁状態だった父・孝蔵(奥田瑛二)の介護のために、仕方なく故郷へと戻ってきた。認知症を患い、千紗子のことも娘と認識できない孝蔵との生活に辟易する日々を送る。千紗子はある日、事故で記憶を失った少年(中須翔真)を助ける。少年の体には無数の虐待の跡が。千紗子は、水難事故で失った息子・純と重ねつつ、「自分は母親だ」と嘘を付き、少年に拓未と名付けて共に暮らし始める。千紗子と孝蔵、拓未の3人はぎこちなくも心を通わせながら、家族としての営みを送っていく。

※以下、ネタバレを含みます。

千紗子の人生と罪悪感からの解放

認知症を患った父・孝蔵の介護のために、しぶしぶ故郷へと戻ってきた千紗子。介護認定をもらい、はやく施設に入ってほしいと言いながら、しぶしぶ面倒を見始める。

千紗子は、父からの期待の重さに耐えきれず、逃げるように故郷を飛び出し、学生時代に授かり婚をしていた。絵本作家として忙しくしながらも懸命に育児に勤しんでいたところ、不運な水難事故により、息子・純を亡くしてしまう。悲しみにくれる千紗子に、孝蔵は厳しい言葉を浴びせ、これが二人にとっての大きなわだかまりとなっていた。

自分のことを娘として認識できなくなった孝蔵とのままならない日々のなかで、千紗子は守る対象となる少年に出会う。少年は犬養洋一という名前で近隣の川で行方不明になっており、本人は記憶を失っていた。少年の身体には激しい虐待の跡があり、洋一の家を訪れた千紗子は、洋一が育ってきた環境の悪さを実感する。

千紗子は少年に拓未という名前を与え、失った息子・純と重ねつつ共に暮らし始める。母と息子として拓未と暮らすなかで、千紗子は自身と父親の関係についても捉え直すことができるように。3人はいびつながらも、家族としての生活を送るようになっていく。

父の期待に応えられなかったこと、自身の未熟さから息子・純を亡くしたこと。千紗子は罪悪感を抱えながら人生を送ってきた。そんな彼女の罪悪感は、拓未との生活によって少しずつ溶けていく。母親として拓未に見せる表情は穏やかなもので、彼女にとって拓未との生活がどれだけ大切だったかがひしひしと伝わってくる。

3人の幸せな日々

病状が悪化し、財布がないと騒いで千紗子を盗人扱いしたり、やかんを火にかけっぱなしにしたりする孝蔵。千紗子は振り回されながらも、主治医・亀田(酒向芳)の「真面目すぎる性格が仇となって、甘えとして症状が出るんだ」という言葉を受けて、孝蔵への目線が変化していく。

千紗子は孝蔵、拓未とともに釣りに出かけたり、粘土遊びをしたりと、これまでできなかった三世代の家族としての楽しみを味わいはじめる。幼いころに自分が父とできなかった遊びや、孫として可愛がってもらうことができなかった息子・純の存在など、わだかまりになっていた後悔を少しずつ取り戻していく。

結末はどうなる? それぞれが抱える「かくしごと」とは

家族として幸せな生活を送る日々は突如として壊される。拓未の本当の父親である犬養安雄(安藤政信)が、3人が暮らす家を訪れ、1億円で拓未を売ってやると千紗子に暴力をふるいはじめる。千紗子を助けるため、拓未は安雄の背中に短刀を突き刺す。血を吐き出して、倒れる安雄。千紗子は短刀を拾い安雄の胸に突き立てて、とどめを刺すのだった。千紗子は、息子を守りたいという一心で、狂気すらも感じられる母親の表情をしていた。

拓未を庇って自身が殺したと証言し、殺人罪で裁判を受ける千紗子。拓未を自分の息子だと洗脳していたのではという疑いもかけられる。拓未は自分も証言すると、裁判に出席。そこで拓未は自分が安雄を殺したことを告白する。そして彼は、自分の名前は犬養洋一であること、でも自分の母親は千紗子だと語る。その言葉を聞いた千紗子の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちる。

映画のタイトルにもなっている『かくしごと』。千紗子は、拓未に対して「拓未は自分の息子ではない」というかくしごとをしていた。だが、拓未は記憶が戻っていて、千紗子に対して「千紗子が本当の母親でないことを分かっている」ことをかくしていたのだ。

千紗子と拓未の親子関係は、千紗子だけではなく互いのかくしごとによって成立していた。美しく切り取られた日本の夏の風景のなかで、描かれる擬似家族の生活。いびつでも、犯罪だったとしても、そこには幸せな家族が確かに存在していた。

一方、父・孝蔵もずっと内に秘めていたかくしごとがあった。それは、千紗子を妻と勘違いした孝蔵が本心をこぼしたことで明かされる。千紗子にとって、父親は頑固で厳しい存在だったが、初めて父の弱々しい一面を見ることとなった。主治医・亀田は、真面目で失敗を簡単に認められない性格の人間にとって「認知症は救い」だと語ったが、孝蔵は認知症によって、そして千紗子と拓未との生活の中で少しずつ変化していったことによって、心の底の“かくしごと”を吐露することができた。

安雄は血のつながりのない拓未に虐待をしていた。しかし、拓未と何の関わりもない千紗子は、拓未と親子として心を通じ合わせることができた。そして血のつながりのある千紗子と孝蔵は長年に渡ってすれ違い、拓未という存在がいなければまだわだかまりを残したままだったかもしれない。この物語は、家族とは、血のつながりとはを見ているものに問い直しているのだ。

(c)2024「かくしごと」製作委員会

※2024 年6月7日時点の情報です。

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