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ネイルでもヨガでも素敵なバスタイムでもない…「子育てストレス」に悩む母親に「本当に必要なもの」

  • 2025.2.25

子育てのストレスはどう解消すればいいのか。ジャーナリストのジェニファー・ウォレスさんは「ネイルやヨガといったものでは根本的な解消にはならない。家庭内の人間関係を充実させるには、家庭外の人間関係に重点を置く必要がある」という――。

※本稿は、ジェニファー・ウォレス『「ほどほど」にできない子どもたち 達成中毒』(早川書房)の一部を再編集したものです。

よい親になるためには、自分を労わらなければならない

母親であることは手強い仕事だ。コミュニティの規範となる大きな波に逆らって泳がなければならないときはいっそう過酷になる。

子どもをきちんと愛するためには──子どもへの支援と自主性の尊重とのあいだに引かれた細いラインの上を歩くためには──当然ながら感情面と肉体面の資質を持ち合わせていなければならない。穏やかな心や平静さが要求されるが、親もまた支えを感じることができなければ、そういった資質を維持することは不可能である。よい親になるためには、自分を労わらなければならない。

とはいえ、まっさきに自分を労わってよいのだろうか。この考えを受けいれるのは容易ではない。なんといっても、社会が親である私たちに──とくに女性に──求めるものとは正反対なのだから。

幼児2人と絵本を読む女性
※写真はイメージです

この矛盾について、アリゾナ州フェニックスで研究者のスニヤ・ルーサーと会ったときにフィッシュタコスを食べながら語りあった。ルーサーは表情豊かな茶色の瞳を持つ小柄な女性で、専門分野の頂点に立つ者に特有の威厳ある物腰を身につけている。

私の向かいに座って、母親自身のメンタルヘルスがどれほど重要なものであるかをていねいに説明してくれた。私は話のあいまに頷きながら黄色のメモ帳に書きつけていった。しかし私の猜疑心を見透かしたかのように、ルーサーがこちらを見つめているのにすぐに気づいた。私が顔を上げるとルーサーは眉をひそめた。

母親にも「酸素マスクをつけてくれる相手」が必要

「どうして母親はこの考えに激しく抵抗するのでしょうか」とルーサーが尋ねた。「まずは自分を労わることが重要だと理解しないのはなぜかしら」

「『まずは自分の酸素マスクをつけなさい』という意味ですか」と私は問い返した。ようやくルーサーの言いたいことがわかってきたような気がした。

「いいえ」とルーサーは力強く答えて、テーブルに身を寄せた。「女性のやるべきリストはただでさえ長いのだから、新たな項目を加えるように言っているわけではありません。私が言っているのは、あなたに酸素マスクをかぶせてくれる相手が必要だということ」

私は深く座り直して、マルガリータをひとくち飲み、彼女の言葉を消化しようと努めた。ルーサーは私をじっと見つめた。そしてついに真底いらだったようにこう言った。「自分のためにできないのならば、子どものためにやりなさい!」

ネイルやヨガよりも大切なもの

私たちに必要なのは、数十億ドルものセルフケア市場が疲れた女性に売りこんでいる“私時間(ミータイム)”といった類のものではないとルーサーは説明した。週に2回バブルバスに入ったり、ネイルを施したり、ヨガをはじめたり、1年も前にスマートフォンにダウンロードしたものの未使用だった瞑想アプリをいよいよ試したりといったことが要点ではない。

癒しの美容時間を過ごす女性
※写真はイメージです

肝心なのは、私たちが子育てを通じて子どもに深い愛情と思いやりを伝えようと努めるのと同じように、私たち自身に深い愛情と思いやりを授けてくれる豊かな関係を大事にすることである。

友情は日々のストレスがもたらす疲れと傷から身を守る緩衝材である。不安をやわらげて気持ちを落ち着かせてくれる。友情から支えを得ると、脅威によって反射的に生じる肉体の反応を阻止できることが研究であきらかになっている。友人が部屋にいるとストレスが軽減することが実験で示されたのだ。

でき過ぎた話に聞こえるかもしれないが、友情は緩衝装置として作用し、痛みに対する脳の反応を減少させるのである。ふたりの人間が並んで丘を見上げると、ひとりで見上げたときよりも傾斜がゆるやかに感じるという研究結果もある。

「週1時間の会合」でメンタルヘルスは改善される

PTAでの友情も信頼できる支えになるのだろうか。結婚生活は? そのような結びつきにおいて具体的にどの要素が作用するのか。科学者であり母親でもあるルーサーもこういった疑問に興味を持った。そこで女性が友情を最大限に活用する手助けをするために、日々の生活で過剰なストレスを感じている母親たちを対象として、研究に基づくサポートグループの効果について研究してきた。

