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熟年離婚は新しい人生の大チャンス…和田秀樹さんが「2人きりが耐えられないなら早々に離婚を」と勧めるワケ」

  • 2025.3.3

60歳から幸せに過ごすために、どのような人間関係を心掛けるといいか。医師の和田秀樹さんは「仲のよくない夫婦はどうにもならないと思ったら潔く離婚してしまうといい。60を過ぎたとしても先は長いから、その後に意外といいパートナーが見つかる可能性は決して低くない」という――。

※本稿は、和田秀樹『60歳からの「手抜き」の極意』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

公園を歩く老夫婦
※写真はイメージです
60歳を迎える前に人間関係の断捨離を

60歳を迎える頃にまず考えたいこと。それが、人間関係の断捨離です。私は物の断捨離はすすめませんが、人間関係こそ是非それをしてほしいと考えています。

親戚関係、親子関係、友人関係、その他、多くの義理やしがらみが絡まっている人間関係があるかもしれませんが、基本はストレスになるものはなるべく遠ざけるようにしたいものです。

中でもいちばん難しいのが家族関係、そしてまず見直しをしたいのが夫婦関係です。

子どもが大きくなって手が離れると父親と母親という役割から離れ、夫婦としての関係に戻ります。勤務スタイルの変化などによって、家の中で過ごす時間も増えるでしょう。

いつも一緒にいる方が落ち着く、楽しいというのなら問題ないのですが、そうとも限らないはずです。

この先、どんな関係でいるのがお互いに心地いいか、どのようなスタイルで暮らしてゆくのが好ましい老後になるのかを、考え直してみる時です。

2人きりになったらもう我慢する必要はない

まず、大きく分けて仲のいい夫婦とそうでもない夫婦がいます。そうでもない夫婦の場合から考えてみましょう。

子どもが家を出て夫婦2人きりの生活になると、それまでの生活と家の中の空気ががらりと変わり、一気に気が重くなるという人がいます。とくに女性の方が、ずっと夫の顔を見て暮らすのが気が重い、耐えられないということが多いようです。

家で喧嘩する老夫婦
※写真はイメージです

どうにも生理的に嫌だという場合には、いわゆる「夫源病」になります。正式な病名ではありませんが、夫が原因で感じるストレスが溜まった結果、情緒不安定になったり、頭痛やめまい、動悸、不眠など体にもさまざまな症状が現れます。

男性は仕事で外に出ていることが多く、子どもがいる場合は女性は子育てに一生懸命で、夫のことはあまり見ていなかったのでしょう。

けれど、四六時中顔を合わせて一緒にいるようになったら、こんなに嫌な人だと思わなかった、一緒にいるのは苦痛だという話はよく聞くものです。子どもが大きくなるまではと我慢していたけれど、2人きりになったらもう我慢する必要はないということもあります。

本当に顔も見たくないとなったら、よくて別居、通常は離婚を考えることになるでしょう。

最高のパートナーと出会うチャンスは離婚から

もちろん、離婚は大変です。手続きや話し合いにエネルギーも使います。けれどもひと昔前と違って、今や、珍しいことでも恥ずかしいことでもありません。どうにもならないと思ったら潔く離婚してしまうのもいいと思います。

60を過ぎたとしても先は長いのです。この先の長い人生を明るく生きるためには、「離婚はいけないこと」と重く考えなくていいのではないでしょうか。

気の合う人生のパートナーを探すチャンスは、今の時代、60代以上でも大いにあります。この先、意外といいパートナーが見つかる可能性は決して低くないのです。

私の医者友だちにも、2回離婚した後、60歳過ぎて同窓会で再会した女性と結婚した人がいて、とても楽しそうに過ごしています。

今時、このような話もままあることでしょう。男性も女性も離婚する人が増えれば、その分新しいパートナーと出会う確率も多くなります。今までぱっとしない人生だったとしても、一気に幸せになる可能性も広がります。

