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なぜ新iPhone 16eに飛びつくべきではないのか…ITライターが待ったをかける約10万という強気価格以外の理由

  • 2025.2.26

iPhoneユーザーの約20%が愛用しているというiPhone SE。その後継機種となる新商品iPhone 16eが2月28日に発売される。ITライターの山下達也さんは「SEシリーズと比較してiPhone 16eは割安感がダウンしたが、それ以外にも様子見したほうがいい理由がある」という――。

「iPhone16e」の外観 出典=Apple公式サイト
なぜこんなことに? ファンを失望させた残念な価格設定

少しでも安価にiPhoneを手に入れたいという層に人気を博してきたiPhone SEシリーズ。特に2020年4月に発売された「iPhone SE(第2世代)」は、64GBモデルが税込み4万9280円と圧倒的な低価格が支持された。当時のメインストリームモデル「iPhone 11」が税込み8万2280円だったから、実に約4割も安い選択肢が登場したことになる。

その後継機「iPhone SE(第3世代)」では64GBモデルが税込み5万7800円とやや値上げされたものの「iPhone 13」(税込み9万8000円)と比べて割安な価格設定を維持。スマートフォンなどのデジタル機器が円安や世界的な半導体不足の影響を受けてどんどん値上げされていく中、「ほどほどの性能で満足」なライトユーザーを中心にシェアを拡大していくことになった。

そして、2025年2月19日深夜(20日午前1時)、SEシリーズ第4世代目に相当する「iPhone 16e」が発表された。しかし、その価格はまさかの税込み9万9800円。近年の物価高などもあって誰もがある程度の値上げを覚悟はしていたが、昨年9月に発売された「iPhone 16」(税込み12万4800円)との価格差はごくわずか。「次のモデルで買い換えを」と考えていた人々を絶句させることになってしまった。

筆者作成
下位モデルにこんな高性能は、誰も望んでいなかった?

もちろん「iPhone 16e」が高いのには理由がある。内蔵ストレージの倍増や大画面・高画質化、高速化などほとんどの点で大幅なハイスペック化が図られているためだ。その性能は「iPhone 16」に肉薄しており、大画面有機ELディスプレイ搭載などはSEシリーズとしては明らかにオーバースペック。これでは安くなるわけがない。SNS上でも「もっと低性能でいいから安くしてほしかった」という声が多く上がっていた。

では、なぜアップルは「iPhone 16e」をそれほどの高性能モデルにしてしまったのか。その背景には、同社が昨年末から英語圏向けに提供開始している生成AI機能「Apple Intelligence」(日本では4月初旬よりサービス開始)を普及させたい思惑がある。

独自の生成AI機能「Apple Intelligence」を搭載させたかった
「iPhone16」の画面から

「Apple Intelligence」は、アップル独自の生成AIを用いて長いメールの内容を要約したり、自動で返信したり、写真をさまざまに加工したり、音声アシスタントSiriとより自然な言葉で会話できるようにしてくれるというもの。既存の生成AIサービスのほとんどはAI処理をオンラインの高性能サーバー上で行うのだが、「Apple Intelligence」はセキュリティやレスポンスなどの観点からこれをiPhone内で行う「オンデバイスAI」にこだわった。当然、そのためにはデバイス側に高度な処理性能が求められる。結果、「iPhone 16」および「iPhone 16e」は、最上位「iPhone 16 Pro」と同世代のプロセッサーと大容量メモリを搭載することになった。

生成AI活用において、GoogleやマイクロソフトらGAFAMのライバルたち、そして新興Open AIらに後れを取っていると言われるアップルは、ここで一気に巻き返したい気持ちがあったのだろう。そのためにはユーザーを一人でも増やす必要があるというわけだ。

カメラ機能は最低限だが、それ以外はほとんど「iPhone 16」

それらを踏まえた上で、改めて「iPhone 16e」の主な性能・機能を確認していこう。

まずディスプレイは「iPhone 16」とほぼ同等の6.1インチの有機ELパネルを搭載する。「iPhone SE(第3世代)」は4.7インチの液晶パネルだったので、かなりのジャンプアップだ。また、これに合わせて画面形状も本体前面のほとんどが表示領域となるフルスクリーンデザインに。そのため、画面サイズが大型化したほどには本体サイズは大きくなっていない。片手で十分に操作できる。

