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新NISAでこれだけは手を出さないほうがいい…72歳現役FPが16年の投資歴から導き出したリスク回避策

  • 2025.2.28

株式や投資信託など有価証券を保有している日本人は20%。「投資は危険」というマイナスイメージは正しいのか。FPの浦上登さんは「投資の基本は、自分がその仕組みを知らない金融商品に手を出さないこと。比較的リスクの低い投資は投資信託だが、そもそも株式に投資するとはどういうことか知る必要がある」という――。

資産形成、金のなる木を持つ男、上昇する株価チャートのイメージ
※写真はイメージです
投資=ギャンブル? 日本人はリスクを取らない人が多い

新NISAの制度が始まって1年。その非課税枠を利用して投資を始める人も増えているが、「投資」と聞くと、みんな身構えたり、「難しい、儲けたい、でも、損もしたくない」など、一瞬緊張したりしてしまうのではないだろうか?

金融庁の調査によれば、投資未経験者が投資を行わない理由として多いのは、「余裕資金がないから」(56.7%)、「資産運用に関する知識がないから」(40.4%)、「購入・保有することに不安を感じるから」(26.3%)。多くの人は「投資=ギャンブルだから危険」というマイナスイメージを払拭することができないでいるようだ。

すると行動は二つに分かれる。「リスクをとって儲けたいから株式投資をする」、「損をするのは嫌だから、金利は低くとも、元本保証の銀行預金に資産を預ける」に分かれることになる。

図表1によれば、日本人は圧倒的にリスク回避派ということになる。

【図表1】家計金融資産ポートフォリオの各国比較

もちろん、投資は個人で判断し、自分でリスクを負うものだが、この連載で考えていきたいのは、「投資って、本当にギャンブルなのだろうか?」ということだ。

投資の種類

投資の種類にはどんなものがあるだろうか?

大きく分けて次のようなものがあり、それらのうちの代表的なものを紹介してゆきたい。

1.株式投資
個別株、投資信託、ETF(上場投資信託)など

2.債券投資
国債(日本国債、米国債など)、地方債、社債など

3.不動産投資
現物不動産、REIT(不動産投資信託)など

4.コモディティ(商品)投資
金・銀・プラチナ、原油・天然ガス、農産物など

5.仮想通貨(暗号資産)投資
ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)など

6.デリバティブ(金融派生商品)
FX(外国為替証拠金取引)、先物取引、オプション取引など

7.その他の投資
P2Pレンディング、クラウドファンディング、アート・ワイン投資など

株式投資には「一企業」と「複数株の集合体」への投資がある

まず、株式投資について話したい。株式投資の方法にはどんなものがあるか?

大きく分けると「単独株への投資」と投資信託やETF(上場投資信託)などの「集合体への投資」への二つがある。

図表2を見ていただきたい。

単独株に投資する場合、成功すれば大きなリターンを得られる一方で、その企業の業績や経営状況に左右されるリスクが高くなる。株価の値動きに一喜一憂しやすく、市場や企業の分析・モニタリングなど、投資に対して多くの時間と労力を割く必要がある。

投資信託投資の場合、小額から複数の企業や資産(株式・債券など)に自動的に分散投資ができるため、1社に集中投資をする場合よりリスクが低くなる傾向にある。また、信託報酬などのコストがかかるほか、投資先の詳細な選定やリバランスなどを自分でコントロールしにくいという面がある。

【図表2】単独株と投信信託への投資のメリット・デメリット
2010年、JALの株は1円に、単独株はリスクが高い

投資信託への投資には、アクティブ・ファンドへの投資とパッシブ・ファンドへの投資がある。アクティブ・ファンドはファンドマネージャーが投資先を選別して市場全体の平均以上の運用を目指すものだ。これに対し、パッシブ・ファンドは、インデックス・ファンドともいい、株式や債券などの指標(ベンチマーク)となる指数に連動した運用成果を目指す投資信託のことだが、株式市場であれば、S&P500や東証株価指数(TOPIX)、全世界株式(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス‐ACWI)などが代表的な指数として挙げられる。