人間、いつ、最高のパートナーと出会うチャンスが訪れるかわかりません。その時に、最も邪魔になるのが婚姻関係です。新しいパートナーと出会ってから離婚するとなると、風当たりも強くなりそうです。

ですから、これは無理だと思ったら早々に熟年離婚を提案するのもいいのではないでしょうか。お互いのためにもなります。

きっちり離婚した方がその後の人生設計が立てやすくなるでしょう。もし、マンションを持っているとしたら、売却して得た金額を半分に分けて、もう大きな家はいらないでしょうからそれぞれワンルームを探すのもありです。

きちんと財産分与や年金分与もして、生活に足りない分は働けばいい。今の時代、年齢が高くても月に10万、20万円稼げる仕事はいくらでもあるのです。

つかず離れず婚のすすめ

離婚したいほどではないけれど、一緒にいると疲れてしまう夫婦の場合は、私が以前から提唱しているつかず離れず婚がいいのではないでしょうか。同じ家の中で基本別々の生活をするというものなので、経済面でも安全面でも別居するよりメリットは大きいはずです。

昼間は基本、別々に生活をします。会社勤めや子育てをしていた時と同様に、お互いそれぞれの都合で自由に過ごします。それぞれ別の趣味を持って、とくに許可を得ることもなく、相談することもなく、自由に外出します。

それぞれ別に個室を持って、寝室も別にすれば、生活リズムを干渉し合うこともなく、気ままに生活できます。ルームシェアくらいの気持ちでいるといいのではないでしょうか。共用部分の掃除をどうするかなど、最低限のルールを決めておくとスムーズです。

食事は別々に摂ることにすれば、生活のリズムを合わせる負担もなく気楽です。夫の栄養状態が気になるかもしれませんが、弁当でも惣菜でもデリバリーでもなんでもあります。

そうやって普段、別々の生活をしていると、たまには家で一緒にお酒を飲みながら食事をするのも、新鮮で悪くないということになるかもしれません。

愛ゆえの押しつけと我慢は大なり小なりストレスに

結婚して時間が経っても仲がよく、一緒に食事をして、旅行をして、楽しい時間を過ごすことができるまあまあラブラブな夫婦は、もちろんこの先も幸せに過ごせるでしょう。

けれども、いいことばかりかというとそうでもなく、ひとつ、仲がいいゆえの面倒が起こり得るのです。

たとえば、夫が高血圧や糖尿病と診断されたとします。すると、愛するがゆえに塩分過多にならないようにと夫から醤油を取り上げたり、味がしないほど薄いものを食べさせたり、トンカツを禁止にしたりするのです。

夫の方も、そんな食生活に満足できなくても、愛情があるからやってくれているのだとわかるので、なかなか文句が言えません。愛ゆえではありますが、押しつけと我慢は大なり小なりストレスを生んでしまいます。

せっかく仲がいいのに、食と健康をめぐって意見が合わなくなり、小競り合いが起きてしまってはもったいないことでしょう。

和田秀樹『60歳からの「手抜き」の極意』(河出書房新社)
和田秀樹『60歳からの「手抜き」の極意』(河出書房新社)

ある程度の年齢まできたら、残りの人生、基本は好きなものを食べた方が心身のためになります。たとえば、私は醤油の味が好きなので塩鮭にも醤油をかけます。もちろん、塩を抜くことができれば抜くようにはしますが、とにかく醤油です。

もし、醤油を取り上げられてしまったら、人生の大きな楽しみがなくなった気がしてストレスが生まれるでしょう。醤油のない人生を考えると、この先元気に生きていける自信がなくなってしまうのです。

愛情があるからこそ長生きしてほしい、健康でいてほしいと本心から願っているのはわかるのですが、私と同じように、食べることが人生の大きな楽しみと考えている人にとっては、ストレスになりかねません。

何も言わずに我慢するより、「人生のささやかで大切な楽しみだからここまでは食べるのを許してほしい」とはっきり言ってもいいのではないでしょうか。

和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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