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SNSで話題の【酸化亜鉛、グリセリン、エタノール】は肌に悪い?という噂を化粧品のプロが解き明かす!

  • 2025.3.1
教えてくれたのは……

化粧品処方開発者

ぽんかんさん

化粧品メーカーにてスキンケア製品の処方開発を手掛ける、現役の研究者。メーカーとユーザー、どちらにも寄らない中立の立場から情報を発信。客観的で冷静なコメントは信頼できると、Xで大人気!
X:@cosmeresearch

改めておさらい! 化粧品の全成分表示の基本的なルール

ぽんかんさん

化粧品には配合されている成分をすべて表示する全成分表示義務があります。日本で製造して流通させる化粧品のパッケージには、全成分の名称を記載すること、使用割合が1%を超えるものは配合量の多いものから順番に記載することなどのルールが定められています。これは消費者が安全に化粧品を使うためにできたルール。肌に合わない成分が入っていないかなどを確認するためのものです。全成分表示は化粧品の良し悪しを判断するためのものではないということ、ご留意ください。成分表示でわかるのは、何が入っているかということのみ。それぞれの正確な量はわからないですし、製造時の混ぜ方や配合順などによっては同じ全成分表示でもまったく違うものができ上がります。全成分に書かれた成分をチェックするだけでは化粧品のよさは判断できないです。


医薬部外品の全成分表示の義務はない!

ぽんかんさん

医薬部外品の場合は、有効成分を明記し表示指定成分(アレルギーリスクがある)を記載することはマストですが、その他の成分をすべて表示する義務はありません。医薬部外品は省庁や各都道府県の許可がないと製造販売が行えず、基材(ベース成分)も含めて国に安全性を認められた成分しか配合できません(詳しくはこちら)。そのため、全成分表示を義務としていないんです。とはいえ、消費者が個人で成分を確認できるように業界の自主基準として全成分表示の記載が推奨されています。


SNSで話題の成分の本当のところ【1】「酸化亜鉛は毛穴につまる?」

ぽんかんさん

酸化亜鉛は皮脂と反応して固まる性質があるのは事実ですが、これはあくまで成分単独での話。生の酸化亜鉛は水となじみやすい特性があるので、本来、オイルベースの日焼け止めなどに配合するのが難しい原料です。そのため、日焼け止めなどに配合する原料としては油分になじむ成分で表面をコーティングされていることが多く、コーティング次第で皮脂と固まる性質も変わります。また、酸化亜鉛の代わりとして良く用いられる酸化チタンなども原料の状態次第では酸化亜鉛と同様に固まることもあります。SNSで言われているような酸化亜鉛だけが特に毛穴につまるというわけではないのです。日々のクレンジングと洗顔料でしっかりと落とせば問題ない、というのが私の見解です。もちろん亜鉛に反応する金属アレルギーの方は避けるべきです。


SNSで話題の成分の本当のところ【2】「グリセリンでニキビが増える?」

ぽんかんさん

皆さん勘違いをしていますが、言われているような「グリセリンでニキビが増える」というエビデンスは実は存在しないのです。この噂の発端は、グリセリンが“ニキビの原因菌であるアクネ菌の餌になりやすい”という研究データが発表されたためです。試験管などでの実験ではアクネ菌が増えたようですが、実際に人の肌の上でニキビが増えるのかどうかは実験で確認されていませんでした。この研究データだけを頼りに「グリセリンを避けるべき」と判断するのは、個人的には早計だと思います。今後、さらなる研究結果が出てくることを期待しています。化粧品処方開発者としては、グリセリンほど優秀な成分はないと思っています。グリセリンが入ったコスメを使うと肌が保湿されて角層が良い状態に保たれてニキビの予防に繋がることもありますし、保湿力の弱いグリセリンフリーのアイテムを使うことで結果的に肌が荒れてしまうこともあり得るかもしれません。もちろん、グリセリンが肌に合わない人は避けるべきですが、過去にグリセリンを問題なく使用できていた方は、必ずしもグリセリンフリーを選択する必要はなく、個人の好みに合わせて製品をお選びください。


SNSで話題の成分の本当のところ【3】「エタノール入りのコスメは乾燥する?刺激が強い?」

ぽんかんさん

肌が弱いからエタノールが入った化粧品は避けている、エタノールが入った化粧品を使うと乾燥するという声もよく聞きますが使用していて刺激を感じない場合は問題ないと思います。スキンケア商品に配合される数%程度のエタノールでは、乾燥に繋がるとは考えにくいです。実は、エタノールはすーっと肌にすぐなじむ浸透感も、美容成分が肌の内部に入る浸透もサポートする使い勝手の良い成分なので化粧品に幅広く使われています。加えて、ある程度アルコール度数の高いお酒は賞味期限がないことを想像するとわかりやすいかと思いますが、エタノールには化粧品に欠かせない防腐効果もあります。たとえば、エタノールが数%入っている化粧水をアルコールフリーにしたいという場合は、その防腐効果の分、別の防腐剤を増やす必要があります。代わりに配合された防腐成分がエタノールよりも刺激になる可能性だってあります。そうなってしまうと敏感肌のための処方を組みたいのに、本末転倒ですよね。エタノールフリーで肌に合う製品に出合えた場合は使い続ければいいですし、エタノール入りのアイテムを使っていて刺激を感じない場合は特に避ける必要はないと思います。


イラスト/もちづきいずみ 取材・文・構成/剱持百香

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