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令和ロマンの髙比良くるまもしくじった…弁護士が「オンラインカジノがグレーというのは詭弁」と断言するワケ

  • 2025.2.21

M-1グランプリ2連覇を果たした人気お笑いコンビ・令和ロマンの髙比良くるま氏が、過去にオンラインカジノで賭けをしたことを認め、活動を自粛中だ。IRの法整備やゲーミング規制を専門とする弁護士の渡邉雅之さんは「これまでオンラインカジノはグレーという間違った認識が広まっていたが、完全に違法で賭博罪。自分や身近な人がプレイしないように気を付けてほしい」という――。

※写真はイメージです
髙比良くるまはなぜ警察に事情聴取されたのか?

――令和ロマンの髙比良くるま(30歳)さんが、警察の事情聴取を受けたという報道を受け、2月15日に「(2019~20年に)オンラインカジノをしていたのは事実」と認めました。逮捕されたわけではないのですが、なぜ警察に呼ばれたのでしょうか?

【渡邉雅之、以下・渡邉】まず、大前提としてオンラインカジノの利用は違法。刑法の賭博罪や常習賭博罪に当たります。刑法第185条では「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する」とされ、第186条では「常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する」とされています。

EUのマルタ島、イギリスのマン島、フィリピンなど、オンラインカジノが合法になっている地域もありますが、日本においては、少なくとも今後30年は合法化されないでしょう。日本は刑法において「属地主義」をとっています。つまり、日本人はもちろん外国籍の人でも、国内で犯した犯罪については刑法を適用する、検挙するということですね。

もちろんフィジカルな店舗型のカジノ、いわゆる地下カジノも違法ですが、日本国内にいる人がオンラインカジノをすれば、それが海外の運営サイトであろうと、賭博罪に当たります。

賭博罪に「グレーゾーン」なんてない、日本では違法

――髙比良さんは、慶応大学に在籍していた大学時代の知り合いから、「海外の口座から送金してオンラインカジノをやっているのは違法ではない」と言われたということです。「(オンラインカジノは)グレーだと思っていた」というコメントもありました。

【渡邉】オンラインカジノの事業者は、例えばイギリスのマン島など、合法である海外でライセンスを取ります。彼らは非常にずる賢く、イギリス留学中の日本人にオンラインカジノでポーカーの相手をさせるなど、あちらの法律に引っかからないような形を取っている。しかし、そこで日本国内にいる顧客相手にカジノを主宰すれば、本来は日本の刑法の「賭博場開帳図利罪」に該当する。「自分たちは処罰されないから、日本国内にいる皆さんも処罰されない。グレーゾーンですよ」と事業者は言いますが、それは訳のわからない理屈でしかありません。

胴元は海外にいる、そこに賭け金を送る「代行業者」の問題

――日本でオンラインカジノをプレイする人は、海外にいる胴元、事業者にどうやってお金を預けているのでしょうか?

【渡邉】クレジットカードや銀行口座を登録するか、現金を送金するかですね。胴元は海外にいて、日本の警察はなかなか摘発できないのですが、顧客の決済を代行する業者は日本にいるので、警察はそこに目をつけ、摘発を進めているところです。これは私が捜査情報を知っているわけではなく、推測ですが、髙比良さんが事情聴取を受けた理由も、おそらく決済代行業者の名簿の中に彼の名前があったからではないか、と想像できます。

――決済代行業者というのは、どう名乗ってくるのですか? 「なんとかファイナンス」のような金融系の会社なのでしょうか。

【渡邉】いえ、個人事業者が多いと思います(編集部註:2月4日神奈川県警に逮捕された決済代行業者は44歳の日本人男性)。警察は、怪しい動きで大きいお金を海外に送っている人物がいた場合に、これはオンラインカジノの協力者であろうということで、金融庁や銀行などに問い合わせをし、捜査を開始するわけです。こういう業者は、海外送金ビジネスをするために必要な資金決済法上の資金移動業のライセンスを持っていない違法な業者です。

通称「トクリュウ」という匿名・流動型犯罪グループが暗躍

――そもそもオンラインカジノの胴元、事業者はどんな人物なのでしょうか。

【渡邉】海外ではオンラインカジノを合法的に行っている会社もありますが、その中には「反社」に近いような人たちもいます。警察では、オンラインカジノに関わっている犯罪者には、いわゆる「トクリュウ」、「匿名・流動型犯罪グループ」と呼ばれている組織もいると考えています。

――賭博罪に問われるだけでなく、反社組織に名前やクレジットカードの番号を知られてしまうというリスクもあるわけですね。

【渡邉】そのとおりです。

――ただ、ついオンラインゲームを楽しむ感覚でカジノをやってしまうこともあると思います。

【渡邉】たしかに、スマートフォンでガチャなどの課金ゲームをすることとオンラインカジノの境界線が明確ではないところはあります。そこが周知されていないのは、警察庁、政府などもようやく周知に力を入れるようになった段階で、私が弁護士として2013年ごろから対策を訴えてきた時から10年経っていますし、マスコミの責任もありますね。一部の動画配信サービスなどが、オンラインカジノの入り口となるアプリなどの広告を流してきたことにも、大いに問題があったと思います。

※画像はイメージです
カジノゲームを無料でプレイしているうちは犯罪にならない?

