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20代息子3人が完全パラサイトで子供部屋おじさん予備軍…世帯年収1000万円夫婦の老後クライシス"2つの元凶"

  • 2025.3.2

夫婦共働きで世帯年収は1000万円を超える。家計も黒字で投資もしていて特に問題ないように見えるが、大きな課題が2つ。老後資金のためにしている投信つみたてが実は借金を生み出していた。加えて、自宅には20代の3人の息子が住み、正社員として働いているのに家に一切お金を入れない。家計再生コンサルタントでFPの横山光昭さんが投資の方法や家計の見直しをして夫婦にアドバイスしたこととは――。

札束
※写真はイメージです
毎月10万円の投資をクレカで決済

今回相談に見えたのは、神奈川県にお住まいの井出コウジさん(仮名・52歳・会社員)とユウコさん(仮名・48歳・医療従事者)夫婦。会社員勤務の20代の息子3人(29、27、25歳)と、一家5人で住んでいます。

ユウコさんは、大のポイ活好き。当初は必要な分だけクレカで決済するよう心掛けていたものの、次第にポイント重視で買い物をするようになり、気づけばクレカの決済額が肥大化。きっかけは、「クレカつみたて」でした。

「昨年、もともと興味のあったNISAが、10万円までクレカでつみたてできるようになったことを知り、老後資金を貯めるためにNISAのつみたて投資枠を上限MAXの10万円に設定し、“クレカつみたて”を始めました。10万円を毎月つみたてれば、ポイントがいっぱい貯まるし、他の支払いをそのカードに集約すればゴールドカードの年会費も無料になるから。

でも、そのせいか分からないんですが、だんだん貯金額が減ってきて、月によってはクレカ利用額の支払いすら厳しいことも……。支払いピンチの時は、部分的にショッピングの支払いを分割払いにしたり、支払いのためにキャッシングしたりして乗り切っていました」

と、ユウコさんは話します。続いて、こう尋ねました。

「ポイントは貯まっているので得しているとは思うんですが、こういう使い方で大丈夫でしょうか?」

井出さんの家計状況を詳しく説明すると、世帯の手取り収入は約67万円(夫40万円、妻27万円)。住宅ローン15万円などの支出後に、毎月10万円程度黒字になっていたことから、10万円をすべてつみたて投資に充当。しかし、月によっては10万円を残せないことも度々ありました。そんな時は200万円程度の貯金から補充してクレカつみたてを続けていたのですが、夫婦ともにボーナスがないため、家電の買い替えなど臨時出費が続いたときは、手数料が発生する分割払いやキャッシングに頼ってしまうことも少なくなかったそうです。

家計に見合わないクレカつみたては得? 損?

結局、井出さんは得しているのか? ポイ活は成功しているといえるのでしょうか? 答えはノー。

確かに、クレカつみたては、つみたて金額に応じて最大3%のポイントがつくこともあります。仮に3%で、NISAで月10万円ずつつみたてている場合、それだけで毎月3000ポイント、年間3万6000ポイントがつく計算です。

井出さんは、「ゴールドカードなら、年間100万円以上の利用で翌年以降の年会費が無料になるから、ますますお得」だと考えていました。

しかしその反面、支払いが厳しい月は、キャッシングやリボ払いなどをして、本来払わなくてもいい手数料や金利が発生しています。

クレジットカードとスマートフォン
※写真はイメージです

キャッシングした場合、一般的な金利は15~18%ですから、例えば年率18.0%で10万円キャッシングして、毎月5000円ずつ返済をしたばあのシミュレーションでは、利息は2万円弱は発生します。また、今はあとから分割払いやリボ払いに設定することができる、いわゆる「あとからリボ」「あとから分割」ですが、リボ払いの場合、実質年利15%程度の手数料がかかることが一般的ですので、やはり利息は高めです。井出さんも繰り返し分割払いやキャッシングをしてきたので、高い手数料を払ってきたことになります。

中には、「あとからリボ」を使うことで、1000単位のポイントが還元されるキャンペーンを実施するカードもあります。クレカつみたての年間3万6000ポイントとあわせて、年間4万ポイント近くゲットすると、確かに一見「とてもお得」に感じられますよね。しかし、それ以上に及ぶ手数料や金利を払っていたら、マイナスになります。

加えて、ポイント目当てで、本来必要ないものまで買っていたらなおさらです。

いずれも、リボ払いやキャッシングを利用するたびに電卓を叩いて、入ってくるポイント数と出ていく手数料を比較すれば、損得が分かります。

しかし、人は目の前の支払いを乗り切らなければと焦っている時は、電卓を叩いている余裕を失いがち。また、例えば来月10万円だった支払い額を、毎月2万円の返済額でリボ払いに設定した場合、「来月の支払額が10万円から2万円に減った」と、表面的な支払額しか見えていない。2万円のうち何%が手数料で、元本にどのくらい充当されるのか、内訳まで把握できている人は少ないのではないでしょうか。

