今回ご紹介するのは、ある読者の方から寄せられた実体験です。亡くなったお父さんが残した小さな預金を通じて、家族が知らなかった想いを知り、家族の絆や愛情を改めて感じることができたエピソードとなっています。普段は見えにくい、家族が胸に秘めている優しい気持ちを感じられるような内容です。
きっかけは一本の電話
この出来事が起きたのは、今から約10年前のことでした。投稿者さんのもとにお母さんから「亡くなったお父さん名義の銀行口座を放置していると、国に没収されてしまう」という内容の手紙が届いたという電話がありました。
投稿者さんは最初、この話を聞いて「もしかして詐欺では?」と不安を感じたそうです。亡くなったお父さんが残した口座について家族は誰も知らなかったため、不安になるのも当然のことでした。しかし、投稿者さんは気になり、念のため銀行に確認しに行きました。
銀行で手続きをしたところ、口座には約10万円が残されていました。さらに通帳には、驚くほど細かく積み立てた記録がありました。それは、亡くなったお父さんが初孫の誕生をきっかけに、年金が支給されるたびに少しずつ積み立てたものでした。投稿者さんはその事実を目の当たりにして言葉を失い、胸がいっぱいになったそうです。
通帳に刻まれた家族への想い
お父さんは当時、癌や肝硬変といった深刻な病気を患い、闘病生活を続けていました。病状は決して良くなかったものの、初孫が「おじいちゃん、一緒に散歩しよう」と声をかけると、いつも優しい笑顔でゆっくり起き上がり、一緒に出かけていたそうです。
投稿者さんは、通帳に残された積み立て記録を見て、お父さんがどんな想いで積み立てを続けていたかを想像し、自然と涙が溢れました。それは、病と闘いながらも家族、特に初孫に向けて精一杯の愛情を形として残した証でした。
今も大切に保管されているお金と明細
投稿者さんは、このお金と明細をどうすべきか悩みましたが、お母さんと話し合った結果、孫に直接渡すことにしました。孫はそのお金を手にし、おじいちゃんの深い愛情を感じ、涙を流して感動したそうです。
現在も、このお金と通帳の明細は孫の手元で大切に保管され、一度も使われていません。10万円という金額以上に、家族の絆や愛情を象徴する宝物となっているのです。
家族との日常には、小さな感動や温かな思いがあふれています。今回の出来事のように、言葉では伝えきれない家族への気持ちが時間を経て伝わることもあります。
誰しも、家族や大切な人への想いを言葉にするのは簡単ではありません。でも、身近な人との何気ない日常の中にある優しさに、少し意識を向けてみてはいかがでしょうか。
※本記事では読者の皆さんに投稿していただいた体験談を紹介しています。
アンケート実施日:2025年3月6日
投稿方法:TRILL 募集フォームより
投稿者:60代女性・会社員