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まるで異世界ファンタジー!インド洋のガラパゴス「ソコトラ島」で地球の神秘と異文化にふれる旅

  • 2025.2.20

ダーウィンの進化論といえば、世界遺産ガラパゴス諸島。

イグアナやゾウガメ、アシカにペンギンなど、天敵のいない絶海の孤島で独自の進化を遂げた野生動物たちがのびのびと暮らす楽園ですよね。

そんな南米ガラパゴスに匹敵する島が中東にあるのをご存じですか?

今回は、絶景ハンターの筆者が太鼓判を押す、異世界ファンタジー的な世界観を体験できる「インド洋のガラパゴス」こと、ソコトラ島についてご紹介します。

インド洋に浮かぶ「ソコトラ島」とは

中東アラビア半島南端に位置する国・イエメン。その本土から南へ約370km、アフリカの東端から約230km離れたインド洋に浮かぶ小さな離島が「ソコトラ島(Socotra Island)」です。

今から2300万年前~500万年前、アフリカ大陸から切り離されて誕生したと考えられるソコトラ島。

乾燥した大地の苛酷な自然条件に加え天敵のいない環境は野生の動植物たちに独自の進化を促し、今や「インド洋のガラパゴス」と称されるほど多くの固有種とユニークな生態系を有しています。

島内に生息する825種の植物のうちのおよそ37%、爬虫類は90%、かたつむり類は95%、さらに絶滅危惧種も含めた鳥類は192種のうち44種がソコトラの固有種とされ、その生物多様性と学術的価値から2008年、世界自然遺産にも登録されています。

イエメンと聞くと、わたしたちが持つイメージは、中東の紛争地域でイスラム過激派が潜伏する、相当危険で物騒な地域。

そんな国の島で大丈夫?と思われるかもしれませんが、実はソコトラ島はイエメン本土の内戦とは無縁の平和な地域です。

地理的にも歴史的にも分断されていたソコトラ島は、本土とは内政が分離され、原則不干渉の立場をとっているそう。

とはいえ、2015年の内戦ぼっ発以降、イエメン全土で観光が断絶されましたが、2019年頃からソコトラ島に限る観光再開の機運が高まり、コロナ禍を経て、今また徐々に注目を集めています。

「インド洋のガラパゴス」!ソコトラ島の魅力徹底解説

それでは、ソコトラ島が「インド洋のガラパゴス」といわれるそのゆえんと魅力についてご紹介します。

その1:異世界ファンタジーな植物たち

ソコトラ島のシンボルである「龍血樹(ドラゴンブラッドツリー Dragon Blood Tree)」。

空に向かって毛細血管のように伸びていく、節くれだった不気味な枝葉が強烈なインパクトの龍血樹ですが、この樹の最大の特徴は、名前の由来でもある、幹から流れ出る赤い樹液にあります。

まさに鮮血のような赤色の樹液は、かつて鎮痛剤や産後の止血、貧血時の造血剤などに効く妙薬として珍重され、ローマ帝国時代には金にも値する資源として中国やヨーロッパへも輸出されたそう。

医療が進歩した現代では、化粧品やマニキュア、粘土などの顔料のほか、観光客のお土産程度の価値になっています。

島民の貴重な収入源としてえぐられまくった跡が痛々しい龍血樹ですが、加えて2015年と2018年に巨大サイクロンが襲来、多くの龍血樹が倒壊し、以来、自然保護の対象となっています。

こちらは龍血樹と二大双璧を為す、ソコトラ島のシンボル「ボトルツリー(Bottle Tree)」。とっくりのようなかたちが特徴で、グニャッとへし曲がったものもあり、およそこの世のものとは思えない異質な植物です。

これらの植物が織りなす異世界ファンタジーの光景が、一部の『ドラゴンボール』ファンの間では「リアル・ナメック星」として話題になったことも。ちなみに、春にはピンクのかわいらしい「砂漠のバラ(デザート・ローズ)」を咲かせます。

その2:絶滅危惧種の野生動物がすぐそばに

固有種の野鳥が数多く生息するソコトラ島の中でも異彩を放つのが、絶滅危惧種に指定されているこの「エジプトハゲワシ」。

漁のおこぼれや人間の食べ残しをねらって、人間を恐れず至近距離で迫ってくるハゲワシとふれあえるのもソコトラ島ならでは。

カニやロブスター、エビなどの甲殻類も300種類以上生息するソコトラ島。この愛嬌のある黄色のカニもまたソコトラ島の固有種で、ビーチに数多く生息しています。

ソコトラ島の人口より多く生息する家畜のヤギ。食欲旺盛であらゆるところに出没するヤギは、道端のゴミや雑草を食べてくれる“天然掃除機”として重宝される一方、龍血樹の若芽や貴重な植物まで食べてしまう厄介者として最近は問題視されています。

ちなみに、ソコトラ島には牛や馬、ラクダ以上の大型の動物は生息していません(何なら犬もいません)。しかも、動物たちは一般的なサイズよりやや小ぶりなのも興味深いところです。

その3:神がかった美しさの海とその恵み

ソコトラ島周辺のサンゴ礁や海洋における生物多様性もさることながら、ビーチやラグーンの美しさはもはや神がかった領域。

ここはデトワ・ラグーン自然保護区(Detwah Lagoon Ramsar Site)。ラムサール条約にも登録されています。

こちらは、ソコトラ島随一の透明度を誇る「シュアブ・ビーチ(Shuab Beach)」。運が良ければ、イルカの群れやウミガメにも遭遇できます。

あまりの美しさにイエメン本土からも観光船が訪れるほどです。

こちらは、デトワ・ラグーンの名物「洞窟おじさん」こと、アブドラさん。ラグーン一角の洞窟を代々住まいとし、海の幸を採って生活していたそうです(現在は村で暮らす奥さんと6人の子どもたちとともに村と洞窟の二重生活)。

