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春は菜種梅雨に注意! 豪雨や洪水のリスクも

  • 2025.2.10

長雨といえば梅雨をイメージする人も多いでしょう。

梅雨というと、梅雨前線と呼ばれる停滞前線がもたらす、晩春から夏にかけての長雨を指すことが一般的です。
同じように、春先にも停滞前線による長雨が起こることがあり、これを「菜種梅雨」と呼びます。

気温が上昇してくる春先にも大雨は発生しており、特に菜種梅雨の時期は雨量も増えやすいため注意が必要です。
今回は菜種梅雨の解説をはじめ、災害のリスクや防災対策のポイントを紹介します。

菜種梅雨とは

菜種梅雨とは、3月下旬から4月ごろにかけて日本付近に前線が停滞し、曇りや雨の日が続くことをいいます。菜の花が咲く頃に発生することから、菜種梅雨と呼ばれています。

菜種梅雨は、冬の冷たい空気と春の暖かい空気の間で起こる現象です。菜種梅雨の期間は1週間程度で、年によってはすぐに終わったり、菜種梅雨がなかったりする場合もあります。

また、菜種梅雨を指す言葉として、「春雨(はるさめ)」「春の長雨」「春霖(しゅんりん)」「催花雨(さいかう)」などもあります。

下の天気図は令和5年3月23日9時の予想天気図です。

出典:気象庁天気図

中国大陸から太平洋のはるか東まで停滞前線が延びていて、梅雨のような気圧配置になっています。

ちなみに、この日は高知県の須崎で3月の観測史上1位となる1時間54.5mmの非常に激しい雨、中村で1時間40mmの激しい雨を観測しました。

また、下の天気図は令和6年3月24日9時の予想天気図です。

出典:気象庁天気図

中国大陸から延びてきている停滞前線が九州にかかっているのが分かります。この日は1日の降水量が長崎市で3月の観測史上1位となる203mm、熊本市で143mmを記録しました。

このように菜種梅雨は、警報級の大雨をもたらすことがあります。また、夏と違って大雨災害への警戒が薄れやすい時期に起こるため、より一層注意が必要です。

菜種梅雨で起こりうる災害

菜種梅雨で起こりうる災害として、大雨による土砂災害、洪水、浸水などがあります。

菜種梅雨の時期が梅雨の時期と大きく異なるのは、山間部を中心に積雪が多く残っていることです。

菜種梅雨がもたらす雨によって雪が融けると、降った雨量以上に河川が増水する可能性もあります。融雪が進むと地中にも多くの水分がしみ込むため、雨量以上に土砂災害のリスクが高まる点にも注意が必要です。
なお、融雪に関する気象警報・注意報には「融雪注意報」があります。

融雪注意報は融雪によって土砂災害や洪水、浸水が発生するおそれがあるときに発表される注意報です。大雨警報や洪水警報が発表されていなくても、融雪注意報が発表されている場合は災害への備えが必要です。

また、菜種梅雨の時期は全層雪崩にも注意が必要です。全層雪崩とは、積雪と地面の間に水が入ることにより、積雪がすべて滑り落ちる雪崩のことをいいます。菜種梅雨では降雨や融雪によって積雪と地面の間に水が入りやすくなるため、全層雪崩のリスクが高まります。

雪崩に関する注意喚起は「なだれ注意報」によって行われるため、なだれ注意報が発表されている場合はなだれへの備えが必要です。

菜種梅雨による大雨が今後増える可能性

近年、春の平均気温が上昇していることもあり、菜種梅雨による大雨は今後増える可能性があります。

以下は日本の春平均気温偏差の推移です。

出典:気象庁「日本の春平均気温偏差」

日本では毎年のように「記録的な暑さ」といわれていますが、春の気温も上がっています。
上記グラフからも分かるように、ここ10年は1991年~2020年の30年間の平均気温よりも高く推移しています。

菜種梅雨の元になる停滞前線は、冬の冷たい空気と春の暖かい空気の温度差が大きいほど活発になります。さらに、停滞前線に向かって暖かく湿った空気が次々と入り込むような状態になると集中豪雨が起こりやすくなります。

春の気温が上がっているということは、それだけ暖かく湿った空気が前線に向かってぶつかりやすくなっていることを意味します。

ちなみに、一昔前の菜種梅雨といえば、「シトシト降る」というのが一般的でした。しかし、冒頭で触れた2023年や2024年の大雨からも分かるように、現在において菜種梅雨の雨はシトシト降る雨とはいえません。

気候の変化によって雨の降り方も変わってきているため、春の大雨災害にも備えは必要です。

菜種梅雨に備えるポイント

菜種梅雨に備えるポイントは、梅雨の大雨災害への備えと同様に、大雨警報や洪水警報などの気象警報に基づいて正しく避難行動することです。また、周辺に積雪が残る地域に住んでいる場合は、融雪や雪崩に対しての備えも必要となります。

ハザードマップを確認し、住んでいる場所に土砂災害や洪水、浸水、雪崩のリスクがないかチェックしておきましょう。避難場所や避難経路を確認しておくことも大切です。

土砂災害や大規模浸水が発生すると、避難生活が長引く可能性もあります。備蓄品を最低でも3日分、できれば7日分は用意しておきましょう。

また、寒の戻りで気温が低くなりやすい時期でもあるため、停電が発生した際には寒さへの備えも必要です。防寒着や防寒シート、毛布やカイロなどの防寒アイテムも用意しておきましょう。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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