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手を上げて「すみませーん」は絶対ダメ…高級レストランでワインを飲みほした時にする"一流のしぐさ"

  • 2025.2.21

ワインは好きだけれど、レストランでの作法がイマイチわからないという人は多い。ワインスクールのトップ講師である紫貴あきさんは「敷居が高いと思われがちなワインの世界ですが、ポイントさえ押さえればそれほど難しくありません」という――。

※本稿は、紫貴あき『キャラクターでわかるワイン図鑑』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

まずは“プロローグの一杯”を

重い扉、ゴージャスなシャンデリア、ふわふわの絨毯じゅうたん……。こんなレストランで席についたら、きっとすぐに「お飲みものは何になさいますか」とソムリエが聞いてくることでしょう。

ここで「食事も注文していないのに……」と思ってはいけません。まずは1杯、飲みながら食事を選ぶのが格式高いレストランの流れ。ほんの少しアルコールを入れれば、緊張もほぐれて和やかなムードになります。音楽の前奏、小説の前書きの役割にあたるお酒、これが食前酒(アペリティフ)です。

「とりあえずビールで」と言いたいところをぐっと我慢して、今日はワインで始めてみませんか。おすすめはスパークリングワインです。炭酸ガスが空っぽの胃袋を刺激して、食欲が湧いてきます。グラスの底からゆらゆら立ち上がる泡がゴージャスで気分も高揚します。

特別な日には、ぜひシャンパンを。複雑な香りと滑らかな口当たり、生き生きとした酸味は、まさにスパークリングワインの最高傑作です。

「炭酸はちょっと」という人は、辛口の白ワインもおすすめ。ポイントは甘すぎないこと。甘いと血糖値が上がって、まだ食事もしてないのに満腹感を覚えてしまうからです。

シャンパンはどの料理にも合う万能選手

食前酒を飲み終えたら、分厚いワインリストを渡され、いざ注文! でも、どんなワインを頼もうか迷ってしまいますよね。

グラスで頼むならば、泡⇒辛口の白⇒(ロゼ/オレンジ)⇒辛口の赤⇒甘口の順に頼んでいくとよいでしょう。一般的に、この順番でワインの味わいは重たく感じることが多く、軽いものから重たいものへと飲んでいったほうが、ワインのよさを引き出すことができるからです。

※写真はイメージです

これはコース料理との相性という観点でも理にかなっています。たいていのコースは、軽いものから重たいものへと順番に出てきます。軽い食事には軽いワイン、重たい食事には重たいワイン。軽さを合わせたほうが、組み合わせもよいのです。

ボトルで注文して、最初から最後まで1本のワインで通すのも素敵です。その場合は、料理との相性や同席者の好みも気になるところですね。そんなときにおすすめしたいのが、またもやスパークリングワイン。炭酸ガスが食べ物のクセを包み込んでくれるため、合わない料理はないのです。スパークリングワインは、食前酒にも食中にも使える便利なワインなのです。中でもシャンパンは万能選手として知られます。

シャンパンには焼いたパンのような複雑な香り(これを「シャンパン香」と呼びます)が含まれています。この香りがさらに食べ物のクセをカバーしてくれるため、普段はワインと組み合わせるのが難しいと言われるような食事(魚卵、酢の物、デザートなど)でも合わせることができるのです。

乾杯からお食事、デザートまで合わせられるのが嬉しいところ。最後に飲むシャンパンを「〆しめシャン」と呼ぶファンもいます。

「マリアージュ」の3大原則とは

料理とワインを合わせることを「マリアージュ(結婚)」と呼びます。人間の結婚は、個人の価値観で決まることがほとんどで「絶対ルール」はありません。料理とワインの組み合わせもそれと同じです。自分の好みで、生魚に赤ワイン、キャビアに甘口ワインを合わせたってかまわないのです。

ただし、万人受けする組み合わせのルールがいくつかあります。ホームパーティを開くときや接待会食をするときには、マリアージュの原則を知っておくと、同席した人にもきっと喜んでもらえるでしょう。

※写真はイメージです
①その土地の料理に、その土地のワイン

初対面の人でも、出身地が同じだとすぐに打ち解けたという経験はないでしょうか。料理とワインも出身地が同じだと自然と合うものです。

昔はその土地の食材を使って料理を作り、その土地のブドウを使ってワインをつくりました。それなのに相性が合わないとアンハッピーですよね。長い年月をかけて、郷土が同じ料理とワインは「定番」となりました。

②スケールをそろえる

バターを使った重たいソースのかかった肉料理と軽い白ワインでは、白ワインが料理の力強さに圧倒されてしまいます。逆もしかり。鮮魚のカルパッチョに重厚な赤ワインだと、料理が赤ワインに負けてしまいます。

色や香りを合わせると……

そこで、軽い料理には軽いワイン、重たい料理には重たいワインという具合に、スケールを合わせることがカギ。よく魚料理に白ワイン、肉料理に赤ワインと言われるのもこの法則からです。

③共通項を探す

サッカー好きはサッカー好きと、鉄道ファンは鉄道ファン同士で仲良くすると話が合いますよね。料理とワインも同じで、共通項があると無理なく合います。

たとえば、「色」。不思議なもので、料理とワインの色が合っていると相性がいいのです。一般的に、肉料理には赤ワインと言われますが、鶏肉や豚肉のような白身肉は重ための白ワインにも合います。

ほかにも、料理とワインの香りが似ているとマッチします。ペッパーステーキに、黒コショウの香りがするシラーからつくられたワイン、カルパッチョ香草添えに、ハーブの香りがするソーヴィニヨン・ブランを使ったワイン……という具合です。