単独株は個別銘柄のリスクを負わなければならないこと、投資判断・運用管理に多大な手間がかかることから、あまりお勧めできない。

例えば、日本航空は2010年1月に経営破綻し、株価はゼロ(1円)になった。その後再建されたものの、当初の株主の資産は消滅した。

筆者自身が行っているのは、投資信託、しかも、アクティブ・ファンドではなく、パッシブ・ファンド、すなわちインデックス・ファンドへの投資だ。

日経平均株価やNYダウなどに連動する運用を目指すインデックス・ファンドは、日本経済、アメリカ経済などの一国の経済動向を映し出す鏡といえる。しかし、日本の指数にリンクしたインデックス・ファンドは「失われた30年」という言葉に象徴されるように、やっと株価が35年前の指数に戻ったといっているくらいなので、投資の対象とせず、投資における強みを持つアメリカの指数にリンクしたインデックス・ファンドに投資をしている。

投資信託で特定の業界の株を買うより、インデックス・ファンド

アクティブ・ファンドは、ハイテク株に投資するとか、石油資源株に投資するなど、特定の分野に属する複数の株式に投資して、市場平均以上のリターンを狙うということになっているが、その実、その70~80%が5~10年、または、それ以上の年数の運用成績でS&P500などのインデックス・ファンドに劣るというデータがある。

これは、運用コスト(信託報酬手数料)が高いこと、市場効率性の高まった近年の株式市場で長期にわたり市場平均を上回ることが難しいことがその理由にあげられる。

それゆえ、アクティブ・ファンドへは投資をしていない。

インデックス・ファンドに投資をする理由は、それは銘柄・地域のリスクを分散する投資方法だからだ。

単独株への投資から運輸・物流株、日本株、日本・アメリカ・欧州などの先進国株、世界株への投資とその範囲を広げていけば、株価が極端な動きをするリスクを緩和することができる。

インデックス・ファンドは銘柄や地域の偏りを和らげる投資方法で、日経平均株価やS&P500以外にも、先進国のインデックスや新興国のインデックス、全世界のインデックスなどに連動する投資信託がある。

それを購入することで、例えば、全世界の株に投資をすることが可能になる。

また、アメリカのように経済力の強い国に特化して投資したい人はS&P500インデックス・ファンドに集中して投資をすることも可能だ。S&P500指数は、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している代表的な500銘柄の時価総額を基に算出され、その構成銘柄は米国株式市場の時価総額比率の約80%を占めているので、アメリカ株式市場の動きを反映する代表的な指標ということができる。

それに加え、インデックス・ファンドには安い手数料で投資ができるメリットがある。信託報酬手数料という保有期間に応じてかかる手数料はインデックス・ファンドの場合、年あたり0.1%以下のものが多い。手数料は毎年かかるので累計で増えていくが、10年持っても1%、20年持っても2%なので長期保有に向いている。

【図表3】投資信託・信託報酬手数料
インデックス・ファンドで人気のS&P500とオルカン

現在、インデックス・ファンドの中でも、人気が集中しているのは、S&P500に連動するものと、世界株式に連動するもの(略称:オルカン)である。

この2つのインデックス・ファンドのリーマン・ショックで株が大きく下落する以前の2008年3月28日から現在の2025年2月13日まで約16年のチャートを示したのが、図表3である。

これを見ると、2008年3月を100とした場合、2025年2月でS&P500は465、オルカンのベンチマークとなっているACWIは247で、S&P500が1.88倍の伸びを示している。

なぜか?

【図表4】S&P500・ACWIチャート比較(2008年3月28日~2025年2月13日)
オルカンは時価総額の大きい国に多くの投資をする

オルカンは世界株式に投資しているが、各国の株式の時価総額に応じた投資をしているので、時価総額の大きい国に多くの投資をすることになる。その結果、図表6に示されるように、ACWIの構成要素の66.1%がアメリカ株への投資、それ以外の33.9%が欧州・日本などの先進国とインド・台湾などの新興国になっている。米国株式の伸びに比べて、その他の先進国、新興国の伸びが低いので、これだけの差が出ている。逆に言うと、ACWIも主力はアメリカ株だということだ。