先に実施された貧困に陥った母親の支援プログラムの成功に倣い、大卒の働く母親のための12週間のプログラムを作成して、〈仲間との真の絆〉と名づけた。アリゾナ州のメイヨークリニックの内科医、看護師、医療助手といった医療従事者を対象としてプログラムを試した。

プログラムどおり毎週1時間の会合を開き、そこでルーサーはふたつの目標を設定した。ひとつは固い絆を築くこと──グループ内の女性同士および選ばれた外部の「相談相手」と──であり、もうひとつは子育ての役に立つ新しい技能を紹介することだった。

12週間後、参加者のメンタルヘルスと幸福度は改善され、おまけにストレスによって分泌されるコルチゾールのレベルすらも低くなったと報告された。〈仲間との真の絆〉のプログラムが終了してから3カ月経っても効果は減少することなく、さらによい結果が生じた。

しかも驚くべきことに、参加者はみな忙しく過ごしていたにもかかわらず脱落者は皆無だった。参加者の多くは調査が終わったあとも会合を続けた。ルーサーたちのその後の研究では、対面でも、全国規模のバーチャル〈仲間との真の絆〉でも、同様のパターンが示された。

ルーサーの研究から、私たちの大切さと立ち直る力の支柱となる信頼できる友情を築くために長い時間を過ごす必要はない──じっくりと話しあう時間があればよいとわかった。週に1時間だけの結びつきに集中したことが、よい結果をもたらしたのだ。参加者のひとりは、「こんなに短い時間で本物の絆を築くことができるなんて」と感嘆の声をあげた。

友人がいないわけではないが、時間がない

メリーランド州在住のふたりの子どもの母親であるマーゴは、親になってすぐに緊密な結びつきを手に入れたおかげで救われたと語った。12年前、娘たちがまだよちよち歩きをしていたとき、同じ年頃の子どもを持つ3人の母親と仲よくなった。それ以降いまもなお4人は親しく、子どもたちが思春期に入ってからも気づきを交換している。

「子どものことで悩んでいると打ち明けるたびに、うちも同じだとみんなが声をかけてくれるので、どの家も似たような問題で悩んでいると知って安心します」とマーゴは語った。自分だけではないと思うだけで心が癒され、必要以上に自分を責めずに済む。「だから悩みをやり過ごして、子どもたちにもっと寄り添うことができるのです」

このように、真の結びつきにまつわるエピソードは実にすばらしい。だが現実問題として実践可能だろうか。1日の時間は決まっていて、親が割ける労力にも限度がある。1週間のうち4日は子どもを体育館に送り迎えして、宿題を手伝って、スクリーンタイムを監視して、さらに時短料理もこなさないといけないというのに。コーヒーを飲むためであれ悩みを打ち明けるためであれ、友人に会うなんてかぎりなく不可能に近いように思える。

私が取材した裕福なコミュニティで暮らす親たちに友人がいないわけではない。けれども、友人との仲を深めて互いの癒しの源にする余力がないのである。日々の生活に追われると、つい友情を後回しにする。

私が実施した調査では、60パーセントの親が「子育てで手一杯で、好きなだけ友人に会うことができない」という項目に同意した。つまり、ある母親が語ったように「みんなとても忙しくて、誰も私の泣き言を聴いてくれない」ということだ。

後回しにせずに、カレンダーに予定を書きこむ

結びつきを持つための別の方法もいくつかあるが、私が推奨したいのはふたつの大事な習慣を実践することだ。これによって取材した親たちは堅い友情を健全に保つことができた。単純だと感じるかもしれないが、このふたつが過密な日常にもたらす効果に驚くはずだ。まずひとつは、カレンダーに友人を書きこむこと。

友情は自分に与える贈り物である。20代の頃、私も友人も一緒に遊ぶことだけに没頭していたときは完全には理解していなかったが、友情には人を癒す強い力がある。研究により、友人と過ごす時間はもっとも幸せな時間であることが判明している。子ども、親戚、親、さらには配偶者といった面々といるよりも、友人と一緒にいる方が幸せを感じるのだ(注)。

(注)ジェニファー・シニア『子育てのパラドックス』(英治出版)

それなのに、友人というのは忙しくなるとまっさきに後回しにされる存在でもある。私たちは、友人はいつでもそばにいてくれる、当たり前の存在だと考えている。いつの日か去ってしまうかもしれないのに。心をこめてはぐくまなければ、どれほど深い友情でも歳月とともに失われる。