――例えばスロット、ルーレットのようなオンラインゲームでも課金せず、無料でプレイしているうちは、賭博罪にならないのでしょうか?

【渡邉】無料サイトという立て付けで運営している事業者はいます。その無料サイトで完結するうちは、賭博罪とならない可能性もありますが、有料サイトに誘導されていくのが通常なので利用すべきではありません。

また、賭博罪というのは現金、預金だけでなく、自分の財物を賭けること。オンラインカジノ事業者は、「入金不要・初回ボーナスプレゼント」のように初めは無料で利用できるサービスなどで巧妙に利用者を誘い込んでいます。そこで、課金すればこんなに儲かるんだと思わせ、現金を賭けるように仕向けるわけですね。

しかし、初回に名前やメールアドレスなどを登録するとポイントがもらえるなどの条件の場合、無料と言いつつ、結局は自分の個人情報の対価としてポイントが与えられている。決して無料のものとは言えません。ポイントで、現金を賭けたときと同じように勝てばお金がもらえるゲームをしたとすると、それは明らかに賭博行為と見なされるでしょう。

「広告で見たから違法と思わなかった」という言い訳

――「違法とは知らなかった」という言い訳は通用しないわけですね。髙比良さんは「インターネット上で広告が出ていることなどから、違法ではないと認識してしまった」ともコメントしています。

【渡邉】刑法では、本人が違法だと思っていなくても、その行為をやっているという認識があれば、犯罪として成立するんですね。「オンラインカジノが賭博罪に該当するとは知らなかった」ということは全く理由にならない。オンラインカジノでお金をかけていること自体が違法だと考えるべきです。たしかにいろんな有名人が出てオンラインカジノの広告をしてきたので、違法性はないと思ってしまうかもしれない。しかし、よくよく考えれば、日本にはフィジカルな(店舗型の)合法のカジノがない中で、手軽にスマホからオンラインで賭博ができること自体がおかしいわけです。実際、東京都内でも地下カジノ、闇カジノというような場所でプレイした人が逮捕されているのに、なぜオンラインカジノなら違法じゃないのか?と疑問を持つべきだったと思いますね。

新注文住宅「PlusMe」発表会に登壇した令和ロマンの髙比良くるま、東京都渋谷区、2024年2月1日
もし会社の同僚がオンラインカジノをしていたら?

――もし、会社や職場の同僚がオンラインカジノをやっていたら、どう対処すればよいのでしょうか?

【渡邉】通常、会社の就業規則などに「刑法違反に該当する行為をした場合は、懲戒解雇」「会社の評判を落とすような行為をしている場合は、懲戒解雇に該当する」と明記されています。会社によっては「オンラインカジノをやってはいけない」と書いてあるところもあります。ですので、同じ会社の人がオンラインカジノをしているのを知った、目撃したという場合には、会社内の通報制度などを使って知らせるべきですね。それで、その人がクビになってしまったとしても、結果的には、ギャンブル依存症から救うということにもなり得ますし、その人のためにもなるのでは、と思います。

――会社内部のコンプライアンス窓口に知らせる、人事部などに相談するということですね。同時に、オンラインカジノをやっている本人にも忠告すべきでしょうか。

【渡邉】本人に「やめた方がいいよ」と言うのは親切ではあります。今なら「令和ロマンの髙比良さんの件があったし、自分で分かっているでしょう。このままオンラインカジノを続けると、あなたも警察に呼ばれるかもしれないよ」「会社辞めなきゃいけなくなってしまうから、今すぐ辞めた方がいいよ」とは言ってもいいかもしれません。ただ、相手の人との人間関係があるでしょうから、無理はしなくていいと思います。

※写真はイメージです
2025年、もはや「違法だとは知らなかった」は通用しない

――渡邉さんは以前からオンラインカジノの問題を訴えてこられたということですが、2025年になってようやく周知されたという実感はありますか。

【渡邉】そうですね。政府特定複合観光施設区域整備推進会議の委員を務め、IRの法整備に協力する中で、厳格なギャンブル依存症規制やマネー・ローンダリング規制などの下、民営カジノが初めて合法となるよう計画される一方、オンラインカジノがなんの規制もなく行われているのはおかしいのではないか、違法だとずっと言い続けてきました。12年ほど前から訴えてきまして、ようやく2022年に警察庁の啓発サイトができました。2025年1月には政府広報として、より詳しいサイトも公開されました。これまでお話してきたとおり「違法だと知らなかった」という言い訳は通用しませんので、ぜひ多くの人に、これらの情報に目を通してほしいですね。

警察庁「オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!」
政府広報「オンラインカジノによる賭博は犯罪です!」

渡邉 雅之(わたなべ・まさゆき)
弁護士法人三宅法律事務所パートナー弁護士
東京大学法学部卒。政府特定複合観光施設区域整備推進会議委員(現任)。専門はコンプライアンス案件、マネロンテロ資金供与対策、個人情報保護対策、ゲーミング規制。

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