そしてこの大画面化を受けて、ついに初代iPhoneから長らく受け継がれてきた物理ホームボタンが消失。合わせてユーザー認証も指紋認証(Touch ID)から顔認証(Face ID)に変更されることになった。Face IDは手袋をしていても、指が濡れていても高速に認証される非常に便利な認証手段だが(眠っている時に指を押し当てられてロック解除される心配もない)、画面と相対していないとロックを解除できない、マスクしていると使えない(マスクをしている状態でも使えるモードがあるが、安全性は低下する)などTouch IDとは使い勝手が大きく異なるので注意が必要だ。

iPhone 16eのカメラでは超広角やマクロ撮影ができない

カメラはシングルレンズ仕様。4800万画素センサーの中央2400万画素分だけをトリミングすることで疑似的な2倍ズームを利用できるものの、「iPhone 16」に搭載されている超広角レンズや、本体側面の「カメラコントロールは非搭載。被写体に近寄って大写しにできるマクロ撮影にも対応しない。「iPhone 16」に比べて、カメラ機能については大きな差が付いている。

そして本体底面の接続インターフェースはLightningからUSB-Cに(これで、Lightning搭載iPhoneはラインアップから消えた)。

「iPhone 16e」 出典=Apple公式サイト
「iPhone 16e」の接続インターフェースもUSB Cになった。 出典=Apple公式サイト
1ドル151.5円レートで約10万円に値上げ、円安になれば…

10万円に迫る価格になったものの、それに見合う高性能を備えた「iPhone 16e」。結局のところこれは「買い」なのだろうか? それとも「買ってはいけない」のだろうか? 筆者としては様子見の「待ち」としておきたい。

第1の理由は為替レートだ。「iPhone 16e」128GBモデルの米国価格は599ドルで、税込み9万9800円は1ドル=151.5円ということになる。トランプ大統領就任前に彼が掲げていた1ドル=120円に向かっていくのであれば、「iPhone 16e」の価格はグッと現実味のあるものになっていく。1ドル=120円になればなんと税込み7万9068円である。実際にそこまで円高が進むかは分からないが、今すぐ買い換える必要がないのであれば、もう少し待ったほうがよさそうだ。

第2の理由はデータ通信に利用する内蔵セルラーモデムの実力が未知数なこと。「iPhone 16e」では、これまで利用していた業界最大手の米クアルコム製セルラーモデムではなく、自社開発の新型セルラーモデム「Apple C1(以下、C1)」を搭載している。それによるコストダウンや高性能化、差別化を追求したいアップルの狙いはよく分かるのだが、セルラーモデムは国ごとに大きく異なる通信事情に対応した複雑な設計が必要で、その開発難度はある意味でCPUなどよりもはるかに高い。あのインテルすら撤退したと言えばその難しさが伝わるだろうか。

アップルはインテルのセルラーモデム事業を2019年に買い取り、足かけ6年かけてついに「C1」搭載にこぎ着けたわけだが、初のセルラーモデムがいきなり理想通りの性能を発揮するとは考えにくい。実際、満足いく性能を出せず、ここ数年搭載延期を繰り返してきたとも言われており、不安はある。

アップル初の自社開発セルラーモデムが落とし穴に?

また、奇跡的に全く問題なく動作したとしても、「C1」は仕様上、国内携帯電話キャリア各社が利用する1.5GHz帯の電波に対応しておらず、他のスマートフォン(クアルコム製モデムチップを搭載する「iPhone 16」なども含む)に通信品質で差を付けられる恐れがある。スマートフォンは1.5GHz以外にも多くの帯域で通信を行うため(「C1」は最も重要なプラチナバンド=700~900MHz帯には対応している)、1.5GHz帯非対応がどれほどの影響を及ぼすかは発売されてみないと分からない。それゆえに「待ち」ということだ。

ただ、「iPhone 16e」は「iPhone 16」と比べてバッテリー持続時間が1~2割程度優れており、これは「C1」の省エネ性能が貢献しているのだと推察される。そのため後日、円高が進んで価格が下がり、「C1」も問題なしということになれば、「iPhone 16e」は普段使いに便利な機能が満載された魅力的な選択肢ということになる。念を押すが「買ってはいけない」のではない。あくまで「待ち」だと改めて強調しておく。

