[IN THE BACK] vol.2
Starring Haru Kuroki
“You’ll never never know”
俳優とファッションの関係を見直し、彼らの新たな表情や一面を引き出すことを試みる連載「IN THE BACK」。今回登場いただくのは、映画にドラマ、舞台と、出演作の絶えない黒木華さん。凛とした表情の奥に光る、強く人を惹きつけるものとは。
トップス¥44,000(ムッシャン)、ハット¥154,000(ヒヅメ/共にサカス ピーアール)、肩に掛けたトップス¥44,000(Archive Store)
ジャケット¥46,200、パンツ¥11,000(共にジャンティーク)、ハット¥11,550(カシラ/CA4LA プレスルーム)、スカーフ¥41,800(フミカ_ウチダ/クリフ)
トップス¥44,000(ムッシャン)、ハット¥154,000(ヒヅメ/共にサカス ピーアール)、肩に掛けたトップス¥44,000(Archive Stor
e)、スカート¥28,600、パンツ¥11,000(共にジャンティーク)、インナー、スニーカーはスタイリスト私物
パンツ¥55,000(Archive Store)、ハット¥11,550(カシラ/CA4LA プレスルーム)、ソックス¥6,600、ブーツ¥27,500(共にジャンティーク)、ポンチョ、メッシュのインナー、チェックシャツはスタイリスト私物
コート¥600,000(Archive Store)、シャツ¥53,900(ピリングス/リトルリーグ インク)、前後逆にはいたデニム¥152,900(ブレス/ディプトリクス)、ハット¥11,550(カシラ/CA4LA プレスルーム)、メッシュのインナー、ベルトはスタイリスト私物
BEHIND THE SCENES
ここでは連載のディレクションを務めるメイクアップアーティストのUDAさんと黒木さんにインタビューを実施。今回のクリエイティブのテーマや、撮影を終えた黒木さんの思いを伺いました。
『普段はあまり見せないやんちゃな部分を 引き出してもらえた撮影でした』 ーー黒木華さん
役者さんは自身の内面や個を出すことって、実はあんまりないように感じていています。自分が演じているので当然それは自分なのですが、(自らの)内側にあるものを引き出しつつも、どれだけその“役”でいられるか、ということが多いんですよね。本来は内面を表に出すことは恥ずかしく感じてしまうのですが、一方でオープンでもいなきゃいけないって、役者って変な仕事ですよね(笑)。だからお話をいただいたときは、「引き出してもらえるなら、引き出してもーらお!」という気持ちでした。どんな自分になるのか興味があったというのもありますし、UDAさんが引き出してくれるなら、絶対に面白いだろうなって。
撮影のリファレンスでヴィヴィアン(・ウエストウッド)の写真が何枚かあったのですが、確か初期のヴィヴィアンってセックス・ピストルズの衣装を手がけていたんですよね。私、70〜80年代のロンドンの服装とか雰囲気がすごく好きなんです。撮影前の打ち合わせのときには洋服に関することは全く話していなかったのに、「もう覗かれてる!」とびっくりしました。また、UDAさんはクラシックな部分を大切にしながらも、古びることなく新しいものを生み出していく面に魅力を感じているとお話しされていましたが、私自身もそこに共感する部分があって。というのも、日本の古典作品に出演させていただいた際、おそらくその時代の精神性と異なる時代にいるからこそ、古いもののよさが分かって、よりよいものにできている部分があるんじゃないかと思っていたんです。だからびっくりました、ばれてるって(笑)。
今日は撮影が進むにつれて画がどんどん見えてくる感覚があり、「じゃあ自分はこうしたらいいんだ」というのが、本当にスムーズにできました。こういったクリエイティブな場所にいられるのはすごく面白いし、自分のなかにあるやんちゃな部分を出すことができる現場は本当に楽しいし、私にとってもとても刺激になりました。
あとはUDAさんはロックな方だと思っていて。クリエイティブのお仕事をされている方たちは、壊して進んでいくという一面や、崩して作っての繰り返しだったりもすると思うので、役者の仕事とどこか似ている部分があるなと感じました。だからこそ、違和感なくオープンな姿勢でUDAさんと向かい合うことができたと思います。
出来上がったものを見ていただいて、悪い役をやらせたいって思ってもらえたら嬉しいです(笑)。
『芯の強さと儚げな部分が交差する内面を ファッションを通して表現したかった』 ーーメイクアップアーティストUDAさん
黒木さんとは以前、2度ほどお仕事でご一緒させていただくことがありました。初めての現場がファッションの撮影だったのですが、服の見せ方やムード作りが絶妙で、とても楽しんで撮影をされている方なのだな、というのが印象に残っていて。そこで今回はファッションの要素を多めにしたディレクションにしようと決めました。
黒木さんには、柔和でーご自身でもおっしゃっていましたが、演じている役柄からか“和”というイメージがありました。一方、撮影前の打ち合わせの際には、邦画より洋画を観る機会が多いことや、悪い女の役を演じてみたいとお話しされていたのが印象的で。他にもパンクが好きという話などを伺って、柔らかな心像の裏には必ず芯の強さがあるはず、と感じていたことの確認ができ、腑に落ちる部分がありました。
そこで、今回は黒木さんのなかにある強さと儚さがアンバランスに揺れているような内面的な部分を、ファッションを通して表現できたらと思いました。それを広げるキーワードを探していたとき、偶然見つけたのがマルコム・マクラーレンの1枚のポートレート。パンクの父とも呼ばれている彼のスタイルは、ルールに縛られない自由さと根底にクラシックなエッセンスが絶妙な按配で組み込まれているように見え、何かヒントとしてピンッとくるものがありました。さらに、そんな彼と相棒のヴィヴィアン・ウエストウッドによる1982年秋冬コレクション『Nostalgia of Mud』には、民族っぽいのにパンクなムードがあり、今までの黒木さんのイメージにない世界観だけど絶妙に合う気がしました。
正直、ご本人に楽しんでいただけるか、やってみるまで不安もありましたが、杉浦(加那子)さんが最後まで調整してくれたスタイリングもあり、撮影を進めていくなかで、黒木さんもいろいろキャッチしてくださって、とても楽しみながら委ねてくれた感覚がありました。それをしっかり引き出していってくれたフォトグラファーの(岡本)充男さん、強さや厚みを加えてくれた(ヘアの)NORIさんの力もあってとてもよい空気ができ、今回もちょっと冒険的で新鮮なイメージが生まれたような気がします。
Profile_黒木 華(くろき・はる)/1990年生まれ、大阪府出身。2010年、NODA・MAP番外公演「表に出ろいっ!」でデビューし、2011年より映画やドラマに出演。『小さいおうち』(2014年)では第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞を日本人最年少で受賞。近年の主な出演作に大河ドラマ『光る君へ』、舞台『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』、映画『アイミタガイ』などがある。
Profile_UDA(うだ)/大手化粧品会社にてPRやマーケティング、教育、店頭プロモーションなどさまざまな業務に携わり、その後独立。現在は国内外のエディトリアル、コスメティック、ファッションのキャンペーン広告、ショーなどのメイクアップを担当。2021年に日本の季節にフォーカスした初の著書『kesho:化粧』(NORM
AL)を刊行し、話題を集めた。
direction & make-up:UDA[mekashi project] photograph:MITSUO OKAMOTO styling:KANAKO SUGIURA
hair:NORI TAKABAYASHI [YARD] model:HARU KUROKI interview & text:MIYU SUGIMORI
otona MUSE 2025年3月号より