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オスカーを手中にする作品、俳優は? 賞レースで注目を浴びる話題作をチェック!

  • 2025.2.25

ティモシーが渾身の名演で、カリスマを体現

ティモシー・シャラメが“生きる伝説”ボブ・ディランを演じる『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』( ジェームズ・マンゴールド監督 )は2月28日公開。Photo_ ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
culture_movie_select5_a_complete_unknown_02.jpgティモシー・シャラメが“生きる伝説”ボブ・ディランを演じる『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』( ジェームズ・マンゴールド監督 )は2月28日公開。Photo: ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

アカデミー賞に向けた主演男優賞レースのフロントランナー。つまり年間で最も優れた演技と評判なのが、本作のティモシー・シャラメだ。『君の名前で僕を呼んで』で年上男性への切ない想いを演じ、人気が爆発。大作『DUNE/デューン砂の惑星』の主演、ジョニー・デップの当たり役の青年期を任された『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』など、現在29歳にしてその実力は証明済みだが、そんなシャラメがさらに高みに達する名演を目の当たりにする。

1963年のボブ・ディラン(右)とジョー・バエズ。 Photo_ Rowland Scherman/National Archive/Newsmakers(Bob Dylan & Joan Baez)
culture_movie_select5_a_complete_unknown_03.jpg1963年のボブ・ディラン(右)とジョー・バエズ。 Photo: Rowland Scherman/National Archive/Newsmakers(Bob Dylan & Joan Baez)

ミュージシャンとして偉業を達成し、ノーベル文学賞も受賞。“生きる伝説”となったボブ・ディランは、どのように才能を世に知らしめたのか。1961年、NYに来た19歳のディランが、「風に吹かれて」などの曲を生み出し、時代を変えるパフォーマンスに挑むまでの5年間が描かれる。シャラメはギター演奏はもちろん、自身の歌声で若きディラン役に挑戦し、実力のカリスマを体現。ディラン本人もその演技に賞賛を送ったという。ジョーン・バエズやジョニー・キャッシュら同時代の人気シンガーも登場。監督のジェームズ・マンゴールドは、かつてキャッシュを主人公にした『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』も手がけたので、“伝説の原点” へのアプローチはお手のものだが、本作が多くの人に共感を与えるのは「青春映画」としての瑞々しい肌合いかもしれない。

名盤『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』(1963年)のジャケットをボブ・ディランとともに飾る当時の恋人スーズ・ロトロをモデルとした女性シルヴィー・ルッソを演じるのは、エル・ファニング。Photo_ ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
culture_movie_select5_a_complete_unknown_01.jpg名盤『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』(1963年)のジャケットをボブ・ディランとともに飾る当時の恋人スーズ・ロトロをモデルとした女性シルヴィー・ルッソを演じるのは、エル・ファニング。Photo: ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

キューバ危機、公民権運動、ケネディ暗殺など60年代前半のアメリカの激動期に、一人の青年が自らの表現にこだわり、恋愛や仲間との複雑な関係を経験し、何かを見つけるプロセスが感動を誘う。20代でオスカーを手にするシャラメの姿も夢想しながら観れば、その感動も倍増するだろう。

大人気ミュージカル『ウィキッド』を映画で味わう歓び

『ウィキッド ふたりの魔女』 ジョン・M・チュウ監督 3月7日公開。 Photo_ © Universal Studios. All Rights Reserved.
culture_movie_select5_wicked.jpeg『ウィキッド ふたりの魔女』 ジョン・M・チュウ監督 3月7日公開。 Photo: © Universal Studios. All Rights Reserved.

例年、インディペンデント系の作品が優勢を占める賞レースで、メジャースタジオのエンタメ作品として高評価を受け、勢いを見せているのが本作。2003年にブロードウェイで初演されて以来、世界で6500万人以上の観客を集めたミュージカル『ウィキッド』。待望の実写化ということで期待が高まったが、その期待をはるかに上回る絶賛を受け、全米でも大ヒットを記録中だ。日本でも劇団四季の上演で知名度は高く、この映画版も話題を呼ぶだろう。名作『オズの魔法使い』の前日譚の小説をミュージカル化。後に“悪い魔女”となるエルファバと、“善い魔女”になるグリンダが友情を育んだ大学時代が、耳に残る々の名曲と、魔法を表現するときめきの映像とともに展開していく。

Photo_ © Universal Studios. All Rights Reserved.
culture_movie_select5_wicked_04.jpegPhoto: © Universal Studios. All Rights Reserved.