※写真はイメージです

今すぐ買うのであれば無印のiPhone 16がベストな選択肢

とは言え、今使っているiPhoneがもう壊れそう、あるいは新入学シーズンに向けて子供に買い与えたい人もいるだろう。そういう人にはずばり「iPhone 16」128GBモデル(税込み価格12万4800円)がおすすめだ。

「iPhone 16」のカラーラインナップ、出典=Apple公式サイト

「iPhone 16e」と比べて2万5000円も高くなってしまうが、その性能はハイエンドモデルに迫るほど高く、4~5年は快適に使い続けられるはず。型落ちの「iPhone 15」128GBモデル(税込み価格:11万2800円)という選択肢もあるが、そんなに安くならないわりにCPUが2世代型落ちなど、性能差が大きくおすすめできない。

そうはいってもスマートフォンに10万円も出せないという人は、携帯電話キャリア各社が提供している「残価設定型」プランの利用を検討してほしい。これは(キャリアによって細部が異なるが)2年後に端末を返却することを前提に、低価格で最新スマートフォンを利用できるというもの。機種変更の場合はあまり旨味がないのだが、他社からの乗り換えや新規契約の場合は大幅な割引が受けられる。

ドコモ、au、ソフトバンクなどの格安な購入プランはどうか

たとえばソフトバンクの「新トクするサポート スタンダード」プランなら、他社からの乗り換え or 新規契約の場合、毎月652円の支払い×24回=1万5648円で「iPhone 16」128GBモデルを契約可能。「iPhone 16e」ならなんと毎月1円×24回=24円で購入可能だ。2年後に端末を返却しなければならないが(この際、端末の状態が悪い場合は2万2000円の支払いが発生)、10万円払って4~5年使うことを考えたらかなりの買い得と言えるだろう。

その後の契約は「機種変更」扱いになってしまうため、アップルストアで新品を購入した場合の6割くらいの支払い(かつ、2年後に返却)となってしまうのだが、新品を4年間使い続けるのと比べたらトータルではかなりの割安になる(しかも3年目に端末が新品に交換される)。いきなり10万円をポンと用意できない学生にもおすすめだ。

なお、こうしたプランを使わず、本体を買い切りで使いたいのであれば一括払いにせよ、分割払いにせよ、アップルストアで購入すべき。キャリアで販売されるiPhoneはどれもアップルストアで購入する場合と比べて1~2割ほど割高なのがその理由。発売から時間が経ったモデルについてはその限りではないが、2年以上、同じ端末を使い続けるのであれば原則的にはアップルストアで購入するのが最もお得なのだ。

「iPhone 16e」 出典=Apple公式サイト
こんな無茶な値上げをしてもiPhone一強時代は続いていく?

iPhone SEシリーズで安いモデルを使い続けていきたいというファンの願いを裏切る大幅値上げに踏み切った「iPhone 16e」。普通であれば、こんな値上げはユーザー離れを引き起こしてしまいそうだが、こと国内市場に関してはそれでもなおiPhoneを使いたいという人が多く、今後も変わらずiPhone一強状態は続いていくだろう。

特に若者の間では、友人間でのファイル共有にワイヤレスファイル共有機能「AirDrop(通称、エアドロ)」が使われることが多く、この輪に加われないことが致命的な問題になる。エアドロ非対応のAndroidスマホに写真などを送るにはLINEなどを介さざるを得ず、それで相手の「ギガ(データ通信枠)」を消費させてしまうことで関係性が悪化するリスクがあるためだ。中高生がiPhoneを欲しがるのはファッションや思い込みではなく、極めてリアルな“外交問題”であることを知っておくべきだろう。

そのほかにもiPhoneには、Macとの優れた連携性や、長期間OSアップデートを提供してくれる安心感などユーザーを強く引きつける(囲い込む)要素がとても多い。したがって、たとえ10万円にまで値上がりしてもこれまでiPhoneを使い続けてきた人はiPhoneを使い続けるだろう(使い続けざるをえない)。彼らにとってAndroidはそもそも比較対象ではない。

なればこそ、低価格な選択肢が失われたことを多くのファンが嘆いているのだ。

山下 達也(やました・たつや)
ITライター
1975年東京都生まれ。AIやVRなどの最新のITや、PC、スマートフォン、デジタルカメラ、AV機器など、幅広くデジタル機器を愛好。一般誌から専門誌、企業オウンドメディアまで幅広く解説記事を執筆する。

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