ラグーンでは天然牡蠣やウニ、タコ、イカ、ホタテ、ムール貝など、日本では高級食材と言われる魚介類が豊富で採り放題。彼はそれを観光客にふるまって、素手で捕まえる技を披露してくれたりします。

その4:巨大洞窟で地底探検

ソコトラ島内には長い年月をかけて生まれた洞窟や鍾乳洞も数多く存在します。

こちらは島最大の「ホック洞窟(Hoq Cave)」。地元少年ガイドの案内でヘッドライトだけを頼りに行く道なき道の地底探検はかなりスリリングです。

その5:山の上から天空のインフィニティ・プール

こちらは山の中腹に存在する天空のインフィニティ・プール「ホムヒル・プール(Homhil pool)」。

山の湧き水が流れ込んで生まれた天然プールで、眼下にはインド洋が横たわり、周囲は龍血樹の群生地という、まさに唯一無二の絶景展望プールです。

その6:白砂漠でアラビアンナイト

ソコトラ島内に点在する広大な白い砂丘。これは石灰石の断崖が長い年月をかけて海風の浸食を受けて生まれたものと考えられています。

こちらは島内最大の「ザヒク砂丘(Zaheq Sand Dune)」。砂丘の上からインド洋に沈みゆく夕日を眺めて、ロマンチックなアラビアンナイトに浸れます。

その7:異世界的な珍百景

龍血樹やボトルツリーの奇観に並ぶ珍百景がこの小さなピラミッド群の「アリヘル・ビーチ(Ariher Beach)」。

この正体は、前述で紹介したソコトラ島固有種の黄色のカニの仕業で、巣穴に潜るために掻き出した砂で生まれた奇跡の光景。ちなみに、このビーチでは、夜は夜光虫による青い光の波も見ることができます。

ソコトラ島で異文化理解!町の様子とイスラムの人々

ソコトラ島の滞在を通じて、異文化理解も深めます。

電気や水道、通信など最低限のインフラは整っているものの、どこか文明が置き去りにされたような素朴で質素なソコトラ島。

通信、電気は不安定で停電もしばしば、スマホは圏外、WiFiも首都ハディボにある数軒の観光客向けホテルのみしか使えず、それはある意味、問答無用のデジタル・デトックスが体験できます。

厳格なムスリムが多い中東イエメン。ここソコトラ島も例にもれず、とくに首都で暮らす成人女性は、眼以外を真っ黒な衣裳のアバヤとニカブですっぽり覆い隠して出歩いています。

厳格なムスリムでは、女性は家族や親族以外の男性との接触も就労も許されず、そのせいか町は驚くほど男性だらけの男社会。女性を見かける機会は少なく、カルチャーショックを受けざるを得ませんでした。

それでも首都から離れた村へ行くと、封建的な印象は薄れ、家事をする女性たちをちらほら見かけたり、頭だけを覆い隠す簡易なヒジャブをまとった女性も見かけました。

ちなみに、この島でもっとも印象的だったことばは、「わたしたちは幸せだ。海に行けば魚は山ほどあるし、食べるものには困らない。だからいさかいもない。何か困ったことがあれば、みんなで助け合う。島全体が家族みたいなもの」ということ。

見た目の貧しさに思わず「ストリートチルドレンみたいな子はいるの?」と問いかけたとき、「そんな言葉、聞いたこともないし意味も分からない」と即行で答えられたこと。

最後に、“幸せとは”ということを考えさせられた、ソコトラ島の滞在でした。

ソコトラ島へ行くには

いかにソコトラ島自体が平和とはいえ、国際法上はイエメンの領土、簡単には渡航はできません。少なくとも日本の場合、外務省情報では海外渡航危険レベル4(退避勧告)の地域。個人での旅行はほぼ不可能で、2015年の内戦ぼっ発以降、日本からのツアーは壊滅状態です。

そのため、現在は欧米系(あるいは現地発)を中心とした海外の旅行会社ツアーに参加するのが一般的です。

「Socotra Tour」で検索すれば数多くヒットしますので、訪問時期や滞在期間、内容、予算などと相談して、自分の都合にあったツアーを選びましょう。

なお、2025年2月現在、ソコトラ島へ就航する飛行機はAir Arabia社のみ、アブダビ発で火曜と金曜日の週2便が利用されています(イエメン本土は経由しません)。そのためツアーは7泊8日もしくは4泊5日が中心です。

したがって、アブダビまでの移動時間も含めると、ソコトラ観光には最低7~10日間は見ておく必要があります(ビザ取得は通常旅行会社が対応してくれます)。

常識を覆す異世界ファンタジーへ、ホンモノの非日常を体験しよう

世界中には、圧倒的なスケールの大自然、秘境、絶景、異文化がたくさん存在します。しかし、筆者が知る限り(少なくとも絶景秘境と言えるジャンルにおいては)、ソコトラ島に勝るスポットはないと考えています。すべてが異次元で異質、常識を覆す異世界ファンタジーの世界が目の前に広がり、圧倒的な何かが心を揺さぶります。

人生観も変えかねない、ホンモノの非日常体験を味わってみたかったら、ぜひソコトラ島を訪れてみませんか。

All photos by Mayumi

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