●お雛様の飾り方、関東と関西では違います
3月3日は「雛祭り」。「桃の節句」ともいわれ、女の子の健やかな成長を願います。この儀式も古代中国の風習が日本に伝わり、時代とともに変化して今日に至っています。
男雛、女雛の他に三人官女や五人囃子など、華やかなひな壇が登場したのは江戸時代と言われますが、その飾り方が京都を中心にした関西と、関東では違うのをご存知でしょうか。
関西では男雛は女雛の左に飾りますが、関東は逆です。どうしてこのようになったのでしょう。
日本では一部の東洋思想の影響を受けて、明治時代になるまでは西洋と反対に「左」が「右」より上位とされてきました。そのため、壇上の男雛は女雛の左に飾られていました。しかし西洋の基準では、「右」が「左」より上位。例えば、キリスト教徒は右手を聖書の上に置き、イスラム教徒にとって右手は“清浄の手”ですが左手は“不浄の手”です。また右を表す「right」には「正しい」や「権利」という意味もあるように、西洋では「右」が絶対なのです。
そのため明治になると、開国により西洋の基準に合わせて日本でも「右」を上位とし、雛人形のモデルである天皇、皇后両陛下がお立ちになる位置も、それまでと反対になりました。しかし長らく都があった京都を中心にした関西では、今でも伝統を受け継いだ飾り方をしているので、「左」が上位なのです。
国際化のために新ルールを採用した関東と、伝統を踏襲する関西(京都)。その考え方の違いから生まれた飾り方の違いですが、いずれにしろ平安貴族の雅な文化を今に伝える雛人形は、ぜひ飾ってほしいものです。
文=明石伸子
明石伸子(あかしのぶこ)
NPO法人日本マナー・プロトコール協会 理事長
青山学院大学卒業後、日本航空室乗務員、会社役員秘書などを経て独立。2003年NPO法人日本マナー・プロトコール協会を設立し、文部科学省後援「マナー・プロトコール検定」や「コミュニケーションマナー検定」の開発、運営を実施。講演や研修などを通じて、それらの啓発・普及に力を注いでいる。
その他の役職:NHK経営委員、一般社団法人日本ホテル・レストランサービス技能協会理事。学習院女子大学非常勤講師など(2025年1月現在)。
主な著書、監修:「間違いやすい順 社会人のマナー大全」(宝島社)、「この1冊でOK!一生使えるマナーと作法」(ナツメ社)、その他、連載多数。
■日本マナー・プロトコール協会
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■マナー・プロトコール検定
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