一方で、「投資の利益が出ているなら、プラスかトントンになるのでは?」という考えもあるかもしれません。ですが、投資は長期間つみたてて利益を出していくもの。一年程度の投資期間では、マイナスに転じる恐れもあります。

貯められない家計は子供のマネー管理も苦手

というわけで、井出さんには、キャッシングや分割払いに頼らなくて済むように、家計を見直すことを提案。メタボ化した家計をスリムにし、毎月のつみたて額を減らすことにしました。

家計の見直しにあたって、最初にメスを入れたのは、食費。井出家では3人のお子さんは社会人なので、基本は各自好きなものを食べたり、作ったりするスタイルですが、「○○買っといて」と言われるとユウコさんは言われるがまま、食材を買い与えていました。

そこで、食費全体の予算を9万5000円と決めて、その枠で収まらないほど高い食材を要求されたら、各々の給料から出してもらうことに。それで食費は2万5000円を削ることができ、日用品や小遣いなどもカットし、合計4万円削減。約67万円の手取り月収に対し、約15万円が残る健全家計になりました。

【図表1】メタボ家計BEFORE→AFTER

働いて収入を得ているお子さんたちから家に生活費を入れてもらえれば、なお家計は安定するでしょう。ですが、井出家はそうはしていない。なぜでしょうか。

私が見てきたケースでは、家計管理が苦手な方は、お金のことを子供に強く言えない傾向があります。自分が貯められていないのに、子供たちから生活費をもらうとさらに使ってしまうのではないか、といった不安や、子供が将来に使う資金を搾取しているのではないかという後ろめたさを持つ方もいるようです。

そうした気持ちは理解できますが、井出家の子供は3人、いずれも正社員として働いているので、家賃や食費などとして数万円を入れてもらってもいいはずです。現状はパラサイト状態と言ってよく、しっかり独立してもらわないと、子供部屋おじさんになってしまうリスクもあります。

ボーナスなし世帯は投資より貯金を多めに

さて、家計のスリム化で生まれた月の余剰金15万円。これを、貯金とNISAでどう分割するか。結論として、特別支出用貯金に10万円、NISAに5万円という形で落ち着きました。

相談を受けた時、特別支出に備えた貯金は現状200万円あまりありましたが、ボーナスがないため減る一方で、補填できていない状態でした。そこで、特別支出用の貯金をするにあたり、その予算をしっかり把握する作業もしてもらいました。

具体的には、車検代、家電の買い替え代、旅行代など年間の特別支出を洗い出し、それらで消費してもなお、緊急事態に備えられる額として、毎月10万円を貯金してもらうことに。

その後数カ月経ち、ポイ活目当ての爆買いも落ち着いてきました。今後は、反動が出ないようペースを維持することを目標にしています。

ポイ活の本質は家計の支出を減らすこと

改めて、今回のケースを振り返ると、問題点は2点。一つは、投資をクレカで決済し、それを“あとから分割”で払うこと。

本来、金融商品を「後払い」すること自体、なじみのないこと。まるで高価な洋服を買って後からカードの請求がきて支払いが大変だと思うのと同じ感覚で、クレカで金融商品を買えるだけ買って、請求がきたら支払いに苦労する。家計に見合っていない投資ですよね。

投資自体は慎重を期した上で「実践」することは悪いことではありませんが、クレカ払いで捻出していることは決してほめられたことではありません。ましてや、クレカつみたてに伴い、手数料や金利が発生するのは元も子もない。

横山 光昭『月3000円からはじめる新NISA超入門』(アスコム)
横山 光昭『月3000円からはじめる新NISA超入門』(アスコム)

まずは家計と向き合い、家計から出せる分を投資に出すべきです。金融会社が「クレカつみたてはポイント貯まる」とPRすればするほど、井出さんのようにタガが外れた使い方をするケースが出てきます。その裏で、犠牲になっている部分が見えづらくなることを、私は懸念しています。

もう一つの問題点は、ポイ活の本質を見失っていたことです。

「○○円以上でポイント還元率がアップ」という宣伝文句を見て、「今日はまとめ買いしよう!」と、必要以上に買ってしまうと、本来貯めるべきお金が貯まりません。また、貯まったポイントも、そのポイントで必要でないものまで買っていたらポイ活を家計にうまく還元できていないことになります。ポイ活の理想形は、必要なものを必要な量だけ買って、ポイントが貯まったら、それも必要なものにしか使わない。その結果、食費など家計の支出を減らすことです。

横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。

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