エルファバ役のシンシア・エリヴォは、すでにエミー賞(TV)、グラミー賞(音楽)、トニー賞(舞台)を受賞済みで、もし本作でアカデミー賞に輝けば、史上20人目の快挙となる。W主演のグリンダ役は、人気ミュージシャンのアリアナ・グランデで、彼女も演技と歌の才能を全開。出会ったときは犬猿の仲だった2人が、さまざまな困難に遭遇して絆を深めるドラマに引き込まれる人も多いはず。

Photo_ © Universal Studios. All Rights
culture_movie_select5_wicked_02.jpgPhoto: © Universal Studios. All Rights

大学の学長役にアジア人で初のアカデミー賞主演女優賞を受賞したミシェル・ヨー、いま最も熱い視線を注がれる次世代スターのジョナサン・ベイリーら共演陣も豪華。舞台版のファンにとっても、映画ならではのカラフルでゴージャスな美術にテンションが上がるのは確実。緑の肌を持ったエルファバと周囲の関係には強いメッセージも込められており、ミュージカルとして素直に楽しみながら、深い部分で心を掴まれる点が本作の魅力と言えるだろう。

伝説のディーバ役に堂々と挑んだアンジー

『Maria(原題)』 パブロ・ラライン監督 公開情報未定。 Photo_ Rowland Scherman/National Archive/Newsmakers
cuture_movie_select5_maria01.jpg『Maria(原題)』 パブロ・ラライン監督 公開情報未定。 Photo: Rowland Scherman/National Archive/Newsmakers

ボブ・ディランに始まり、元テイク・ザットのロビー・ウィリアムズ、さらには年末にはマイケル・ジャクソンと、2025年は大物ミュージシャンを主人公にした映画が相次いで公開される。そしてもう一人、“20世紀最高のソプラノ歌手”と呼ばれ、オペラの歴史に名を刻んだマリア・カラスの映画も完成。アンジェリーナ・ジョリーが文字どおり体当たりで、53歳で亡くなったカラスの最後の一週間を演じ切った。ブラッド・ピットとの破局以来、彼との間の裁判など、俳優業以外の報道が多かったアンジーが、久々に演技者としての実力を証明。25年前に『17歳のカルテ』で助演女優賞を受賞して以来、2つめのオスカー、しかも主演女優賞を射程に入れる。

稀代のオペラ歌手として歴史に名を残すマリア・カラス。Photo_ Weston/Daily Express/Hulton Archive/Getty Images (Maria Callas)
culture_movie_select5_maria02.jpg稀代のオペラ歌手として歴史に名を残すマリア・カラス。Photo: Weston/Daily Express/Hulton Archive/Getty Images (Maria Callas)

マリア・カラスといえば、同じギリシャ系の大富豪アリストテレス・オナシスとの蜜月が有名。彼女とオナシスの愛人関係が終わりを迎えたのは、ケネディ大統領の未亡人ジャッキーとオナシスの結婚だった。そんな大スキャンダルや、数々の伝説のパフォーマンスを挟みながら、食事も満足にとらず、心身ともに追い詰められた人生の最後をドラマティックに再現。天才の名をほしいままにした彼女の、かつての声が取り戻せなくなった苦悩が痛いほど伝わってくる。監督は過去にもジャクリーン・ケネディ、ダイアナ元皇太子妃を主人公にした映画を撮ってきたパブロ・ラライン。マリア・カラスが亡くなってから今年で48年。アンジーが挑んだ歌声とともに、カラス本人の音源も使われ、神がかり的だった才能を体感できる。

シンデレラ物語を超越する主人公に共感

『ANORA アノーラ』ショーン・ベイカー監督 2月28日公開。 Photo_ ©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. ©Universal Pictures
culture_movie_select5_ANORA01.jpeg『ANORA アノーラ』ショーン・ベイカー監督 2月28日公開。 Photo: ©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. ©Universal Pictures

