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受診・入院のやり方次第で自己負担額に2倍以上の差…知らないと大損「高額療養費制度」を使い倒すコツ3つ

  • 2025.2.14

昨年末に閣議決定された高額療養費制度の自己負担額上限引き上げは、見直されることになった。税理士でマネージャーナリストの板倉京さんは「最終的な改正内容はまだ見えないが、この制度のルールを知らないでいると自己負担額に雲泥の差がでることになる」という――。

※写真はイメージです
がんの場合、一回の入院で100万円程度かかる

日本の「公的医療保険制度」のもとでは、患者は医療費の3割程度を負担すればいいことになっています。国保や会社の健保等に加入していれば、1万円の医療費がかかったとしても自己負担額は3000円です。

しかし、医療費が高額になると、その3割も大きな負担になってしまうことがあります。

仮に100万円の医療費がかかれば、3割負担なら30万円です。

100万円の医療費⁉と驚く方もいるかもしれませんが、たとえばちょっとした病気やけがをした場合でも思わぬ高額な治療費がかかることがあります。

たとえば、盲腸で手術・入院した場合の医療費は約50万~70万円、骨折での手術・入院では70万~200万円以上(中電病院HP手術費用等概算一覧表を参考)。

がんなどは、一入院で100万円程度かかると言われており、治療が長期にわたる場合など、医療費が家計に与える負担はバカにできません。

100万円の医療費が高額療養費制度で約8万8000円に

そんな時に使えるのが「高額療養費制度」。

年収に応じて一月あたりの自己負担額の上限が決められており、その上限を超えると超過分を払い戻してくれるというありがたい制度です。

この「高額療養費制度」を利用すれば、100万円の医療費に対して本人負担は約8万8000円(年収約370万円~770万円の場合)で済むのです。

自己負担限度額の引き上げは見直しに

このありがたい「高額療養費制度」ですが、政府がこの自己負担限度額を今年の8月から段階的に引き上げる方針を決めていたことはご存じでしょうか。

政府案によれば、2025年8月・2026年・2027年の3段階で負担限度額の引き上げを実施。

年収区分も現行の5区分を13区分に細分化し、最終的には年収650万〜770万円の区分で、現行の月8万100円を13万8600円まで大幅に増額することになります。

※厚生労働省資料(https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf)を基に筆者作成

また、直近12カ月の間に3回以上高額療養費の対象になった場合、4回目以降は自己負担額をさらに抑えられる「多数回該当」も最大で約6割の大幅増となっています。

ただ、この改正案、昨年末に閣議決定したものの、各方面からの反対の声を受け石破総理が見直しを検討すると発言しています。

自己負担額を大幅に減らすコツ

最終的にどのような改正内容になるのかは検討結果を待つしかありませんが、ここで「高額療養費制度」を使う上での知っておきたい基本ルールをお伝えしたいと思います。

高額療養費制度の基本ルールとその対策
① 医療機関ごとの自己負担額が、1カ月2万1000円以上の時だけ対象となる
→いろいろな診療科にかかっている場合は、複数の診療科のある病院にかかるとおトク
② 1カ月ごと(1日~末日)に計算する。
→入院は月をまたがないほうがオトク
③ 家族の分を合算することもできる。
→家族の分を合算できれば、給付額が増える可能性あり
④ 対象とならないものもある。
→医療保険で補填も検討

① 医療機関ごとの自己負担額が、1カ月2万1000円以上の時だけ対象となる

69歳以下の人の場合、対象となるのは1つの医療機関で1カ月に2万1000円以上かかった時だけです。たとえば、10カ所の病院で2万円ずつ合計20万円かかったとしても、ひとつも対象となりません。ちなみに、複数の診療科のある医療機関(総合病院等)の場合は、診療科ごとではなく、その医療機関にかかった医療費をまとめて計算します。いろいろな診療科にかかっている場合は、複数の診療科のある病院にかかったほうがオトクというわけです。ただし、医科と歯科は別々、入院と通院も別々に計算します。