すなわち、S&P500に投資するのはアメリカ株に投資すること、ACWIに投資するのはアメリカを主力にしてその他の先進国・新興国にも投資をすることというのがわかる。

過去16年の実績では、アメリカ株へ投資したほうが大きな伸びを得られた。今後を考えるとアメリカが世界経済を主導する状況はあと何年続くかということが今後の投資先を決めるうえでのポイントになるだろう。

【図表5】S&P500・オルカンの比較
【図表6】オルカン・国別投資比率
アメリカの株式市場がこれからも成長しそうな4つの要因

株式投資におけるアメリカの強みは次の通りだ。

1.経済規模と市場の深さ

アメリカは世界最大の経済大国であり、株式市場の時価総額も世界一。

多様な企業が上場しており、株式市場の流動性が非常に高いため、売買コストや価格変動リスクが相対的に低く抑えられる傾向がある。

アメリカの株式指数(S&P500やダウ平均)は世界的に注目度が高く、投資資金が集まりやすい。

2.企業の競争力とイノベーション

ITやバイオテクノロジーなどのイノベーションを生み出す企業が多く、世界をリードする製品やサービスを展開している。

Google、Apple、Amazon、Microsoftなど、グローバルに圧倒的シェアを持つ企業が米国に集中している。

新興企業もベンチャーキャピタルやスタートアップ支援の仕組みも充実しており、イノベーションが継続的に生まれやすい環境にある。

国際競争力の強い企業が多いことから、長期的な成長が期待される。

今後アメリカで期待できそうなイノベーションは次の通り。

AIと機械学習の高度化、ゲノム編集などの遺伝子工学とバイオテクノロジー、自動運転の革新、宇宙開発など。

3.安定した規制・法整備

アメリカの証券市場は長い歴史と厳格な規制があり、投資家保護の仕組みが整備されている。SEC(米国証券取引委員会)による厳格な監視や情報開示が義務付けられ、企業の透明性が高い。企業不正や会計不祥事が明るみに出た場合のペナルティも大きく、投資家の保護がしっかりしている。

投資家保護制度や破綻処理制度も整っており、相対的に信頼感が高い。

4.高い流動性と取引のしやすさ

市場規模が大きく、世界中の投資マネーが集中しているため、株式売買における流動性が極めて高い。

多額の資金でも吸収力が大きく、価格の乱高下が抑えられる。

取引ツールや証券会社のサービスが充実しており、手数料やスプレッド(買値と売値の差)も競争によって低水準になりやすい。

ニューヨーク証券取引所付近
※写真はイメージです
第2次トランプ政権で国際政治は大混乱だが、株価は?

最後に、今年1月から発足したトランプ政権の政策が株価にどう影響するかという点について述べてみたい。

トランプ大統領は就任早々ドラスティックな大統領令を連発している。関税引き上げ、パリ条約からの離脱、移民受け入れプログラムの見直しなどがあげられる。

ただ、あえて言えば、それらが株価に大きく影響し、暴落などを招く事態になるかというと、それはないと思われる。

なぜか?

トランプ大統領自身が株価に人一倍気を配っており、大きな減税政策を行おうとしていること、どんな形であれ、ウクライナ戦争や中東の紛争を終わらせようとしていること、そのイデオロギーに反対する人はいるかもしれないが、経済全体から見ると、減税も、戦争終結もプラスに働く要素だからだ。

また、関税引き上げに見られるように、これを本気でやろうというよりは、中国以外の国には、移民抑制、麻薬の流入抑制の取引に使っている要素が大きいと思われる。

そう考えると、トランプ大統領の政策が株価にマイナスに働く可能性は低いように思われる。

浦上 登(うらかみ・のぼる)
コンサルタント
早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱重工業に入社、海外向け発電プラントの仕事に携わる。ベネズエラ駐在、米国ロサンゼルス営業所長などを歴任後、三菱重工グループの保険代理店に移り、取締役東京支店長。2009年にはファイナンシャル・プランナーの上位資格CFPを取得。2017年にサマーアロー・コンサルティングを設立、著書に『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)がある。

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