生鮮食品の中でカキがトップクラスな栄養素は?
栄養豊富なことから「海のミルク」と称される牡蠣(カキ)。日本で主に食べられているのは、真牡蠣(マガキ)と岩牡蠣(イワガキ)で、冬から春先にかけて特においしくなるのが真牡蠣です。この記事では、牡蠣の栄養やおすすめの食べ方について解説します。
牡蠣を代表する栄養素が、亜鉛(あえん)。不足すると味覚障害や皮膚の炎症などを招きやすく、成人(18歳以上)女性8mg・男性11mg(75歳以上は10mg)が1日の推奨量となっています(※1)。
牡蠣のむき身1個(15g)あたり2.1mgの亜鉛を含み、2~3個の摂取で推奨量の約半分を補うことができます(※2)。亜鉛はたんぱく質と結合して様ざまな生理機能を発揮するため、たんぱく質も豊富な牡蠣は亜鉛のパワーが発揮されやすい利点があります。
また、亜鉛はビタミンCやクエン酸が豊富な食品と一緒に摂ることで吸収率が高まります。蒸し牡蠣にレモンなどの柑橘類をしぼったり、カキフライに添えられたキャベツやキュウリなどの生野菜を一緒にいただくことは、効果的な食べ方と言えます。
(※1)推奨量:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020年版)』より、(※2)牡蠣のむき身の目安量と栄養価:奥嶋佐知子監修『食品の栄養とカロリー事典 第3版』女子栄養出版部より
亜鉛の他にも必須ミネラルの銅や鉄、赤血球をつくり傷ついた神経細胞を修復する働きもあるビタミンB12が多い特徴もあります。
多糖類のグリコーゲンが豊富で筋肉や脳の活動エネルギーとなり、アミノ酸の一種で疲労回復に役立つタウリンも含まれています。筋トレや運動後のリカバリーに適した食材と言えそうですね。
こうした滋養強壮に優れた栄養価の高さ、乳白色の見た目やクリーミーな味わいが相まって「海のミルク」と称されているのです。
知っておこう!「生食用」と「加熱用」の違い
むき身がパック詰めされた牡蠣を買うとき、「加熱用」「生食用」があって迷ったことはありませんか?実は、牡蠣の鮮度で「加熱用」「生食用」が区別されているわけではありません。
食品衛生法の基準を満たす海域で採取して規定に従った浄化処理をしたものが「生食用」、それ以外の海域で水揚げして出荷されたものが「加熱用」とされています。
加熱用の牡蠣はノロウイルスなどの食中毒リスクが否定できないため生食NGですが、鮮度が落ちているわけではないのです。しっかり加熱調理するメニューなら加熱用を選んだ方がおいしいという声も。
筆者は鍋の具材として両方を加熱して食べ比べてみた感想としては、加熱用は牡蠣らしいコクがやや強く、生食用は上品な味わいに感じました。
下処理で汚れを取り除くとプリッとした牡蠣に
牡蠣の表面にはヌメリがあり、ヒダの中に汚れや細菌が付着しやすいため、生食用・加熱用に関わらず、調理前に塩水の中でゆすり洗いしましょう(海水と同じ塩分濃度3%が目安)。
下処理後はザルに上げてキッチンペーパーなどで包み込み、水気を取り除いてから調理を。むき身はとてもやわらかいので、優しく扱ってくださいね。塩水ではなく、大根おろしや片栗粉をまぶして汚れを取ってから水洗いする方法もあります。少し手間をかけて汚れを落とすと身が縮みにくく、プリっと仕上がりますよ。
※参考文献:杉田浩一ほか監修『新版 日本食品大事典』医歯薬出版株式会社,2017、藤原昌高著『からだにおいしい 魚の便利帳』高橋書店,2010、池上文雄ほか監修『からだのための食材大全』NHK出版,2019、上西一弘ほか監修『健やかな毎日のための栄養大全』NHK出版,2022、レジア編『日本の食材図鑑』新星出版社,2018
(野村ゆき)