親子の時間と同じように、友人との時間を作る

家族のスケジュールや必需品について、どれくらい念を入れているのか考えてみよう。目当ての空手の指導者が教える日を書きとめたり、カレンダーをめくって子ども同士で遊ぶ約束をした日に印をつけたりしているはずだ。

あなたの支えとなる友情のためにも同じくらい入念に計画を立ててみてはどうだろうか。結婚生活や親子関係を守るために時間を捻出するのは厭わないならば、どうして友情に寸暇を割くことができないのか。

学校行事の参加許可証、英語の宿題、課外活動の申込書に注いでいるのと同じ熱意を抱いて友情の育成に取り組んでみよう。本物の友情は自然に発生するものであり、特段の努力や気遣いは不要だという思いこみがある。だがそれはまちがっている。そんな思いこみによって、親は(とくに女性は)深い友情を構築し、長続きさせるために知恵を絞って主導する役割から遠ざかる。

私たちに必要なのは長い時間ではない。役割を果たす意識、それだけである。

「自分をわかってくれる相手がいて前よりも幸せ」

しだいにバネッサも納得した。「まずカレンダーに自分の予定を入れなければ、月末になってからお金を貯めようとするのと同じ結果になっちゃう。なんにも残らない」

カレンダーにペンでマークされた赤い円
※写真はイメージです

そこで頼れる仲間に自ら声をかけた。毎週水曜日にはペンシルベニア州に住む友人ジェンとズームで話し(その日をジェンズデーとバネッサは呼んでいる)、金曜日には高校時代からの旧友とランチをするようになった。「以前は4カ月も会わないときもあった」

だがこうやって密に連絡をとりあうと結びつきがさらに深くなり、日常生活の助けとなる知見も得られるようになった。「前よりも楽しい毎日を送っています。自分の話を聴いてくれて、自分に目を向けてくれて、自分をわかってくれる相手がいるのだから」

誰と会うかによって子育てが変わる

家庭内の人間関係のために外の世界の人間関係を充実させるなんて、まったく逆ではないかと思うかもしれない。だが取材した母親の多くは、日々の生活を乗りきるためにあえてそうしていると証言した。

ジェニファー・ウォレス『「ほどほど」にできない子どもたち 達成中毒』(早川書房)
ジェニファー・ウォレス『「ほどほど」にできない子どもたち 達成中毒』(早川書房)

「私も友達も毎日とても忙しい。ほとんどみんな職場に通勤し、家に帰れば子どもと用事が山のように待ち構えているのだから時間と労力がたちまち消えていきます」。ニュージャージー州で思春期の子どもふたりを育てている母親はそう語った。

毎日の生活から友人との時間をひねり出すのは難しい。それでも最低でも月に1回は友人と食事をともにすることに決めていて、その予定をペンで書きこんでいる。「どういう友達と過ごすのかによって、あきらかに子育てが変わると実感しています。一緒にいると楽しい気分になって、最高の自分を引き出してくれる友達との関係を続けるように努めています。最高の自分で子育てしたいですから」と続けた。

「食事会が終わって家に帰ると、リラックスして元気を取り戻した私を子どもたちが出迎えてくれます。与える力が蓄えられたおかげで、子どもたちともっと向きあえるようになります」

子どもが幸せでなければ、あなたも幸せになれない

「『子どもが幸せでなければ、あなたも幸せになれない』という言葉を知ってる?」とバネッサは私に問いかけて、以前の子育てについて語り出した。娘たちの感情のローラーコースターの隣のシートに座って、思春期の浮き沈みを自ら体験していた。娘から友人とのいざこざや学校でのプレッシャーを打ち明けられたら、その苦しみを自分の胸に焼きつけた──そうして次の日は疲れ果てて感情が枯れてしまった。

「子どもたちは感情のローラーコースターに親も一緒に乗ってほしいとは思っていない。自分が吹き飛ばされそうなときに押しとどめる岩になってほしいと願っているのよ」

友人たちとの定期的な交流によって、バネッサはそんな岩になることができた。どっしりと地に足がついた。いまは、子どもが苦しんでいたら以前よりもじっくりと耳を傾けて、事態を改善する策を授けられるようになった。

ジェニファー・ウォレス
ジャーナリスト
ハーバード大学を卒業後、CBSのニュース番組「60ミニッツ」のプロデューサーになり、制作陣の一員としてロバート・F・ケネディ・ジャーナリズム賞に輝く。現在はウォール・ストリート・ジャーナル紙とワシントン・ポスト紙に寄稿している。ニューヨークで夫のピーターと3人の子どもたちとともに暮らしている。

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