ファッション界では、各ブランドが次のシーズンに向けて新作を発表する期間をファッションウィークと呼び、年2回、NYを皮切りに、ロンドン、ミラノ、パリの順で約一ヶ月に渡りファッションショーを開催する。これらの4都市で開催されるスケジュールが規模的には大きなものとなるが、その他にもベルリンやコペンハーゲン、アジア地域では東京、ソウル、上海などでも行われている。
ファッションに興味があれば一度はショーに行ってみたいという憧れを抱くが、そもそも誰でも参加できるのか? 残念ながら、一般的にはインビテーションを受け取るのはブランドの取引先、バイヤー、ファッションメディアの編集者、セレブリティ、そしてインフルエンサーたち。彼らがメディアを通じて発信することで情報が拡散され、トレンドや爆発的ヒットを飛ばすアイテムが生まれることも。近年はSNSの影響で瞬時にバズが起こり、世界中の誰もがファッションショーを身近に感じることができるようになった。
「アンバサダー」が一般的になったのはいつ?
今や当たり前となった「アンバサダー」という存在。ファッションにさほど関心がない人でも一度は聞いたことがある言葉だろう。アンバサダーとは、直訳すると“大使”。ブランドの世界観をリアルに体現する人物が広告塔やスポークスパーソンとして選ばれ、フロントロウに彩りを添えたり、広告キャンペーンなどに登場する。
もともと、ファッションブランドとセレブリティの関係性は親密で、デザイナーのクリエーションに多大なインスピレーションを与える人物を「ミューズ」と表現してきた。例えば古くは、ユベール・ド・ジバンシィが映画『麗しのサブリナ』(54)に出演するオードリー・ヘプバーンの衣装を手がけたり、イヴ・サンローランの永遠のミューズと称されてきたモデルのベティ・カトルーなどだ。
現在のアンバサダーのブームは、K-POPカルチャーの世界的なムーブメントと連動していて、その動きはパンデミック以降に加速していく。2021年4月、BTS(防弾少年団)がルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)のアンバサダーに就任して以降、数々の人気アイドルがファッションブランドを体現する存在となっていく。
今や、K-POPスターのアンバサダー就任は珍しいことではなくなったが、その走りとなった人物はBIGBANGのG-DRAGONだろう。2014年、G-DRAGONはシャネル(CHANEL)の2015年春夏コレクションのショーに招かれ、当時メゾンを率いていたカール・ラガーフェルドと対面。その後も定期的にショーを観覧し、メゾンと信頼関係を築いていく。メゾンと時代を象徴するファッションアイコンという存在は、モード界にとって不可欠なものとなっている。
これであなたもコレクション通! 知っておくべきキーワード【Part.1】
ファッションウィークの基礎知識を学んだ後は、ショーをより深く楽しむための「知っておくべきキーワード」に触れておこう。
【シーズン】
各ブランドでは大きく春夏、秋冬を二つの企画に分け、これらを“SPRING/SUMMER”、“AUTUMN/WINTER”=シーズンとして区別。略してSS、AWなど。ブランドや媒体によってはFALL/WINTER、FWと表記する場合もあり。
【プレタポルテ】
既製服、および高級既製服。フランス語で、pret(プレ / 用意)とporter(ポルテ / 着る)、「既に用意されていてすぐ着ることができる服」を意味する。Ready to Wear(レディートゥウェア)ともいう。
【オートクチュール】
高級仕立て服。1868年、パリ・ファッションウィークを主宰するオートクチュール&モード連盟が設立される。フランスのファッション文化を広めるだけでなく、公式スケジュールでショーを行うにふさわしい、オートクチュールの基準を満たした確かなクラフツマンシップを有すデザイナーの選出も行う。
【ランウェイ/キャットウォーク】
ファッション・ショーが開催されている間、ファッション・モデルたちが服やアクセサリーなどを披露する舞台のこと。客席に突き出た細長いステージをキャットウォークと表現することもある。
【春夏・秋冬】
ブランドの新作発表の場として、主にオートクチュールとプレタポルテ(高級既製服)といった二種類のコレクションがあり、より身近に着られるプレタポルテは、2〜3月に秋冬、9~10月に春夏が発表される。
【フロントロウ】
ショーの最前列をフロントロウと言い、有名ジャーナリストやセレブ、インフルエンサーといった、ファッション界でもっとも影響力のある人だけが座ることができる。
これが分かれば上級者。知っておくべきキーワード 【Part.2】
【ファーストルック・ラストルック】
ファーストルックとは、ショーに登場するトップバッターのこと。そのシーズンを象徴するキールックが登場することが多い。また、プラダ(PRADA)ではファーストルックに新人モデルを抜擢する傾向が高く、若手モデルの登竜門やステータスとしてメディアで取りげられることも。ラストルックはショーの最後に登場する、いわば “トリ”を意味する。フィナーレにふさわしい重要なルックや、そのブランドのミューズ的存在を起用することがある。
【プレゼンテーション】
ファッションウィークでは、ショーだけでなく、趣向を凝らしたプレゼンテーションも数多く開催される。中でも、バッグ&シューズ、ジュエリーブランドはアイテムの世界観を具現化したディスプレイを展開。ファッション関係者は、ショーの合間に展示会やイベントに立ち寄り、今季のトレンドや若手デザイナーの動向をチェックしている。
【オフ・ランウェイ】
ショーで発表される新作だけでなく、実際に見に来ている関係者たちのリアルなスタイルをキャッチできるのがオフ・ランウェイ、つまりストリートスタイルだ。会場の外では、次世代のインフルエンサーやモデルらが大勢のフォトグラファーに囲まれている姿を目撃することができる。
Photos: Getty Images, Gorunway.com