春の始めから青い小花をたくさん咲かせ、道端や野原など日本の平地でよく見かけるオオイヌノフグリ。名前には聞き馴染みがないという方も、小さな星のような、愛らしい花を咲かせる姿には見覚えがあることでしょう。この記事では、オオイヌノフグリの基本情報や特徴、よく似た花、育て方のポイントなどについて詳しくご紹介します。
オオイヌノフグリの基本情報
植物名:オオイヌノフグリ
学名:Veronica persica
英名:Commonfield speedwell、Large field speedwell、Winter speedwell
和名:オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢)
その他の名前:瑠璃唐草(るりからくさ)、星の瞳
科名:オオバコ科
属名:クワガタソウ属
原産地:ヨーロッパ
形態:一年草
オオイヌノフグリはオオバコ科クワガタソウ属に属する植物で、学名はベロニカ・ペルシカ(Veronica persica)。原産地はヨーロッパで、明治初め頃に日本に伝わった帰化植物です。
オオイヌノフグリは繁殖力が強く、春には草地や道端でよく咲いています。また、日本だけでなく、アジアや南北アメリカを含め、世界中に分布しています。雌しべに花粉がつくと花が落ちるという習性があります。
基本的には雑草として扱われるオオイヌノフグリですが、花が可愛らしく、丈夫でよく広がるので、グラウンドカバープランツとして利用されることもあります。
オオイヌノフグリの花や葉の特徴
園芸分類:草花
開花時期:2〜5月
草丈:10〜20cm
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:青
オオイヌノフグリの花期は2~5月です。日が当たるときだけ、7~10mmほどの小さな青い花を咲かせます。これらの花は一日花で、1日で花が落ちますが、次々と新しい花が開花します。
草丈は10~20cmほどと低く、茎が分岐して横に広がります。茎や葉にはまばらに毛が生えています。
花が終わると実ができ、熟すと弾けて種子が飛び散ります。これにより、オオイヌノフグリは自身の種子を広範囲に散布し、生息地を拡大します。
オオイヌノフグリの名前の由来や花言葉
オオイヌノフグリの名前の由来は、日本原産のイヌノフグリに花が似ており、花や株のサイズがイヌノフグリより大きいことからきています。また、「フグリ」は「陰嚢」を指し、実の形が犬の陰嚢に似ていることからこの名前がつけられました。
この植物は別名で瑠璃唐草(るりからくさ)とも呼ばれています。花がよく似たネモフィラも同じ瑠璃唐草の別名を持っています。さらに、小さな青い瞳がのぞいているように見えることから、星の瞳とも呼ばれています。
オオイヌノフグリの花言葉は「忠実」「信頼」「清らか」で、これは学名のVeronicaの由来が聖女ベロニカであるためです。
オオイヌノフグリに似た花
オオイヌノフグリによく似た花を咲かせる植物もたくさんあります。ここでは、その主な種類と見分け方のポイントをご紹介します。
イヌノフグリ
イヌノフグリは、オオイヌノフグリと同じオオバコ科クワガタソウ属の植物です。日本原産とされていますが、古くに渡来して帰化した可能性もあります。
イヌノフグリの開花時期は3~5月で、オオイヌノフグリより開花のスタートがやや遅めです。枝がよく分岐して這うように広がる点はオオイヌノフグリとよく似ていますが、花は5~10mmほどと小さく、花色がピンクである点が異なります。
ネモフィラ
ネモフィラは北アメリカ原産で、ムラサキ科ネモフィラ属の植物です。野草ではなく、園芸植物として知られています。
ネモフィラの和名は「瑠璃唐草」で、これはオオイヌノフグリの別名と同じです。ネモフィラとオオイヌノフグリは、よく似た色の花を咲かせますが、ネモフィラの花のほうが大きく、直径は約20mm。一方、オオイヌノフグリの花は7~10mmです。また、花びらの枚数も異なり、オオイヌノフグリは4枚ですがネモフィラは5枚あります。
ネモフィラとオオイヌノフグリは開花時期も異なります。ネモフィラは4~5月に開花し、オオイヌノフグリは2~5月にかけて咲きます。
タチイヌノフグリ
タチイヌノフグリもオオバコ科クワガタソウ属の植物です。原産地はヨーロッパで、日本に帰化植物として定着しています。
タチイヌノフグリの開花時期は4~6月と、オオイヌノフグリより遅めです。花のサイズは直径約4mmと、オオイヌノフグリより小さく、花柄も短いです。
