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ゆらぐ季節にこそ鍛えたい。肌・心・体に効く“免疫力”の最新事情

  • 2025.2.20
0824_01ff_040_JW paris_B_Image (2)-branch_jp_vogue_2025-307-march_print_unknown.jpgPhoto: Alex Huanfa Cheng

冬になると、主に体調管理の文脈でフォーカスされる“免疫”は、ビューティーにおいても近年、重要なキーワードになっている。私たちの健康を維持するために存在し、極めて身近でありながら、まだあまり知られていない免疫とは、いったいどのような仕組みなのだろうか。

日本とアメリカを拠点に、長年免疫の分野で研究を続けてきた資生堂研究所の長谷川達也研究員はこう語る。

「細菌や紫外線など、我々をとりまくさまざまな外的刺激から体を守り、容易に過度な炎症を起こさないように対処しているのが免疫細胞であり、免疫システムです。私たちの免疫システムは生活環境ストレスなど、外的と内的、それぞれの要因によって日々変化し、変動しやすいものとなっています。免疫は働けばよい、というものではなく、強すぎると、かえってアレルギーなどを引き起こす一因にも。恒常性とバランスを保ち、必要に応じて適切に働く状態が“免疫力が高い”といえるでしょう」

冬は風邪やインフルエンザなどによる体調不良が多く見られるが、なぜこの季節は特に免疫力が下がりやすいのだろうか。

「冬に体調を崩しやすくなるのは、紫外線のUV-B波が減って体内でのビタミンDの産生量が減少することも原因といわれています。さらに気温の低下で体が冷えたり、湿度の低下で粘膜が乾燥し、バリア機能が低下することも要因となります。免疫システムには遺伝的な要素も関係してきますが、同時に、後天的に変化するものでもあります。年齢を重ねるほどに、活動量が減ったり、ホルモン分泌の低下によって体全体の修復力が下がり、結果的に免疫力が低下する傾向に。ただ、日頃の生活習慣次第で、よい状態を維持することは可能」とまいこホリスティックスキンクリニック院長の山﨑先生は解説してくれた。

免疫アップに繋がるライフスタイル

Woman preparing a healthy smoothie with fresh spinach, banana, avocado, and lemon

数年前、COVID-19の流行とともに免疫にスポットライトが当たった際に巷では、いかに免疫力を高めるか、ということが注目され、多くの情報が飛び交った。加齢とともに本来の機能を発揮しづらくなる免疫システムに対して、一発逆転的なケア方法はあるのだろうか。

「免疫力向上のキーとなるのは、あくまでも睡眠、食事、運動といった基本的なライフスタイル。1年くらいの長期視点でセルフケアすることで、免疫力を高めることが可能です。ダイエットにおけるリバウンドと同じで、一発逆転を狙い短期間で急激な変化を求めた結果、ストレスを感じて逆効果になることも。ストレスは免疫を下げる大きな要因になりますからね。よいコンディションをキープし続けるためにも、習慣化がキーになります」(山﨑先生)

ちなみに、生活習慣のなかでも特に重視すべきは、睡眠なのだという。「諸説ありますが、睡眠時間が7時間より短い人は、疲労が蓄積され、長期視点で不調が出やすい傾向にあります。熟睡感が得られるよう、時間と質を確保して」



逆に、避けたほうがよいことは?「適度な運動は免疫力を高めますが、本来は免疫に寄与するべき栄養素を筋肉の修復に使ってしまうという意味で、ハードすぎるトレーニングは避けたほうがベターです。もともと貧血傾向の方や体力がないと感じている方は、貧血を誘発して免疫低下につながりやすい長距離のランニング等も避け、軽めの運動のほうがいいでしょう」

注目が高まる、免疫と腸の関係

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免疫における腸の役割について、長谷川研究員はこう語る。「昨今は免疫において腸の重要性が高まっています。実は、免疫細胞の大部分が腸に存在しているのです。腸粘膜は病原体や毒素が体内に侵入するのを防ぎ、バリアとしての機能を果たすだけでなく、脳とも密接に連携して全身の免疫バランスを整えます。さらに、腸内には多くの細菌が生息し、腸内環境を形成するとともに、免疫システムを適切に機能させます。腸内の環境が改善すると免疫細胞の数や働きが向上し、ひいては全身の免疫力を高めることにつながるので、いわゆる“腸活”は免疫アップに効果的であると考えられますね」

肌にも備わる免疫力

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ウェルネスに加え、ビューティーの観点で、免疫は私たちの肌や見た目とどう関係しているのだろうか。

「免疫システムに大きく関わるのは、細胞の栄養状態です。全身の細胞が栄養で満たされ、元気な状態であることが良好な免疫システムを保つためには不可欠。もちろん、栄養状態がいいと肌の細胞もいきいきとし、水分量がキープされ、代謝が良好に。その逆も然りです。免疫、肌状態はともに栄養状態に依存するため密接に連動するといえるでしょう」(山﨑先生)。

免疫と肌のエキスパートである長谷川研究員は肌に備わる免疫力についても言及。「肌の免疫は、体のなかでも重要な位置を占めていると考えています。一見、肌は単なる薄い皮のように見えますが、実は最も大きな“臓器”であり、外的環境に接する最前線としての役割が。少々の刺激で簡単に過度な炎症を起こさないよう、常日頃から免疫が働いているのです。ただ、表皮に存在する免疫細胞の一種のランゲルハンス細胞は、紫外線や心理的ストレスでダメージを受けるとその数が減少し、結果、皮膚上で免疫低下が起こることがあります。最近肌のゆらぎを感じやすかったり、エイジングサインが出やすいと感じている人は、免疫力が低下している可能性があります。免疫力を高める生活へとシフトしたり、老化細胞へアプローチ、あるいは細胞の機能をサポートするスキンケアなどが有効です。基本的には始めるのに“早すぎる”ということはなく、ゆらぎやエイジングサインが出る前に予防的にケアを始め、未然に防ぐのがおすすめです。具体的なスキンケア方法については、バリア機能が低下すると菌が侵入しやすくなるという点で、乾燥を防ぐ基本の保湿ケアが有効。また、免疫細胞は血流にのって体内をぐるぐると巡るので、血流を促すようなお手入れもよいですね」

話を聞いたのは......

MAIKO YAMASAKI

山﨑まいこ。まいこホリスティックスキンクリニック院長。皮膚科医。ホリスティックな視点から、外側の治療に加え、体の内側、心のあり方までサポートし、患者に寄り添う医療で健康と美しさを追求。ECサイト「まいこホリスティックオンライン」を監修。

TATSUYA HASEGAWA

長谷川達也。資生堂みらい開発研究所シーズ開発センター研究員。薬学博士。マサチューセッツ総合病院、ハーバード大学医学大学院で免疫をテーマに研究。メモリーT細胞に関する世界初の発見で注目を集め、化粧品業界における免疫分野をリードする一人。

※『VOGUE JAPAN』2025年3月号「強い肌、強い体。この冬鍛えたいのは免疫力」転載記事。

Text: Kiriko Sano Editor: Misaki Kawatsu

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