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新聞紙がルックに。スキャパレリ発案とされる、身近な読み物のファッション化

  • 2025.3.2

お気づきの方もいるかもしれないが、シーズンや都市を問わず、度々ランウェイに登場するモチーフ兼“素材”がある。それは、私たちにも馴染み深い「新聞紙」だ。

アイテム自体に使用されることもあれば、小道具の1つとして活用されることもある新聞紙は、現在開催中の2025-26年秋冬コレクションでも出現。エミリア ウィックステッドEMILIA WICKSTEAD)のモデルたちは『The Wickstead Times』と題された架空の新聞を小脇に抱えランウェイを歩き、昨シーズン、ステラ マッカートニーSTELLA McCARTNEY)も同じように、自身の名にちなんだ『The Stella Times』という一紙をショーで披露したのも記憶に新しい。そして2024年は2024年で、マチュー・ブレイジーボッテガ・ヴェネタBOTTEGA VENETA)の春夏コレクションで、ヴィンテージ風のレザー製新聞をアクセサリーとして起用。同じ素材でハンドバッグまで何点か製作した。

エミリア ウィックステッド 2025-26年秋冬コレクションより。
photo: Daniele Oberrauch / Gorunway.comエミリア ウィックステッド 2025-26年秋冬コレクションより。

ミラノや世界中の人々のリアルな着こなしに魅了され、それぞれのコーデに含まれるニュアンスを研究し、コレクションに反映させていると過去に語ったブレイジーのショーでは、折り畳んだ新聞紙や花束、ショッピングバッグを持ち、服があふれんばかりに詰め込まれたトートバッグやキャリーオールを提げているモデルが多い。ミウッチャ・プラダミュウミュウMIU MIU)の2024年春夏コレクションで、同じく荷物を無造作に詰め込んだハンドバッグを送り出した。こういったスタイリングは、ランウェイを現実世界とはかけ離れた“幻想”から一気に身近なものに感じさせてくれる。ファスナーが閉まらないほど荷物が入ったバッグや新聞を片手に闊歩するモデルたちには、どこか親近感が湧く。ハードルが高そうなランウェイルックを、「自分の手の届く範囲のコーデ」に一瞬にして変身させてくれるのだ。

ディオール 2000-01年秋冬コレクションより。
ディオール 2000-01年秋冬コレクションより。

新聞紙を最初にファッションに取り入れたのは、前衛的なデザインで名を馳せたエルザ・スキャパレリだと言われている。1935-36年秋冬コレクションで、スキャパレリSCHIAPARELLI)は自分や自身の作品に関する新聞記事の切り抜きでプリントを作り、プレタポルテのアイテムやアクセサリーに使用。ただのショー用の小道具ではなく、モデルが纏うルックそのものを新聞紙にインスパイアされた生地から仕立てたあたりが、いかにも彼女らしい。それから約70年後、スキャパレリと同じくファッション界の異端児的な存在であるジョン・ガリアーノJOHN GALLIANO)が、当時クリエイティブ・ディレクターを務めていたディオールDIOR)の2000-01年秋冬コレクションで新聞を柄にするアイデアを再解釈。『The Christian Dior Daily』と題した新聞を作成し、あらゆるルックに落とし込んだ。中でも最も有名なのは、『セックス・アンド・ザ・シティ』でサラ・ジェシカ・パーカー演じるキャリー・ブラッドショーが着用したドレスだろう。ガリアーノはこのアイデアに何度も立ち返り、ディオールでも、自身の名を冠したブランドでも、ブリーフ型水着からデニム、バミューダショーツまでさまざまなアイテムを製作し、新聞をモチーフにした柄を自身のシグネチャーデザインの1つにした。

ヘルムート ラング 2018年春夏コレクションより。
ヘルムート ラング 2018年春夏コレクションより。

それからおよそ20年後、今度は2018年春夏コレクションでデムナ率いるバレンシアガBALENCIAGA)が新聞を用いたデザインを展開。シェイン・オリバーとのカプセル・コレクションを発表したヘルムート ラングHELMUT LANG)も、同シーズンで新聞をプリントとして応用したピースを披露した。そして最近ではキム・ジョーンズ、イーライ・ラッセル・リンネッツ、ドナテラ・ヴェルサーチェ、パトリック・ディカプリオにブリン・タウベンシーといった錚々たるデザイナーたちが、それぞれディオール、イーアルエルERL)、ヴェルサーチェVERSACE)、ヴァケラVAQUERA)から新聞を取り入れたルックを打ち出している。媒体として衰退している新聞はファッションアイテムとして巧みに転換され、10年後、20年後も生き残るだろう。

ステラ マッカートニー 2025年春夏コレクションより。
photo: Armando Grillo / Gorunway.comステラ マッカートニー 2025年春夏コレクションより。
ボッテガ・ヴェネタ 2024年春夏コレクションより。
Gorunway.comボッテガ・ヴェネタ 2024年春夏コレクションより。
ボッテガ・ヴェネタ 2024年春夏コレクションより。
Gorunway.comボッテガ・ヴェネタ 2024年春夏コレクションより。
オーラリー 2025年春夏メンズコレクションより。
Photo: Filippo Fior / Gorunway.comオーラリー 2025年春夏メンズコレクションより。
ディオール メンズ 2023年リゾートコレクションより。
ディオール メンズ 2023年リゾートコレクションより。
SF1OG 2024-25年秋冬コレクションより。
SF1OG 2024-25年秋冬コレクションより。
ヴェルサーチェ 2019年春夏メンズコレクションより。
ヴェルサーチェ 2019年春夏メンズコレクションより。
ヴェルサーチェ 2019年春夏メンズコレクションより。
ヴェルサーチェ 2019年春夏メンズコレクションより。
ヘルムート ラング 2018年春夏コレクションより。
ヘルムート ラング 2018年春夏コレクションより。
ジプシー・スポーツ 2018年春夏コレクションより。
ジプシー・スポーツ 2018年春夏コレクションより。
バレンシアガ 2018年春夏コレクションより。
バレンシアガ 2018年春夏コレクションより。
バレンシアガ 2018年春夏コレクションより。
バレンシアガ 2018年春夏コレクションより。
ジョン・ガリアーノ 2018-19年秋冬コレクションより。
ジョン・ガリアーノ 2018-19年秋冬コレクションより。
ヴァケラ 2017-18年秋冬コレクションより
ヴァケラ 2017-18年秋冬コレクションより
バレンシアガ 2010-11年秋冬コレクションより。
バレンシアガ 2010-11年秋冬コレクションより。
ジョン・ガリアーノ 2005年春夏メンズコレクションより。
ジョン・ガリアーノ 2005年春夏メンズコレクションより。
ジョン・ガリアーノ 2005-06年秋冬コレクションより。
ジョン・ガリアーノ 2005-06年秋冬コレクションより。
ジョン・ガリアーノ 2005-06年秋冬コレクションより。
ジョン・ガリアーノ 2005-06年秋冬コレクションより。
ジョン・ガリアーノ 2004年春夏コレクションより。
ジョン・ガリアーノ 2004年春夏コレクションより。

Text: José Criales-Unzueta Adaptation: Anzu Kawano

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