院外処方によって薬局でかかった薬代は、処方箋を書いた医療機関とみなされます。

70歳以上の方はこの金額の縛りはありません。

入院の日程の組み方で変わる自己負担額
② 1カ月ごと(1日~末日)に計算する。

高額療養費は月ごとに計算します。月をまたいで治療した場合、特に入院は要注意です。

仮に、年収500万円の人が20日間入院して医療費が100万円かかった場合、入院が一月の間におさまれば自己負担額は8万7430円ですが、月をまたいで入院した場合の自己担額は16万4860円(治療費が一月あたり50万円として計算)です。

同じ病気で同じ治療を受けても自己負担がかわってしまうということ。急ぎの入院は仕方がないとしても、入院時期を選べるのであれば、月をまたがないようにした方が自己負担額は少なくなる可能性が大です。

③ 家族の分を合算することもできる

同じ健康保険に加入している同一世帯の家族の医療費(70歳未満は自己負担額月2万1000円以上のもの)は合算することができます(同居していなくても可)。扶養に入っている家族はもちろん、同じ会社に勤めていて同じ健康保険組合に加入している家族も合算対象となります。この家族合算制度、知ってて損はありません。

仮に同じ会社に勤めていた夫婦(ともに年収500万円)がそれぞれ5万円ずつ医療費を払っていた場合、一人ずつの適用では医療費が負担限度額(8万100円)以下のため、高額療養費制度の対象となりませんが、2人分を合算すると対象治療費は10万円となり、1万9900円の給付を受けることができます。

別々に申請した場合
5万円<負担限度額8万100円のため支給なし 合算して申請した場合
10万円-8万100円=1万9900円 支給

世帯合算をする場合は、加入している健康保険組合に申請をする必要がありますので、注意してください。

意外とかかる“制度対象外”の費用
④ 対象とならないものもある

保険適用外の治療にかかる費用は高額療養費制度の対象外です。具体的には、入院中の食費や居住費、差額ベッド代や先進医療など。

医療の進化とともに入院日数は減少傾向ですが、年齢を重ねれば入院日数は長くなる傾向にあります(図表2参照)。そこで問題になるのは、高額療養費制度で負担してもらえない費用です。

※厚生労働省「令和2年患者調査」より
差額ベッド代は1日平均6714円

令和5年7月1日時点での1日あたりの差額ベッド代の平均は6714円、個室の差額ベッド代は8437円です(中央社会保険医療協議会まとめ)。この金額はあくまでも全国平均。1日1万円以上の差額ベッド代もそう珍しくありません。1日1万円ということは、1カ月で30万円。それ以外にも、入院すると病院での食事代や寝間着などのレンタル費用、お見舞いのための交通費など、諸々の経費がかかります。入院が長引けば「家族が疲れてきて外食が増えた」という話も聞きます。もちろん、そういった費用は全額自己負担です。こういった金額も積み重なると家計を圧迫してしまいます。

また、先進医療も対象外です。がん治療関連の先進医療などは高額です。先進医療を利用する確率は低いかもしれませんが、いざという時、お金がはらえないからと治療を断念するということになれば、ツライ選択になってしまいます。

こういった懸念がある場合は、医療保険に加入することも検討してみましょう。一昔前とくらべて、医療保険の保険料は安くなっています。特に先進医療特約は、月額保険料数百円程度で先進医療の治療費が2000万円程度まで補塡されます。

最後に多くの健康保険組合では、申請をしなくても高額療養費の対象となる医療費を計算して、手続きをしてくれますが、国保や一部の健保など申請をしないと高額療養費を受けられない場合もあります。

高額な医療費がかかった場合は、念のため加入している健保や国保に申請の有無の確認をしてみるといいでしょう。

高額療養費の申請は、受診した月の翌月の1日から2年以内が期限です。「申請していなかった!」という場合でも、期限に間に合うようなら手続きをしてみてください。

板倉 京(いたくら・みやこ)
税理士、マネージャーナリスト
保険会社・財産コンサルティング会社、税理士法人等で税理士業務に携わる。開業独立している女性税理士の組織、ウーマン・タックス代表。テレビ出演や全国での講演、書籍の執筆などの活動も多数。著書に『夫に読ませたくない相続の教科書』(文春新書)、『定年前後のお金の正解』(ダイヤモンド社)など。

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