ホストテイスティングを頼まれたら

ワインをボトルで頼むと、ソムリエが「お味見お願いします」と、グラスにワインを少し注いできます。これが「ホストテイスティング」です。同席者からの熱い視線を受け、緊張もマックス。レストランで最もドキドキする瞬間ですね。

ワインはいつも健全というわけではなく、ときには欠陥があることもあります。そこで、ソムリエは抜栓後に注文したゲストに確認を求めます。一般的に、チェック役を担うのはそのテーブルの主催者(招待者)側です。

まずは、普段ワインをテイスティングするときと同じように、見た目(外観)/香り/味わいと確認していきます。

グラスをテーブルクロスの上でかざして濁っていないか確認しましょう。香りを確認して、新聞紙の湿った匂いがないかも確かめましょう。ここでチェックをやめてしまう人をときどき見かけますが、口に含んで味わいにも違和感がないかを確認してください。

最初は緊張すると思いますが、間違えても大丈夫。もし、「変だな」と思った場合はソムリエに声をかけてみましょう。

意外と知らないレストランでのワインマナー

ハードルが高いと思われがちなワインマナーですが、実はそこまで複雑ではありません。一度知っておけば、今度レストランにいったときにすぐに実践できる簡単なことばかりです。

※写真はイメージです
①ワインを注ぐのは誰?

ミシュランで星がついているような高級レストランの場合、ソムリエがワインを注ぎます。グラスでワインを頼んでいる場合は、残量が少なくなるとソムリエがやってきて「ほかに何か飲まれますか」と聞いてくれます。

ボトルでワインを頼んでいる場合は、目で合図するとソムリエが注ぎ足してくれます。手を上げたり、「すみませーん」と言ったり、ソムリエを待てずに自分で注いだりするのはNG行為です。

②ワインを注がれるときは

日本酒ならば、両手で盃さかずきを持ち上げてお酒をうけます。しかしワインはグラスを持ち上げることはしません。ソムリエがワインを注ぐときは、グラスはテーブルに置いたままにしましょう。

③レディーファーストのマインドで

基本的にワインの世界は女性が重んぜられます。これは、ワインがヨーロッパ発祥で「騎士(ナイト)文化」の名残があることの象徴。そのためソムリエは女性からワインを注ぎます(ホストが女性の場合は、その女性が最後という例外もあります)。

カジュアルなレストランでも、決して女性にボトルを持たせたり、注がせたりしてはいけません。これはワインの世界では大タブーで、フランスでは女性がワインを注ぐと「娼婦のすること」とまで言われてしまうのです。

誕生日会に生まれ年のワインを持ち込んでみる

ワインに詳しくなってくると、あなたにとっての「特別なワイン」が見つかるかもしれません。ところが、「記念日だから特別なワインで乾杯したいな」と思っても、求めるワインがお店には置いていないことがあります。そんなとき、ワインの持ち込みを許可してくれるレストランがあるのをご存知でしょうか。

レストランにワインを持ち込むことを、「BYO(Bring Your Own Wine=ブリング ユア オウン ワイン)」と呼びます。発想力豊かなオーストラリアでこのシステムは始まりました。

誕生日会に生まれ年のワインを持ち込んだり、こだわりのワインを集めて、その店の料理と合わせるワイン会を開いたりする場合にはありがたい仕組みです。

お店に電話してBYOできるかどうか確認してもよいですし、最近ではBYOできる店をまとめているインターネットサイト(「Wine@」など)もあります。

※写真はイメージです

飲食店は基本的に、原価の高い食事よりも、飲み物で利益を出しています。そのため、お客さんがワインを持ち込んでしまうと売り上げが減ってしまうのです。お店側への配慮の気持ちを示すために、BYOするときのマナーも押さえておきましょう。

ワインを持ち込むときのスマートな配慮
①持ち込み代を支払う
紫貴あき『キャラクターでわかるワイン図鑑』(かんき出版)

BYOするときは店側から持ち込み代を請求されるのが一般的。都内の場合は、だいたい1本2000円から3000円です。そのため、持ち込むワインもそれにふさわしい格の高いものであったほうがよいのです。せっかく安くない持ち込み代を支払ったのに、1000円のワインを店で飲んでいるようでは気分も上がりませんよね。

②持ち込みワインだけで完結させない

乾杯用やデザートワインはお店からオーダーするといった具合に、すべて持ち込みのワインで完結させないといった気遣いがあるとよいでしょう。

そのほかにも、BYOしたワインがバックヴィンテージ(長期熟成させたワイン)や希少なものなら、ソムリエに「よろしければ少しどうぞ」と声をかければ、きっと喜ばれるはず。スマートなBYOで、かっこいいワイン通になりたいものですね。

紫貴 あき(しだか・あき)
日本最大級のワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」講師
日本最大級のワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」講師 慶應義塾大学卒業後、大手輸入商社勤務。退社後渡米し、ワイン修行を経て帰国。現在、ワインスクールや企業研修にて講師を務める。日本ソムリエ協会主催のJ.S.A.ワインアドバイザー全国選手権でチャンピオンとなる(2016)。ワインスクールでの指導実績は3500人超。クラス全員合格を4度達成するなど、人気と実力を兼ね揃えたトップ講師としてメディアへの執筆・監修・取材協力・出演など幅広く活動中。著書に、『ゼロからスタート! 紫貴あきのソムリエ試験1冊目の教科書』(KADOKAWA)がある。

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