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津波被害は地形によって変わる? 南海トラフ地震での津波予想についても解説

  • 2025.3.5

日本では大地震に伴い、たびたび大きな津波被害が発生しています。

津波はどの地点でも同じ高さになるのではなく、地点によって大きく異なるのが特徴です。これは津波が地形の影響を受けやすいという特性があるためです。

今すぐ発生してもおかしくないといわれている南海トラフ地震も、広範囲で大規模な津波が予想されています。津波災害に備えるためにも、どのような場所で被害が拡大しやすいかを知っておくことが大切です。

この記事では、地形によって津波被害が変わる理由や特に危険な場所を紹介します。

津波のメカニズム

津波は、地震によって海底が動いて、その上の海の水を押し上げることによって起こる現象です。

海底の下の浅いところで大きな地震が発生すると断層が動き、海底の地盤も隆起したり、沈降したりします。この海底の変形によって海面も変動し、津波となって四方八方に広がっていく仕組みです。

規模の大きな地震では海底の変動量が大きくなり、それに連動する形で海面の変動力も大きくなり、大きな津波をもたらします。

ちなみに、津波は地震以外にも火山噴火や海底地すべり、土砂災害などによって発生する場合もあります。

津波の周期について

津波は、通常、海で発生している波に比べて「周期が長い」という特徴があります。
周期とは、波の山がやってきたあと、次の山がやってくるまでの時間のことです。
周期が長いほど津波の押しが長時間にわたって継続するため、陸上の奥深くに侵入したり、川を数kmにわたって遡上したりします。

一般的な海の波の周期は長いものでも数十秒程度であるのに対し、津波の周期は数十分にも及びます。東日本大震災では、北上川や阿武隈川、名取川などを津波が逆流し、川沿いに大きな被害をもたらしましたが、それはこうした津波の特徴によるものです。

また、周期の長い波の特徴として「浅海効果」と呼ばれるものがあります。これは津波の速度は水深が深い場所ほど速く、水深が浅い場所ほど遅くなりますが、津波の高さは水深が深いほど低く、水深が浅いほど高くなるというものです。津波の高さが海岸に近づくと急に高くなり、沿岸部を襲うのはこのためです。

津波被害が大きくなりやすい場所

津波被害が大きくなりやすい場所として、湾奥・岬の先端・リアス式海岸が挙げられます。
それぞれの場所で津波被害が大きくなりやすい理由を解説します。

湾奥

湾奥は津波のエネルギーが集中しやすく津波が高くなりやすい特徴があります。

湾の形には、「V字型」「U字型」「直線海岸」「袋型」の4種類があります。
津波が高くなりやすい湾は、「V字型>U字型>直線海岸>袋型」の順です。

V字型の湾は奥に行くほど狭くなる構造であるため、特に湾奥でエネルギーが集中しやすく、津波被害が大きくなりやすい特徴があります。

岬の先端

岬の先端では、津波の波が岬の両側から回り込んで先端に集まることで、波が重なり合って高さが増します。

また、岬の先端付近で水深が急激に浅くなるため、浅海効果によって津波がさらに高くなります。

リアス式海岸

リアス式海岸とは、せまい湾や岬が複雑に入り込んだ海岸線のことです。青森から宮城にかけての三陸海岸、三重から和歌山にかけての紀伊半島、愛媛の宇和海沿岸などが挙げられます。

リアス式海岸は津波が高くなりやすい湾や岬が連続し、複雑な地形をしているため、局所的に津波が高くなりやすい特徴があります。

3.11での事例

東日本大震災では、リアス式海岸で特に大きな津波被害が発生しました。

宮城県のリアス式海岸に位置する市町村では、死者・行方不明者はあわせて7,107人という大きな被害となりました。中でも最も被害が大きかった石巻市では、死者・行方不明者が約4,000人にのぼりました。

また、リアス式海岸に位置する岩手県大船渡市三陸町綾里湾で40.1mという津波の遡上高を記録しています。

リアス式海岸では津波の遡上高が高いため、強い引き波が発生しやすいのも特徴です。岩手県や宮城県のリアス式海岸では、押し波と引き波によって海岸防災林が壊滅的なダメージを受けました。

一方、リアス式海岸以外の海岸沿いでも津波被害は多く発生しており、海岸の形状に関係なく津波が発生したら早急な避難が必要です。

南海トラフでの津波予想

南海トラフ巨大地震では九州から関東の沿岸にかけて、広範囲に津波被害が予想されています。

九州から四国、近畿、東海にかけて広い範囲で10mを超える津波が予想されています。

中でも、高知県の土佐清水市と黒潮町では最大34mの津波高が予想されています。土佐清水市や黒潮町で高い津波が予想されているのはリアス式海岸であり、津波が高くなりやすい地形であるためです。

海岸沿いに住まいや職場がある人は、自分が普段生活しているところでどれくらいの津波高が予想されているかを、自治体のハザードマップで確認しておきましょう。

避難場所を確認しておこう

津波が発生したら、できるだけ早く避難場所に避難する必要があります。そのためにも、事前に避難場所を把握しておき、避難場所までの避難経路も調べておくことが大切です。

避難場所は、国土交通省の重ねるハザードマップや自治体が発行しているハザードマップで確認できます。南海トラフ地震では、地震発生からわずか2~3分で津波が到達すると予想されているところもあります。

いざというときに迅速な避難ができるように、普段から避難場所や避難経路の確認をして備えましょう。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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