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事実 or フィクション?『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』をジェームズ・マンゴールド監督がファクトチェック

  • 2025.3.3
Timothee Chalamet is seen on location for the Bob Dylan biopic titled 'A Complete Unknown'

伝説のシンガーボブ・ディランの半生を描く『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』。『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005)で、ジョニー・キャッシュの半生を描いたジェームズ・マンゴールド監督がメガホンを取った本作は、1960年代初頭のニューヨークの音楽シーンが舞台。ミネソタで生まれ育った19歳の無名ミュージシャン、ボブ・ディランがフォーク・シンガーとしてコンサートホールやチャートの寵児となり、その歌と神秘性で世界的なセンセーションを巻き起こしつつ、1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルでの画期的なエレクトリック・ロックンロール・パフォーマンスで頂点を極めるまでを綴る。

エンターテイメント・ウィークリー』のインタビューで、マンゴールド監督は「疑似ドキュメンタリーにせず、映画を作りたかった。だから、手持ちカメラをもって俳優を追いかけて走るつもりはなかった。ドキュメンタリーでは見ることのできないようなプライベートな瞬間や、公になっている瞬間の合間を見せたかった」と語る。では、映画に登場するエピソードは実際に起きた出来事なのか、その真偽を明かした。

1. ボブ・ディランは当初からフォーク・シンガーと分類されることに抵抗:事実

実際に映画に登場する会話はあったかどうかは不明だが、ボブはラジオのインタビューで、「自分をフォークミュージシャンだとは思っていない」と発言していたそうだ。

2. シルヴィ・ルッソはディランの最初の恋人だった:事実でありフィクション

エル・ファニング演じるシルヴィは架空のキャラクターだが、ボブの恋人で、アルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』のジャケットにも登場するスージー・ロトロをモデルにしているのは事実。ボブが、2009年に回顧録『A Freewheelin' Time: A Memoir of Greenwich Village in the Sixties(原題)』を出版するまで、関係を公に語っていなかったスージーに敬意を表し、役名を変更するよう求めたという。

1963年にリリースされた2作目のスタジオ・アルバム『The Freewheelin' Bob Dylan』。
The cover for the Bob Dylan album 'The Freewheelin' 1963年にリリースされた2作目のスタジオ・アルバム『The Freewheelin' Bob Dylan』。

3. ボブとシルヴィ/スージーは初デートで映画『情熱の航路』を見た:フィクション

「ボブは映画マニアだけど、これは創作です」と監督。ボブは黒澤明、ヴィム・ヴェンダース、ミュージカル映画まで、さまざまな作品を会話に引用するほどの映画通だそう。『情熱の航路』を選んだのは、自分自身を再構築、人生をやり直すというテーマが描かれているからで、当時のボブの心境を表してのことだという。

4. ボブとジョニー・キャッシュとの文通:100%事実

監督はボブのマネージャーであるジェフ・ローゼンに実存する手紙を見せてもらい、セリフにも引用した。

ボブは1969年にTV番組「ジョニー・キャッシュ・ショー」に出演している。
THE JOHNNY CASH SHOW - Shoot Date: May 1, 1969. ボブは1969年にTV番組「ジョニー・キャッシュ・ショー」に出演している。

5. ピート・シーガーのテレビ番組にボブが出演:フィクション

ピート・シーガーが、「Rainbow Quest」という長寿音楽番組を持っていたのは事実だが、映像は数本しか残されておらず、ボブ出演の事実はないとみられる。また映画の中でこの番組にゲスト出演したジェシー・モフェットというギタリストは実在しない。

6. 1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルでエレクトリック・ロックンロール・パフォーマンスを勧めたのはジョニー・キャッシュ:不明

実際のやり取りは不明だが、当時ジョニーは、芸術的直感に忠実であり続けるようボブを励まし続けていたそう。しかし、この舞台で殴り合いが起きたことや、観客とトラブルになったのは事実だ。

Text: Tae Terai

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