どんどん分岐して横に広がるオオイヌノフグリに比べ、タチイヌノフグリは下部が分岐しますが上部は立ち上がります。花の色は青色で、濃い青の縞が入ります。
フラサバソウ
フラサバソウもオオバコ科クワガタソウ属に属しています。原産地はヨーロッパで、日本には明治頃に渡来したと考えられています。
フラサバソウの開花時期は3~5月で、直径約3~4mmと非常に小さな花を咲かせます。オオイヌノフグリ同様に、株元でよく分岐して横に広がります。
花の色は淡い紫色で、葉や萼には毛が生えています。
オオイヌノフグリと同じ時期に楽しめる野草
オオイヌノフグリは春を告げる野草ですが、同じ時期である早春に花を咲かせる野草についても、代表的な2種をご紹介しましょう。
ヒメオドリコソウ
ヒメオドリコソウはシソ科オドリコソウ属の植物です。原産地はヨーロッパで、日本には明治時代に渡来し、全国に広がりました。
春の野で見かける野草としておなじみの存在で、茎は立ち上がり葉が密についています。上部の葉は赤紫色で、葉の隙間からピンク色の細長い花が顔をのぞかせます。また、白い花を咲かせる種も存在します。
ホトケノザ
ホトケノザはシソ科オドリコソウ属に属しており、ヒメオドリコソウと同じ場所で見かけることも多いです。
ホトケノザは丸い葉が茎を囲むようにつき、仏様が座るハスの台座のように見えることが名前の由来となっています。茎の頂部にピンク色の花を咲かせます。また、咲かずに自家受粉で実をつける閉鎖花も存在します。
また、春の七草に入れるホトケノザはキク科で、本種とは別種です。
オオイヌノフグリの育て方のポイント
オオイヌノフグリは道端で育つ丈夫な草で、ほとんど手をかけなくても育てることができます。ここからはオオイヌノフグリの育て方のポイントについて解説します。
栽培に適した環境と用土
オオイヌノフグリは、鉢植えでも地植えでも栽培できます。鉢植えの場合は、平鉢が適しています。繁殖力が強く、成長のスピードも速いため、地植えの場合は増えすぎに注意が必要です。
植える場所は日当たりのよい場所にしましょう。日陰では、きれいな青色の花が咲かないことがあります。土質はあまり選びません。鉢植えの場合は、草花培養土を使うと手軽で便利です。
水やり・施肥
オオイヌノフグリの管理は簡単で、水やりや肥料はほとんど必要ありません。
地植えの場合、基本的に水やりは必要なく、降雨のみで十分ですが、日照りが続いて土が乾きすぎるときは水やりをして補います。鉢植えの場合は、土が乾いたら水やりをしましょう。
肥料ては、土に元肥として漉き込む程度で十分です。肥料を与えなくても育ちます。
種まき・植え付け
オオイヌノフグリの種子や苗の流通は少なく、まれにインターネット通販で見つかる程度です。
自生している花が実をつけたら、その種子を採取するのが簡単です。種まきの適期は10月頃で、繁殖力が強いので種子を土にばらまけば、そのまま発芽して育ちます。株を掘り取る際には管理者に許可を取ってから、自生しているものを掘り起こして植えるようにしましょう。
鉢植えの場合は株が増えてきて根が回ったら、根についた土を落とさないようにして植え替えます。
日常のお手入れや注意すべき病害虫
オオイヌノフグリは特別な手入れが特に必要なく、何もしなくてもどんどん育ち広がります。夏に地上部が枯れても、涼しくなると再び芽が出てきます。
また、注意すべき病害虫も特にありませんが、花の中心には蜜があり、ハチやハナアブ、チョウなどを引き寄せます。お手入れの際はハチに刺されたりしないよう注意が必要です。
オオイヌノフグリは増えすぎに注意
オオイヌノフグリは繁殖力が強く、ほかの植栽の成長を阻害する可能性があるため、注意が必要です。地下茎で広がり、こぼれ種でも増えるため、根止めをしても完全には抑えられません。そのため、広がりすぎる場合は、都度引き抜いて管理します。
オオイヌノフグリは在来種のイヌノフグリを駆逐する勢いで広がっています。栽培する場合は新たに広がらないように逸出に注意しましょう。
春の庭を彩るオオイヌノフグリを楽しもう
オオイヌノフグリは春の訪れとともに開花し、小さな青色が可愛らしい花を咲かせる野草です。日本の広い範囲でよく見られますが、明治時代に渡来した帰化植物です。非常に丈夫で手間がかからないため、野草のグラウンドカバープラントなどとして育ててみるのもいいですね。春を告げる青い小花を、野原や道端、自宅の庭で楽しんでみてはいかがでしょうか?
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。