近年、カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞した作品がアカデミー賞の有力候補となるケースが目立つ。昨年の受賞作である本作もそのパターンだ。カンヌのパルムドールと聞くと、作家性の強さや社会的テーマへの言及、こだわりの演出などで“一般観客にはやや難解な意識高い系”とイメージされやすいが、この映画は観る人を選ばない傑作と言っていい。

Photo_ ©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. ©Universal Pictures
culture_movie_select5_Anora02.jpgPhoto: ©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. ©Universal Pictures

NYのストリップダンサー、アノーラが、ロシアの新興財閥の息子イヴァンと“7日間の恋人契約”で付き合うが、離れがたくなり、2人は勢いで結婚を決意。だが事態は急変......。冒頭は心ときめくシンデレラストーリー、中盤は緊迫のアクションサスペンス的なムードと、その自在な演出でジェットコースター感覚にも誘われる。イヴァンの見守り役を任された面々が強烈なキャラながら、どこか頼りない行動をとったりと、ユーモアも絶妙。飽きさせることのない脚本と構成力を見せつけたのは、ショーン・ベイカー監督。その作劇の鮮やかさもさることながら、これまでもマイノリティ扱いされる人たちを愛情たっぷりに描いてきた彼のスタイルを貫徹。社会の格差、ジェンダーの問題をさりげなく訴え、最後は切ない感動へ導く手腕は鮮やかだ。言動がストレートで激しすぎるアノーラが、どんどん愛おしく見えてくるのは、映画のマジック。今回のアカデミー賞に向けた賞レースでは、主演女優賞が実力派揃いの大激戦となるなか、アノーラ役のマイキー・マディソンがどこまで評価されるのか? キーパーソン役、ユーリー・ボリソフの助演男優賞候補に値する名演にも注目。

美と若さを探求する狂気を描く怪作

『サブスタンス』 コラリー・ファルジャ監督・脚本 5月16日公開。 Photo_ ©The Match Factory
culture_movie_select5_Substance.jpg『サブスタンス』 コラリー・ファルジャ監督・脚本 5月16日公開。 Photo: ©The Match Factory

作品のインパクトという点では、稀に見る強烈さを放つ。ジャンルとしてはいわゆる“ボディホラー”要素も強い。つまり肉体が変容する恐ろしさを描いているので、一歩間違えればB級の珍品映画になったかもしれない。そんな作品が観る人の多くを虜にしているのだから、『サブスタンス』は奇跡の傑作だ。主人公は、50代になって仕事が少なくなったことに悩む元スター俳優のエリザベス。容姿の衰えも気になっていた彼女は、若返りの再生医療を試みる。その結果、別人のような外見になり、新たな仕事も舞い込んでくるのだが......。永遠の若さと美しさを求める物語は過去にもあったが、本作の描き方はセンセーショナルそのもの。いったいどんな結末が待っているのか心の準備をしていても、その予想を数段上回るクライマックスに目を疑ってしまう。

エリザベスを演じるのはデミ・ムーア。かつて『ゴースト/ニューヨークの幻』などで大人気スターになった彼女も、近年は俳優としての活躍のニュースが激減。そんなデミがエリザベスを演じるのは自虐的でもあるが、心配をよそに振り切った演技で圧倒する。そして若返ったシーンを演じるのが、いまハリウッドの若手で最も注目を浴びるマーガレット・クアリー。賞レースでは2人とも高い評価を受けており、特にデミにとっては復活の一作となった。ハリウッドセレブとしての日常の暮らしぶりやファッションで視覚的にテンションを上げ、皮肉とユーモアたっぷりに描かれる業界の内情、そして“若返り薬”を注入する超ハードなシーン......。多くの見どころに心を掴まれつつ、若さや美しさへの過剰な信奉がいかに不毛であるか、その事実を突きつけられたとき、本作は忘れがたい記憶となる。お披露目されたカンヌ国際映画祭で各国のバイヤーが配給権を争ったのも納得の、怪作にして大傑作!

Text: Hiroaki Saito Editor: Yaka Matsumoto

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