1. トップ
  2. 恋愛
  3. 『ノー・アザー・ランド』が長編ドキュメンタリー映画賞受賞。パレスチナ人とイスラエル人による共同監督作【アカデミー賞2025】

『ノー・アザー・ランド』が長編ドキュメンタリー映画賞受賞。パレスチナ人とイスラエル人による共同監督作【アカデミー賞2025】

  • 2025.3.3
97th Annual Oscars - Press Room

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』第97回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞を獲得。パレスチナ映画として初の受賞となった。

同作はイスラエル人とパレスチナ人、計4人の共同監督によって製作された。イスラエル軍の占領下にあるヨルダン川西岸地区で、パレスチナ人の村人たちが土地を追われる様子を2023年10月までの4年間にわたり記録。異なるバックグラウンドを持つ監督同士の関わり合いとともに映し出した。

パレスチナ人で本作の共同監督を務めたバーセル・アドラーは受賞後壇上で、「2カ月前に娘が産まれ、父になりました。娘には今私が生きているような、入植者による暴力、家屋の破壊、強制移住に常に怯える暮らしを送ってほしくありません」「本作は私たちが何十年も耐え、今日も抵抗し続けている厳しい現実を映しており、パレスチナの人々への不正義や民族浄化を止めるために具体的な行動を起こすよう、世界に呼びかけます」と、力強い眼差しで観客に訴えた。

2025年2月、パレスチナ・ガザ地区の様子。この地域はイスラエルの空爆により大きな破壊を受け、停戦後も困難な状況が続いている。
Palestinians struggle to survive amid rubble in Jabalia refugee camp after Gaza ceasefire2025年2月、パレスチナ・ガザ地区の様子。この地域はイスラエルの空爆により大きな破壊を受け、停戦後も困難な状況が続いている。

イスラエル人のユバル・アブラハーム監督は、「バーセルのことは兄弟のように思っているけれど、私たちは平等ではない」とし、「私は民法のもとで自由ですが、バーセルは軍法のもとに生きていて、選択肢がないまま生活が破壊されています」と置かれた状況の違いを明確にした。続けて、「この映画は、パレスチナ人とイスラエル人がともに製作しました。2つの声が合わされば、それはより強固なものとなるからです」「バーセルの人々(パレスチナ)が自由と安全を手に入れて初めて、私たち(イスラエル)もそれを手に入れることができます。まだ遅くはありません」と締め括った。

同作は2024年ベルリン国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞と観客賞を受賞。世界的に高い評価を受けている一方、米国での配給が未定のままだ。アブラハーム監督はその理由を「完全に政治的な問題」と語っている。日本では2月21日に全国公開を迎えた。

2023年10月7日以降、深刻化の一途を辿ったイスラエルによるパレスチナ侵攻によって、ガザ地区は廃墟と化し、少なくとも7万人以上のパレスチナ人が虐殺されたと推定される。現在は1月19日から6週間の停戦期間とされているが、依然イスラエルはガザへの援助物資搬入を停止するなど、制圧を続けている。家屋や街を破壊され、多くを奪われたパレスチナの人々にとって困難な状況は変わらない。

アブラハーム監督は今回のスピーチで、「パレスチナとイスラエル、両国の市民の権利が尊重される解決策があるはずです」と述べている。

Text: Nanami Kobayashi

READ MORE

第97回アカデミー賞(2025年)の完全ガイド

元記事で読む
の記事をもっとみる