映画祭の中核となるコンペティション部門には13作品が選出。カザフスタン・フランス・ノルウェー合作の『バイクチェス』は、テレビ局で働くキャリアウーマンの葛藤をブラックユーモアたっぷりに描く人間ドラマ。中国の『バウンド・イン・ヘブン』は、フェイ・ウォンの歌をめぐる壮絶な純愛ストーリーとして注目されている。また、台湾の『我が家の事』、タイの『団地少女』、韓国の『その人たちに会う旅路』など、それぞれの国の文化や社会を背景に描かれた作品がラインナップ。特に、モンゴルの『サイレント・シティ・ドライバー』は、霊柩車の運転手を主人公にした異色のヒューマンドラマとして話題を集めそうだ。
近年注目を集めるジャンルや新鋭監督の作品をピックアップする特別注視部門では、韓国の『君と僕の5分』やフランスの『イケメン友だち』など、LGBTQ+の人物を描いた作品が並ぶ。さらに、フィリピンと日本の合作『この場所』は、震災の記憶とディアスポラ問題を描いた感動作として期待が高まる。
インディ・フォーラム部門には、新たな表現を試みる作品が集結。日本の『Good Luck』や『蒸発』は、それぞれユニークな視点で映画制作や社会問題に切り込む。また、『レイニー ブルー』は、熊本出身の監督が手がけた青春映画で、熊本の風景を背景に描かれる瑞々しいストーリーが魅力となっている。
今年の映画祭では、アジアの映画文化に焦点を当てた特集企画も充実している。「タイ・シネマ・カレイドスコープ 2025」では、ムエタイをテーマにした『ムエタイ・ハッスル』や、タイムリープものの『タクリー・ジェネシス』など、バラエティ豊かなタイ映画が上映される。「台湾:電影ルネッサンス 2025」では、幽霊が怖がらせ方を学ぶコメディ『鬼才の道』など、台湾映画の新潮流を感じられる作品が集まる。「Special Focus on Hong Kong 2025」では、レズビアンカップルの老後を描く『All Shall Be Well』や、香港映画史を塗り替えた大ヒット作『ラスト・ダンス <ディレクターズカット>』の世界初上映など、香港映画の多様な魅力が味わえる。
特別招待作品部門では、フィリピンの人気グループSB19のワールドツアーを追ったドキュメンタリー『PAGTATAG! ザ・ドキュメンタリー』、NCTのジェヒョン主演で日本のベストセラー小説を映画化した『6時間後に君は死ぬ』がラインナップ。K-POPやJ-POPファンにとっても注目の作品が揃う。
大阪アジアン映画祭のプログラミング・ディレクター暉峻創三は、今年の映画祭について「第20回という節目にふさわしい、豪華なラインナップが実現した。かつて短編作家として入選した監督の長編デビュー作の世界初上映や、既に名声を築いた監督があえてインディペンデントなスタイルで自由な表現に挑んだ作品が揃っている。また、今年は特に、性役割や関係性の新しいあり方を示唆する作品が多く見られる」とコメントしている。
第20回大阪アジアン映画祭は、3月14日(金)〜3月23日(日)まで、ABCホール、テアトル梅田、T・ジョイ梅田、大阪中之島美術館などで開催される。チケットは3月6日(木)より順次発売予定。上映作品の詳細やスケジュールは公式HPにて。
アジア映画の今と未来を映し出す、記念すべき20回目の大阪アジアン映画祭。この機会に、世界中の映画ファンが熱狂するアジアの新たな才能に触れてみては。
Text: Makiko Yoshida
READ MORE